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ドイツ語にも堪能な方、力をお貸しください
- ドイツ語にも堪能な方がいらっしゃいましたら、どうかお力をお貸しください。この質問は「外国語」のカテで長い間お尋ねしてきたのですがどなたからも回答をいただけませんでした。そこで英語にも関係しますのでこちらでお尋ねすることにしました。
- イェスペルセン『文法の原理』(中、岩波文庫、安藤貞雄訳、p.225)に次の記述があります。「ゲーテの『ファウスト』でヴァーグナーはいう、Ach gott! Die kunst is lang: Und kurz ist unser leben. (Faust: erster Teil) [ああ神よ! 芸術は長くわれわれの人生は短い]」
- もしこのヴァーグナーの台詞を現代ドイツ語で表記すると仮定した場合、この「(一般論としての)芸術」に当たる現代ドイツ語は(1) 冠詞つきで ”die Kunst” (2) 冠詞なしの “Kunst”のどちらの方が自然ですか?
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他に回答される方がいないようなのでお答えします。 1.ドイツ語の冠詞と英語の冠詞の使い方はよく似ていますが、いつも一致するわけではありません。特に「英語では無冠詞だが、ドイツ語では定冠詞をつける」という例は非常にたくさんあります。 たとえば (1)曜日、月 英語:on Sunday (日曜日に) ドイツ語:am Sonntag (am =an dem の短縮形で前置詞an+定冠詞) 英語:in January (一月に) ドイツ語: im Januar (im =in dem の短縮形で前置詞in+定冠詞) (2)学校に行く、通学する 英語: go to school ドイツ語: zur Schule gehen (zur = zu derの短縮形で 前置詞zu+定冠詞) (3)「人間というものは・・・」 英語: Man is mortal. (人間はいつかは死ぬ) ドイツ語: Der Mensch ist sterblich. (4)「・・の・・・」 英語: [the] history of music (音楽の歴史) ドイツ語: die Geschichite der Musik 等々・・・・・・・ 一方、逆に「ドイツ語では無冠詞だが英語では冠詞をつける」という例はあまり思い当たりません。 なぜドイツ語のほうが冠詞を多く用いるのか、その理由ははっきりしません。 ただ、英語の冠詞が変化しないのに対して、ドイツ語の冠詞は、 たとえば「犬が」というときはder Hund,「犬を」というときはden Hund,「犬に」というときはdem Hund というように、格変化しますし、また、名詞の性(男性、女性、中性)や数(単数、複数)によっても形が変わります。 つまりドイツ語の冠詞は、名詞の性や格を示すという、英語の冠詞にはない機能をもっているので、その分だけ重要度が高く、省略しにくいといえるかもしれません。 2.次にご質問の、「芸術は長く、我々の人生は短い」という文について考えてみます。 これは要するに「芸術」という抽象名詞に定冠詞をつけるかどうかという問題です。 この場合も、英語よりもドイツ語のほうが、冠詞をつけることが多いと思います。 (現代)英語では「芸術」といった抽象名詞が単独で用いられるときには原則として冠詞をつけませんが、ドイツ語の辞書や文法書を見ると、ドイツ語では冠詞をつける例とつけない例の両方があり、抽象名詞に冠詞をつけるのが原則なのかつけないのが原則なのかという点についてすら異なる意見があります。いずれにせよ文法的には、Kunst ist langもDie Kunst ist langも どちらも正しいと言ってよいでしょう。冠詞をつけないほうが漠然とした感じで、定冠詞をつけると「ある特定の対象を念頭に置いている」ニュアンスになるという感覚的な差はあります。 ファウストの中のせりふでKunstに冠詞をつけているのは、時代が古いからではなく、unser Leben との対比やニュアンスの問題だと思います。 こうしたことからも分かるように、ドイツ語の冠詞の用法は非常に難しく、ネイティブスピーカーや専門の学者でなければ、完全にマスターすることは困難です。 ドイツ語で冠詞のついている言葉が、英訳すると無冠詞になるのはよくあることなので、それほど気にしなくてもいいと思います。
お礼
とても興味深いご説明をありがとうございました。 勉強になります。