ANo.3のコメントについてです。
> いままで適用した例がない問題に対してこれを応用するための準備ができるのかな?
変分というやり方があるんだ、ということを知れば、時には旨く使えるかも知れない。それ以上の準備はできない。これは(出題範囲が決まっている試験問題を除けば)どんな話でも同じでしょう。
ANo.2の繰り返しになっちゃいますが…
変分法の考え方は、要するに、ある量Lを最小にするような状態pを考え、そのとき状態pの微小変化が満たすべき条件を導くということです。次に、その条件を満たす具体的なpを(できるものなら)計算する。
こんな例を考えます。
平面上に2n個の点がばらまかれていて、どの3点も同一直線上にないものとします。点を2個ずつペアにして、ペアを線分で結ぶことにします。このとき、
定理: 線分同士が交点を持たないような、ペアの作り方が存在する。
証明)
ペアの作り方をpとする。pとは、線分の集合に他ならない。pにおける全ての線分の長さの総和をL(p)とする。
[1] pは有限通りしかないから、
L(p)を最小にするpが存在する。…(1)
[2] あるペアの作り方p0において、線分ab (点aと点bを結ぶ線分)と線分cd(同様)とが交点mを持つ場合を考える。abの長さを|ab|と書くことにすれば、三角不等式から明らかに
|ab|+|cd|>|ac|+|bd|
である。従って、p0から線分ab, cdを取り除き、代わりに線分ac, bdを加えたものをp1とすると、
L(p0)>L(p1)
である。つまり、p0は「L(p)を最小にするp」ではない。以上をまとめると、
p0において少なくとも2本の線分同士が交点を持つならば、p0はL(p)を最小にするpではない。
この命題の対偶をとれば、
L(p)を最小にするpにおいては、線分同士が交点を持たない…(2)
[3] 従って、線分同士が交点を持たないようなpが存在する。
(証明終わり)
定理を、離散的な「ペアの作り方」の上で定義される汎関数L(p)の極値問題に帰着した訳です。Lを最小にする具体的なpを計算する前に話が終わっていますが、この例のポイントは、Lとして「線分の長さの総和」を考えろ、などという示唆は問題(定理)の中には全く含まれていない、という事です。つまり、考える過程では[2]の
|ab|+|cd|>|ac|+|bd|
を検討した結果として「線分の長さの総和」がヒラメイたのであり、さらに、これによって問題が(広義の)変分に帰着されることに気付いたのです。
変分法は力学での応用が最も多いと思われますが、その場合、変分の結果として導出された微分方程式(停留状態が満たすべき条件)をどう扱うかの方に、実用を考える人にとっては興味の中心がある。けれども、微分方程式の扱い方はもはや変分の話ではない。
数学的には、漠然と「汎関数の極値問題」と言ってしまえばそれまでで、汎関数の定義域になる関数の空間を絞らないと深い話にならないが、絞ると変分法の一般論ではなくなってしまうから、いろんな絞り方について個々に論じるしかない。
つまり、純粋に 「変分法の応用」に絞った教科書を書くとすると、「問題に対して、旨い汎関数を導入し、その停留条件を導くまで」の事例集になるでしょう。しかし問題を最後まで解く方法が示されておらず(それを書くと、そっちの分量の方が多くなってしまう)、これ一冊では何の役にも立たない。また事例も様々で、「こういう類いの問題ならこの手」というパターンが見えて来ない(一方で、変分を最もよく使う力学では、とにかくラプラシアンやハミルトニアンを作れ、というパターン以外は出て来ない)。
これらが、ご希望のような本が少ない(ってか見た事ない)理由じゃないでしょうか。
お礼
有難うございました。私は用語として変分法と変分原理を混同して使っており、十分区別がついていないので私が言おうとしていることを推察して読み替えて頂けるとありがたいです。 あくまでも応用数学として捉えています。演習が必要ということなら、すなわちこの変分法(原理?)がうまく機能した例を数多くなぞることによってその使い方がだんだん習得できてくるというものなのでしょうか。いままで適用した例がない問題に対してこれを応用するための準備ができるのかな?という疑問もあるのですが。 要は勉強の仕方が分からない、あるいはそのためのテキストがあまり多くないというのがもともとの疑問なのですが。