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因果関係(錯誤ではなく)と法定的符合説

刑法の初学者です。 問題集を解いていたら、「Xは、制限速度30キロメートルの道路を時速65キロメートルでトラックを運転中、対向車に気づいて狼狽し急ハンドルを切ったため、事故を起こし、Xの知らないうちにトラックの荷台に乗り込んでいたAが死亡した。Xの罪責を論ぜよ」なる問題がありました。 ここで、故意における法定符合説の立場とパラレルに考えて、「およそ人の死傷」につき予見可能性あり、かつ、制限速度オーバーの運転につき結果回避義務違反ありとして、Xの過失を認めるまでは理解できました。 しかし、Xの客観的結果回避義務違反という「過失の実行行為」と、Aの死との因果関係は、はたして認めうるのでしょうか? 「行為者及び一般人が予見・認識しえた事情」を基礎とすると(行為無価値論を前提)、Aが知らないうちに乗り込んでいたことは基礎事情に含められないですよね。 とすると、因果関係においても法定符合説的に「およそ人の死」とか言うしかないと思うのですが、こんなふうに言ってしまっていいのでしょうか??(←こんな基準はなかったように思うのです) それとも因果関係を否定して、過失犯を不成立とするべきなのでしょうか?? なんだかとても混乱してきました。おわかりになる方、どうぞ教えてください。 なお、問題集の解答では、因果関係についてはスキップしつつ、Xの業務上過失致死罪を認めています。

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  • un_chan
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回答No.2

>しかし、Xの客観的結果回避義務違反という「過失の実行行為」と、Aの死との因果関係は、はたして認めうるのでしょうか?  結果回避義務違反を認めるということは,それ以前に,行為と結果との因果関係を認めているはずです(因果関係のない結果に対して結果回避義務を認めるのは,論理的におかしいでしょう)。  順番としては,まず,Xの行為とAの死という法益侵害の結果に因果関係があるのが前提ですが,これについては,車を運転して事故を起こし,Aを死亡させたことについて因果関係を認めない事情はありません(XがAの同乗を認識していたかどうかは因果関係とは無関係です)。多分,解答では,因果関係について書いていないのではなく「無謀な運転を行い,死亡させた」のような形で端的に認定されているのではないでしょうか。  そして,因果関係がある場合に,元の行為が故意なのか(故意犯),過失によるものなのか(過失犯),それとも過失もないのか(構成要件非該当)という問題になります。ここで,社会生活上,客観的に要請される注意を尽くしている場合には,過失が否定され,構成要件に該当しません。  しかし,Xは,制限速度を2倍以上上回る速度による無謀な運転を行い,その状況で急ハンドルを切っています。この場合,Xにおいて,人の死傷を伴う事故が発生させる可能性があることは当然認識し得たと言えます。そして,Xが制限速度で走行することは容易であったわけですし,Xに結果発生回避義務が認められることになります。  余談ですが,もし,XがAが荷台に乗りこんでいることを知っていて,事故によってAを死亡させようと思っていた,又は死ぬかもしれないがそれでもよいと考えていたのであれば,故意が認められる可能性もあります。  話を戻して,Aが荷台に乗りこんでいたことを知らなかったら,因果関係が認められない,という結論が妥当でないことは,少しケースを変えてみれば分かります。  同事故で,道端の生垣にに突っ込み,生垣の反対側にいたBを死なせた場合を考えてみます。この場合,BがそこにいることについてXに認識がなければ,Xの運転とBの死亡に因果関係がない,とは言わないでしょう。  なぜなら,相当因果関係は「そのような行為から,そのような結果が発生することが経験上一般的である」ときに,因果関係を認めるものです。そして,「経験上一般的である」というのは,結果発生の高度の蓋然性が認められることまでは必要とせず,ある程度の可能性があれば足ります。逆に言えば,予想しがたいような異常な事態の介入によって,はじめて因果関係が断絶し得ます。  設問で言えば,危険な運転によって事故が起こり,同じ車に乗っている人や,車の近傍にいる人に物理的に大きな力が加わる,という因果の流れが認定できます。  そして,Aが荷台に乗りこんでいること(又は,トラックが突っ込む先にBがいること)をXが知っていたかどうかという具体的な事実は,この抽象的な因果の流れとは直接関係しません。  トラックの荷台に人が乗り込んでいたことをXが知っていたかどうか,ということは,因果関係の話ではなく,責任の問題ではないでしょうか。

turbon
質問者

お礼

回答ありがとうございます! なお、お礼がとても遅くなり、申し訳ありません。 生垣の反対側にいるBの例で、ストンと分かりました。 本問ケースでも、「危険運転⇒近傍の人の死傷可能性」というように因果の流れを抽象的に捉えれば、実際に死の結果が発生している以上、具体的事実としてAが生垣の裏にいようがトラックの荷台に隠れていようが、そこは構わないわけですね。ありがとうございました!!

その他の回答 (1)

  • simazuka
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回答No.1

たぶんこの判例においても因果関係では条件関係説をとっているので 相当因果関係説の「行為者及び一般人が予見・認識しえた事情」は考えなくてもいいと思います。 そうするとこのケースでは 結果回避義務違反(実行行為)と結果発生に条件関係あるのか という公式が出来ます。 次に無断同乗者は因果関係のところではなく 結果回避義務違反(実行行為)のところで検討されています。 (よって、因果関係のお話はスキップされているのだろうと思います) つまり、結果回避義務違反の元になる予見可能性の対象について 無断同乗者は対象になるのか?との論点になりそうなのですが しかし この判例では結果回避義務違反の元になる 予見可能性の対象については理由が明確でなく 無断同乗者も含んでいるような判示をしてます。 (法定符合説的なのかという意識がでてくる) 我々からすると 『無断同乗者の予見可能性なんて!』といきたいところですが 判例は 『高度の運転注意義務→違反→無断同乗者の結果についても責任を負う』 としてます。

turbon
質問者

お礼

simazukaさん、回答ありがとうございます。なるほど、この場合、因果関係を条件説を採っているわけですね!(だったら問題集もそう書いといてくれればいいのにとも思いますが^_^; )  そして、結果回避義務違反(過失の実行行為)の前提である、予見可能性のところで「法定符合説的」にしているということですね。たしかに予見可能性ならば、故意と過失をパラレルに捉えたうえで法定符合説を採る説が見つかります。 なんとなくすっきりしました。ありがとうございましたm(__)m ※もっとも、かりに因果関係で折衷的相当因果関係説を採った場合、どんな帰結になるんだろう、という疑問は残りますね。とゆーかその場合、因果関係を否定するのが筋なんだろうと思いますが…。

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