市場経済というのは、もともとアダム・スミスからマーシャルの新古典派に受け継がれた、いわば近代経済学の主流ですよね。言ってることは要するに、個人や企業が自由に私利私欲で活動しても、「見えざる手」が働いて、うまくいく、秩序ができる、均衡する(バランスがとれる)と言う説ですよね。この同調者はいっぱいいて、本も沢山出ています(例えば、伊藤元重『市場主義』講談社なんかは読みやすい)。
問題は反論で、これはぐっと少なくなる。一番始めに批判したのはケインズやシュムペーターで、ケインズは、市場のなすがままにしておいてはいけない、政府がちゃんとコントロールすべきだと言って、政府が需要を政策的に作る必要性を強調した。これをルーズベルト大統領が採用して、大恐慌を救ったんですよね。市場主義一本槍だと、淘汰によって弱者が出ることなんですよ。アメリカのホームレスみたいに。シュムペーターは、市場主義者がいうように、均衡は自然にできるもんじゃない。人間や企業が動かすものだと言って、イノベーションを提唱した。(ぼくはいま日本に必要なのはこの考えだと思ってます)いずれにしてもこの辺の”やりとり”は、竹内靖雄『経済思想の巨人たち』新潮選書のアダム・スミス以降を読むと分かります。要するに市場主義への反論の核心は、個人や企業は完全な合理主義者じゃないというところにあります。それから市場主義へのもう一つの反論は、みんな私利私欲に夢中になって、社会福祉がおろそかになると言う点です。
ひるがえって日本は、旧ソ連の計画経済ほどではないにしても、明治維新以来政府や官僚がずっとコントロールし続けて来た。だから今、規制緩和による市場原理の導入が叫ばれいるんです。このあたりは、先の伊藤元重の本にも結構書かれています。お上のコントロールもいいけど、競争がゆるやかになって、なれあいがはびこること。一方彼らの市場主義への反論は、淘汰された弱者をどうするんだということ。農業なんかそう見られている。
以上のことを踏まえて、授業で教わったことを”整理”してみたらいかがでしょう。学問的に書くか、それとも身近な例を入れて書くか、どっちに良い点がつくかは、先生の好みを考えて決めて下さい。