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オペアンプ微分回路のステップ応答の時間幅について
オペアンプμA741による微分回路の質問です。 微分回路は、反転増幅回路(負帰還側抵抗を4.7kΩ、負入力側抵抗を20Ω)の負入力側抵抗に直列にコンデンサ20μFを接続したものです。オペアンプには±15Vを供給します。 この回路をOrCad(Pspice)で作成し、ステップ入力(1V)を与えると、出力は、振幅-14.6V、時間幅0.0031sのパルス波形になりました。パルスの面積は、14.6*0.0031=0.045となります。 一方、オペアンプの負側の電源電圧を-20Vにすると、ステップ応答は、振幅-19.6V、時間幅0.0024sのパルス波形となり、その面積は、19.6*0.0024=0.047となりました。 ここからが質問です。理論的なステップ応答はCR(dv/dt)=CRδ(t)ですが、オペアンプがδ(t)を出力できるわけがありませんよね。電源電圧以上の出力は出せませんから。それならば、理論的にはδ(t)となる出力は、実際のオペアンプの微分回路はどのように出力するのでしょうか? 上に書いたOrCadでの2つの実験では、共に、ステップ応答の出力としてのパルス波形の面積が、CR=0.000001*4700=0.047にほぼ一致します。つまりオペアンプはインパルスは出力できないけども、その面積(積分)が一致するような出力になっています。この解釈であっているでしょうか?また、どういう理屈でこのように動作するのでしょうか? オペアンプ関係の書籍などを見ても、この件についての説明は見あたりませんでした。インターネットで検索しても答えが見つかりませんでした。なにかご存じの方がいらっしゃれば、ご回答頂ければ幸いです。
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fukushi999 さんが観測された波形は、OPアンプの出力が飽和している部分です。 シミュレーションされているのは以下の回路だと思います。 ┌── Rf ─┐ V- │┏━━┓ │ Vin ─ C ─ Rs ──┴┨- ┠─┴─ Vout V+ ┌┨+ ┃ │┗━━┛ ┷ GND 【図1 OPアンプによる反転型微分回路】 この回路に入力 Vin にステップ波形(振幅 Va ) を入れたときの、OPアンプの反転入力端子 V- と出力端子 Vout の波形は以下のようになります。 ―――――――― Va Vin ― 0V _ ___ 0V V- / / _ ( Rs*Vmin + Rf*Va )/( Rs + Rf ) _ 0V / ̄ ̄ Vout / __/ _ Vmin ←→ tw 【図2 ステップ入力での各部波形】 Vin にパルスが入った瞬間、C は導通状態なので、V- には入力電圧 Va がそのまま印加されます。V- は反転入力なので、Vout には負の電圧 A0*( V+ - V- ) が出力されます。A0 はOPアンプのオープンループ利得、V+ は非反転入力端子の電圧(この場合は常に0V)です。A0 は非常に大きい(uA741で20000以上 [1] )ので、Va が数mVでも、ステップ波形を加えた瞬間 [2]、Vout は、OPアンプが出力できる限界電圧(Vmin)にまで振り切れてしまいます。この様子を示したのが図2の Vout が Vmin にまで下がっているところです。Vmin はuA741の場合、手元の回路シミュレータ(CircuitMaker)だと、負電源電圧が -15V のとき -13.0V でした(普通のバイポーラ出力段の Vmin は電源電圧より 2*Vbe 程度下がるはずなので、V-が -14.6V というのは大きすぎる気がします)。 この状態のとき、OPアンプは正常動作していません。つまり、V- と V+ の電圧差がオフセット電圧になるという「仮想ショート」が成立していません。したがって、この状態での図1の等価回路は以下のようになります(OPアンプの入力抵抗はMΩ以上なので Rf = 4.7kΩ なら無視できます。OPアンプの入力容量も数pFと、C に比べて無視できます)。 ↓V- Vin( = Va ) ─ C ─ Rs ─── Rf ── Vmin 【図3 OPアンプが飽和しているときの図1の回路】 このときの V- の波形は次式で表わされます(簡単はCR回路ですので結果だけ書きます)。 V- = Vmin + Rf*( Va - Vmin )/( Rs + Rf )*exp{ -t/C/( Rs + Rf ) } --- (1) t は時間 [s]、C の単位は [F]、Rの単位は [Ω] です。また、Vmin < 0 です。これは、図2の V- の波形で示したように、最初は ( Rs*Vmin + Rf*Va )/( Rs + Rf ) という電圧だったのが、C が充電されることによって電流が減少し、だんだん V- の電圧が上昇することを表しています(図は直線で描いていますが、上式のように実際は指数関数的変化です)。そして V- が 0V に なった瞬間に(正確には A0*V- が Vmin に等しくなったとき)、OPアンプは正常に動作し始め、Vout の波形は次のようになります。 Vout = - Va*Rf/Rs*exp( -t/C/Rs ) この波形は図2の Vout が Vmin から上昇していく部分になります(これも図は直線で描いていますが指数関数的変化です)。このように、図1の回路にステッ電圧を入れたときの出力のパルス幅に相当する部分は、OPアンプが飽和していて、出力電圧が Vmin に振り切れている状態になります。この部分のパルス幅 tw は、式(1)で V- = 0 となる時間 t になります。つまり tw = C*( Rs + Rf )*ln{ Rf*( Va - Vmin )/Vmin/( Rs + Rf ) } で表わされます。C = 20e-6 [F]、Rs = 20 [Ω]、Rf = 4.7e3 [Ω]、Va = 0.5 [V]、Vmin = -13 [V] のとき、tw = 0.00316 [s] = 3.16 [ms] になります。CircuitMaker によるシミュレーション結果は 3.2ms 程度で計算と一致しています。負側の電源電圧を -20V としたとき、シミュレーションでは Vmin = -18.0V で、tw=2.2 [ms] で、これも計算結果( 2.19 ms ) と一致しています。 tw はVa や Vmin によって変わります。fukushi999 さんが計算された tw*Vmin は式で書くと tw*Vmin = Vmin*C*( Rs + Rf )*ln{ Rf*( Va - Vmin )/Vmin/( Rs + Rf ) } になりますが、これは Vmin が -20V ~ -5V の範囲ではほぼ一定(0.39~0.41)です。この物理的意味はちょっと分かりません。 [1] uA741データシート(http://www.ortodoxism.ro/datasheets/texasinstruments/ua741.pdf)の5ページの AVD の項目がオープンループ利得になります。V/mV という単位は、1mVの入力(V+ - V- のこと)で Vout が何Vになるかという意味です。 [2] OPアンプの出力変化は、スルーレート(データシート5ページの表の一番下のSRの項目)で制限されるので、Vout は一瞬で Vmin にまで行くことはなく、uA741の場合、Vout が 0V から -15V まで振れるのに、15/0.5 = 30us くらいかかりますが、これはパルス幅に対して非常に小さいので「瞬間」と表現しました。
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- foobar
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OPアンプ入力につながっているコンデンサは20μFですか?(ご質問の後半の式では10マイクロFで計算されているようですが) 回路の動作状況に関しては、先の回答で詳しく説明されていますので、パルス幅の面積に関して。 ・ステップ波形を入力してしばらくして出力電圧が0に戻ったときにはオペアンプの入力端子電圧が0に戻っているはずです。 ・このとき入力のコンデンサには、Vin(1V)*C(10μF?)の電荷が溜まります。 ・この電荷は、Rfを通じてVoutから供給されます。(厳密にはVinの影響もあるのですが、Vout>>Vinなので) ・結果、∫Vout/Rf*dt(≒Vout/Rf*Δt:飽和してVoutがほぼ一定なので)とCin*Vinが(ほぼ)等しくなります。 ・上の式を整理すると、Vout*Δt≒Rf*Cin*Vinになります。
お礼
foobarさん、面積についてのご回答をありがとうございました。 お教えいただいた式をもとに、よく考えてみたいと思います。 オペアンプの入力端子電圧は見ていなかったので、いま見てみると、最初に0.9Vまで上昇してました。 また、コンデンサは10uFでした。20kΩと見間違えて20uFと書き込んでしまったようです。ご回答いただいた皆さん、失礼しました。
- A-Tanaka
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OrCad(Pspice)のシミュレーションにおけるのは、次のペーパによっています。 http://vilab.org/lecture/?plugin=attach&refer=ELab&openfile=%A5%AA%A5%DA%A5%A2%A5%F3%A5%D7.pdf 現実には、オペアンプを搭載した基板の持つ浮遊容量(基板の層によって違うし、そこに生じる電界容量によって決定される)や抵抗値によって、インピーダンスを生じます。そのため、入力状態と理想状態と完全に一致した出力になるとは限りません(この辺りが、アナログ回路の難しいところです)。また、出力状態に関しても、無限大のインピーダンスを持つプローブはとりあえず存在しないため、極限値に近い値(数学的には、誤差とみなせる範囲になるくらいのプローブを用いる)ことによっています。 その辺りをキチンと理解して、シミュレーションなどを活用されると良いと思います。 ならば、δ(t)となる出力は、少しだけ山が削れて(これを電気工学ではなまると呼びます)、多少遅れて生じるインパルスだと思えばよいでしょう。 また、面積分に関しては、理想出力を前提にすればその通りです。つまり、測定側のシステム(もしくは、出力を利用するシステム側)のインピーダンス(反射が存在しない、内部抵抗値が無限大等の条件)によっているからです。 たぶん、出力回路側に、何も接続しないという条件で回路を記載してシミュレーションをしているからだと思いますけど・・いかがですか?
お礼
A-Tanaka様、早速のご回答をありがとうございました。 たしかにOrCadでやりながらも、どの程度まで本当の実験結果に近いのかは自信が持てないのです。 今回の回路だと、コンデンサに直列の抵抗を外すと、インパルス直後に発振しますが、実際にどの程度発振するかは、回路造ってみないと判らないだろうし、ノイズ環境によっても違うだろし。浮遊容量とかも影響するのかも。 インパルス状の出力を考える場合は、出力インピーダンスとか入力インピーダンス、最大の出力電流とかを数値的に考えないとだめな気がします。ご紹介のpdfを読んでみますね。
お礼
inaraさん、とても詳しい解説をありがとうございました。 仮想ショートが成立してない、という発想はありませんでした。 教えていただいた数式を参考に、よく考えてみたいと思います。