お答えします。
憲法の「私人間について憲法の適用はあるか」という問題ですね。
憲法というものは元来「国家の権利、権力を制限し国民の人権を守る」ことが目的です。国家というのは独善的で暴走してしまう性質をもっているため、放っておくと国民の自由や権利が脅かされてしまいます。ですから昔の人がそういうことがないように、
「人間として生きるために必要な自由や権利は国家であっても破ったり改正することのできない。もしこの法律を国家が破ったら私達は国に対して反乱暴動を起こす権利を持つ。」
などと定めて国に対して市民への圧制や暴虐を自制させました。これが近代憲法の原型です。このように憲法というものは国家の権利を制限することに意味があったわけです。
ですから本来表現の自由であるとか、信教の自由というのは国に対して国民が主張する内容なわけです。
しかし、現在企業等によって憲法上の権利とされるものが侵されるようになりました。たとえば企業が女性差別をする場合、憲法第14条の法の下の平等原則に反するようにみえますが「民対民」については憲法の適用はありません。
写真誌や週刊誌が個人のプライバシーを侵害すれば13条の幸福追求権の侵害にも思えますがやはり憲法の適用はありません。
本来は「国家対国民」について規定する憲法ですが、このような企業や団体によって多数憲法で保障された権利の侵害が行われている現在、これに憲法の適用がないとすると結局は個人の人権保障をするはずの憲法の意味が薄れるのではないか。
そのような疑問から「民対民」の関係にあっても14条の平等原則や13条の幸福追求権や、表現の自由等については憲法を適用することによって被害者を救済するべきではないのか、というのがいわゆる「人権規定の私人間適用」の問題です。
お礼
詳しいご説明、大変感謝いたします。憲法とは、国対民のものだったんですね。知りませんでした。おかげさまで、本の文章の内容がいまいち理解できなかったのですが、分かってきました。ありがとうございました。