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ウイルスと維持培地
次の工程で細胞にウイルスを吸着させ、細胞障害性を観察しています。 (1)コンフルエントになった細胞をFCS不含Eagle MEM(EagleMEM参照)で洗浄し、1時間培養する。 (2)ウイルスをフラスコに添加し吸着させる。(37℃,60分間) (4)維持培地(+アセチルトリプシン1μg/ml(1μl添加))をフラスコに入れる。 (5)2~3日培養。 (6)細胞障害性を毎日確認する。 吸着後にEagle MEMではなく維持培地で培養するのは何故なのでしょうか? Eagle MEMで培養したことないので差は分からないのですが、もし置き換えが出来るのならば維持培地を作製しなくてもいいので楽だなと思ったので知っている方がいましたら教えてください。 維持培地にはEagleMEMの上にTPB(Tryptose phosphate broth)、1% yeast extract、10% glucose を添加しています。
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通常「維持培地」とは血清(FCS)を含まないか含んでも濃度を落とした培地を指します。 私のラボではたいていEagle MEMのみで基礎培地を作っておき、細胞の継代時にはGM(増殖培地)としてMEMにFCSを5%添加して重曹でphを調整したものを使います。 ウイルス接種時は培地を吸引後、PBSで3回ほど洗浄してウイルスを接種し、1時間ほどの吸着後に維持培地としてMEMを重曹でph調整だけしたものを入れて培養、という感じです。 CPE発現までに日数がかかるウイルスだと維持培地に1~2%のFCSを添加することもありますが、ウイルスによります。 維持培地にFCSを添加するのが禁忌な場合は、FCSに培養するウイルスの抗体が含まれている可能性がある場合や(牛のウイルスは基本的にNGです)、培養にトリプシンを必要とするウイルスです。血清でキレートされてしまいますから。 ただ、呼吸器や消化管に感染するウイルスの多くは培養にトリプシンが必要なのですが、それは抗原部位の開裂にトリプシンが必要だからですので、接種前のウイルス液をトリプシン処理しておけば維持培地へのトリプシン添加は必ずしも必須ではないです。 ma104でロタウイルスを培養したこともありますが、ウイルスのトリプシン処理だけで維持培地にはトリプシン非添加でもうまく培養できた経験もあります。 腸管ウイルスでもトリプシンを必要としないウイルスもけっこうあって、タヌキの腸内容からパルボウイルスを分離した時はMDCKでトリプシンを全く使わずに分離できましたし、呼吸器ウイルスでもパラインフルエンザウイルス3型など、トリプシン非添加のVero細胞で容易に分離できるものもあります。 インフルエンザウイルスをMDCKで培養する時も、通常はトリプシン処理が必要ですが"高病原化"したウイルスはトリプシンは不要ですしね。 トリプシンを必要とするウイルスの培養でも、大切なのは接種前のウイルス液をトリプシン処理することで、維持培地にトリプシンを添加するのは「気は心」くらいのものだと認識しています。
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Jagar39です。 学生さんでしたか。それでは確かに「他機関」にはまだ知り合いはいないでしょうね。頼りは学生同士や教官ということになりますか。 まあ細胞やウイルスの培養は、確かに明確な理由や根拠が希薄で「こんなもん」というのが多い世界ではあります。FCSですら完全に解明されているわけではありませんから。ましてTPBやYEなんて「こんなもん」以外の何物でもない添加物だったりします。 でも、トリプシンは割と理由が明確なものなので、そのくらいは教官もちゃんと教えてやって欲しいものです。 その培養系の確立そのものが論文のネタになるような培養の場合、その手法については「やったらできた」みたいなことになりがちです。 私も一応「日本初症例」のウイルス分離例を1つ持ってますが、「どうやって分離したのか」という質問は今でもよく受けます。そんなに変わったことをしていたわけではないのでいつも困っているのですが・・・ 下痢便からロタウイルスを分離するなんてのもかなり苦労します。 ma104を使うのですが、普通に1時間吸着すると便中の毒性成分で細胞が全滅してしまいますので、希釈倍率を極端に上げたり吸着時間を短くしたりといった工夫は必須ですね。 すると元々増えにくいウイルスなのにさらに条件が不利になりますから、プレートやフラスコの静置培養ではなく、ガラスのフラスコで回転培養して3代継代してようやく分離したり。 このガラスフラスコでの回転培養は、私個人的に秘かに「困った時の回転培養」という標語を作っているくらい威力大なのですが、では「なんで回転培養?」と聞かれると明確な回答はできないです。 それこそ最初に教わった先生が「ウイルス分離はガラスのフラスコで回転培養しなければならない!!」という人だったので、普段は「そんな面倒なことしてられるか」とサボりつつも、"困った時"だけその教えに従っているわけなのですが、その先生も理由については「こんなもん」としか教えてくれなかったですから。 私は研究職ではないので特に「専門」はないのですが、その代わり何が出てきても野外材料から分離・同定して"診断"し、必要とあらばその分離ウイルスで野外の抗体検査をしたり抗原解析や遺伝子解析くらいまではできることが要求される職種です。 といってもよほどポピュラーなウイルスでない限り、巡り会う大半のウイルスは「初体験」ですから、他機関の知り合いという存在が非常に大切になってきます。私にとっては初体験でも、日本のどこかには経験者がいますから(日本初症例でない限り)。 私の経験では、遺伝子解析なんかはペーパー読めばそれでできてしまったりしますが、培養は一筋縄ではいかないことが多く(ペーパーのとおりにやっても上手くいかないことの方が多いような気が)、他機関との横の繋がりがすごく大事です。 何をどうしても取れなかったウイルスが、「あ、それは重曹を3%くらい入れてメディウムを真っ赤っかにしたら取れたよ」なんて思いもよらないことを聞き、そのとおりにしてみたら取れた、なんてことが本当にありましたから。 ま、大学だとそういう「横の繋がり」は教官の役目ですけどね。
お礼
なるほど…専門のつながりは大事ですね。 プロトコルや論文を読んでも詳しい方法など分からずなかなか上手くいかないことが多いです…。
Jagar39再びです。 この"回答"は質問に対する回答ではないので削除していただいてもけっこうなのですが、2点ほど。 まず質問者さんは直近にこれを含めて3つの質問をされていますが、これは1つの質問でまとめることができますよね。同じような質問が3つ並ぶと回答する方も3つを読み比べてどの質問にどういう回答をするか迷ってしまいますから、疑問点を整理して簡潔な質問ができるよう努力した方が良いと思いますよ。 それとこれは疑問なのですが、質問者さんの周囲にこの質問に答えてくれるような人はおられないのでしょうか。 ラボで先輩も先生もいなくて1人で仕事をするという状況はあまり考えられないですし(そういう職場は確かにあって私もそういうところで仕事をしていたのですが)、そのような場合でも同種の別機関に知り合いの数人はいるはずだと思うのですが・・・ このようなあまりに専門的な質問は、こういうところより「質問すべき場所」が他にあるように思います。こういうところで質問するのが"不適切"という意味ではなく、その方が早く適切な回答が得られることが期待できる、という意味です。 まあ、こういうサイトでMDCKだのma104などという単語が「通じてしまっている」のは私もちょっと驚いているのですが(私のIDの元ネタも判っていたりして)、普通はラボの先輩か前任者か他機関の知り合いにでも電話するのが最も早くて信頼性も高いかと思います。 これは苦言ではなく、同種の仕事をしている者からの助言だと受け取っていただければ幸いです。
補足
ご指摘ありがとうございます。 実はただいまこの系を確立中で先輩も同輩も誰もこの実験系をやっていないため今色んな所から情報を得ている段階なんです。 もちろん専門書や論文を読んだりしているのですがなかなか理解できなかったり細かい所まで載っておらずもやもやしていた所こういう質問できるサイトにめぐり合えたんです。 教授に聞いても「こういうものだから」と何故その試薬を使うのかということを教えてもらえないのです。 研究室でも皆ばらばらの題材をやっているのでお互い話し合ったり疑問を投げかけたりはあるのですが「何でだろうね。。。」で終わってしまうのが現実です。 他機関に知り合いももちろんいないのですが、他に調べられるような方法は無いんでしょうか。。。
- tunertune
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私の場合は、普段はMEMにアミノ酸(Glu含)、ビタミン、BSAをいれたものを維持培地として使っていますが、結構増えます。 ちなみに、増殖培地?に普段使っているのとは、BSAを入れるかFCSを入れるかの違いのみです。 MEMは「Minimum Essential Medium」なので、この培地を使ったとしてもゆっくりですが増えます。 MA104がどれほど増えるか、どんな実験なのかによって状況は変わってくると思います。細胞の形態とか見るのだったら増えるとまずいかもしれませんね。 あと、FCSを除くのはトリプシンをキレートするからですかね。
- tunertune
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先の質問にもでてましたが、FCSが入っていると都合がわるいからです。 また、細胞によっては維持培地でないと増えすぎてしまってCPEが分からなくなったりもします。ちなみに、維持培地はいろいろ入れてますけど、MEMをPH調整したぐらいで何もいれなくてもMDCKくらいならへっちゃらですよ。
補足
迅速なご解答ありがとうございます。 MDCK細胞を用いた場合の維持培地はMEMにBSAとアセチルトリプシンしか添加していないようなのですが、MA104(サル胎児由来腎細胞)においては上記のように添加しているのですが、FCS不含のEagleMEMだと細胞が増えてしまうのでしょうか。。。?
お礼
とても分かりやすい説明ありがとうございます。 吸着前のトリプシン処理が大事だったんですね。