「移住」とは、その漢字の表現にある通り、「住(居)・住居」を「移す」ということで、住居や居住場所を移すことです。
日本国内で住居を移す場合と日本から国外に住居を移す場合と同じような意味ですが、「移住」は、別宅などを持つという意味ではなく、本籍住所を移すというような意味が、人間の場合はあるので、外国への移住は、本拠の住所を外国に移す意味で、少し区別があるのでしょう。
生物が住処を変えるのも移住で、この場合、国境の違いも何もありません。
「移転」は、その狭い意味で、「人間の移住」の意味を含んでいます。動物の移住の場合、「移転」とは言わないでしょう。「渡り鳥がシベリカから移住して日本に来た」とは言いますが、「渡り鳥がシベリアから移転して日本に来た」とは言いません。
「移転」というのは、広い意味での「移動・移行」で、その意味では「渡り鳥の移転」というのも可能性ですが、あまり使いません。
「移り転じる」という意味で、「状態の移動・変化」にも使いますが、「物質の状態の移転・気体から液体への移転」とか、「市立図書館が不便な場所に移転した」などと言いますが、少し不自然な感じがしない訳ではありません(間違った使い方ではありません)。
何故、「不自然な感じ」を幾らか感じるかというと、「移転」は、「移動を、転載・転記する」という意味があるからだと思えます。「転載・転記」というのは、法的な記録関係の記載の変更になります。
「住所の移転」は、住民登録上での住民証明の記載の移動を意味しているので、実際に、家屋や、住居が移動するのとは違います。普通は、居住場所の移動(移住)と、それを役所等に届ける「移転」は、ほぼ同時に行われるのですが、実際は居住場所は動いていないにも関わらず、住民票だけ「移転」するということも可能なのです。
これは、「移転」が、法律的な何かの状態や権利の移動を、記録証明で、転記・転載するという意味が強いので、こうなります。
現住所登録の「移転」もあれば、土地不動産・動産などの権利者の「移転」もある訳で、これらは、法的な「転記」などの操作が前提・準前提にあるので、こういう表現になります。
事務所・営業所・工場・本社なども場所を変えれば「移住」ではなく「移転」ですが、この場合も、法的な「登記・記載の変更」というものが前提にあるので、こういう表現なのでしょう。
「本をばらばらに置いていたのを、書斎にまとめて移転した」という場合は、「状態の変化」で、法的な登録の操作の反響が少しあるのだと言えます。本や家具の位置を動かすのに、役所に届けねばならないというようなことはありませんが、「登録記載の変更」の意味が、影響しているとも考えられます。
長いですが、まとめると、「移住」は、その当事者が、文字通り居住場所を移動することです。「移転」は、状態や権利関係の登記・記載の変更・移動です。
従って「A氏はアメリカに移住した」とは言っても、「A氏はアメリカに移転した」とは、あまり言いません(「会社の指示で」というのがあれば、会社も準法的措置でそうしたので、こういう表現も可能になるでしょう。またこの場合、「A氏の勤務地が移転」したので、それに伴い「住所も移転する」のだと言えます)。
お礼
早速、ありがとうございます。 参考になります。