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弁護士の方に質問します
時効はなぜあるのでしょうか。殺人をして時効になったから罪を問われないのは納得いかないのですが、時効にはそれなりの理由があると思いますので、教えてください。それと海外にいる時は時効の年数に換算しない理由も教えてください。
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質問者の言う時効は「公訴時効」のことを言っているのだと思いますが、そういった制度が存在する理由には大きく四つの考えがあります。 まず、一つには、(1) 時の経過により被害感情、応報感情が薄れ、犯罪の社会的影響が弱くなり、これによって未確定の刑罰権が実体的に消滅するという考えです。しかし、これは実体的に刑罰権が消滅するのであれば、無罪の判決をすべきであって免訴ではないはずです。 次に、(2) 時の経過により証拠などが散逸し、適正な裁判の実現が困難になるという考えがあります。しかし、これでは犯罪の軽重によって時効時間に差が設けられていることが説明できません。 そして、(3) この考えは、(1)と(2)を合わせた考えです。つまり、可罰性の減少と証拠の散逸、両者を合わせて公訴時効の存在理由とする考えです。しかし、2つの考えを合わせたのだから、(1)と(2)の両者の批判がそのままあてはまります。 四つ目の考えは、(4) 公訴時効は一定期間に犯人が訴追されないという事実状態を尊重して、国家の訴追権行使を規定し、個人を保護するための制度だと考えます。つまり、可罰性の減少や証拠の散逸がなくても、犯人の側からみて訴追されないという利益が保護に値するようなものならば、これを公訴時効として刑罰権を消滅させようという考えです。これは、国家の刑罰権も絶対的なものではなく、個人の保護の要請に道を譲るべきと考えるからです。 以上から、法律的には(4)の考えが妥当です。被害感情からすると納得できませんが、法律的には仕方ありません。なぜなら、(1)~(3)に対しては、上記の通り矛盾や批判があり、そもそも公訴時効という制度そのものが犯人の利益になるのだから、むしろ(4)のように考えるのが法律的には自然だからです。 そして、現実的あるいは実務的に、公訴時効の存在理由を言うと、一つの事件を永遠に警察が捜査などをするわけにはいかないからです。極端に例えれば、100年前の事件を今でも捜査するのは大変ですし、逆に、今日起きた事件を100年後も捜査しなければならないとするのも大変です。それに、他の事件が次から次へと起こります。ですから、ただでさえ予算も人員も限られている中、ずっと一つの事件に縛られているわけにもいきません。もちろん、被害者からすると永遠に許せませんが、現実的にはどこかで区切りをつけなければならないのです。ただ、日本の公訴時効は短いと思うので、もっと期間を長くすべきだと思います。 そして、犯人が海外にいると時効の年数が換算されないのは、法律は原則国内でのみ適用となるからです。ですから、犯人が国外にいるときはその適用外なので時効が進行しません。