競売と破産の手続が重なりあっているようです。破産のことは詳しくないので競売の手続きに限定して回答します。
競売で不動産が売却された場合に,従前の賃借権は,
(1)新たな所有者に従前の賃借権が引き継がれる場合
(2)売却によって賃借権が終了し,引き継がれない場合
とに分かれます。
(以下,抵当権設定後に締結された賃借権という前提での回答になります)
(1)の場合,大家さんが変わるだけですから,立ち退く必要もありませんし,解約時の敷金の返還も新たな所有者から受けることになります。
(2)の場合には,賃借権がなくなってしまうわけですから。従前の大家さんから敷金の返還を受けることになります。その上で,新たな所有者との間で賃貸借を結び直すか(この場合,敷金を求められることもあるでしょう),立ち退きを求められることになります。
(1),(2)のどちらになるかについては,平成16年4月1日に賃貸借が存在していたかが大きな問題になります。
(1)平成16年4月1日以後の賃借権は一律に終了してしまい,6月間明け渡しが猶予されるに過ぎません。この場合,売却によって契約は終了していますから敷金は従前の大家さんに請求することになり,新たな大家さんには支払い義務はありません。
(2)平成16年4月1日に存続していた賃借権については,契約期間や更新の内容や税金の差押等によって変わってきます。
執行官が賃借権の内容を調査するのは,執行裁判所が賃借権の判断をするためと理解してよいでしょう。
賃料は売却までは従前の大家に支払うべきでしょう。
解約(売却)までは敷金の返還請求権は発生していませんから毎月の家賃と相殺することはできません(理屈では)。ただ,・・・困りますよね。
購入の件ですが,裁判所の競売価額は通常の取引価額の40%から50%のラインに設定されています。また,新たな所有者に引き継がれる賃借権者がいる場合は更に減額されます。
競売の価額が通常より安いラインに設定されるのは,内部が見れない。占有者(賃借人)がどのような人か分からない。強制執行の必要がある場合がある等・・・,様々なリスクがあるからと言われています。
逆に言うと,賃借人である人に取ってはリスクが少ないとも言えます。この意味で,入札や任意(破産手続き中であれば難しい?)売却によって,買い取ることも積極的に検討してよいのではないでしょうか。
ともあれ,競売や破産の手続きについては,裁判所に照会するのが一番でしょう。