このshの子音(発音記号は一般に∫)については言語によって事情が異なります。
日本語については不明な点も多く、昔のサシスセソがどう発音されていたか正確には分かっていないようです。ともあれ、日本語の方言でsがshになるものでも全てそうなるのではなく、セがシェになるのが顕著です。例:先生→シェンシェー、せちい(嫌だ)→シェティーなど。これはシがsiではなくshiと発音されるのに似ているのではないかと思います。つまり、イやエは舌の位置が高く子音を変化させる作用があります。これは口蓋化や軟音化と言われ、世界で割と見られる現象です。イ段に特に顕著で、日本語のイキシチニヒミリは英語のeel, key, sea, tea, need, he, me, leadとは発音が違います。日本語の方が舌の位置がより高くなります。こうなるとスィ、ティ、はシ、チと聞こえるようになります。このような現象が起きる言語の代表はロシア語などのスラブ系ですが、フランス語でもsi, tiをシ、チと発音する人が少なからずおり、これはフランス語のiが鋭い音のため軟音化を起こしたと考えられます。なお、韓国語でもsi(ハングルは入力できません)は「シ」と発音するそうです。
つまり、iが軟音化を起こしやすい言語を話す人は英語のseaのような「スィ」が発音しづらいと言えるでしょう。ただし、これらの言語ではsiが軟音化した「シ」と本来の「シ」の二つのシを持つことになります。(フランス語のsiとchi、ロシア語のсиとшиは発音が違います。)
英語のようにsとshの区別が重要な言語ではどちらも難しいと言うことはないでしょう。もちろん舌をまだうまく使えない子供は混同することはあるでしょう。また、英語やドイツ語などのsとshの違いは前述の軟音化よりも[sk→∫]のような子音自体の変化によるものが多く(軟音化によるものもなくはありませんが)もともと違っていたものです。
古典期のラテン語やギリシア語にはshの音はなく、昔は今よりもshの音を持つ言語は少なかったのでしょう。質問文の聖書の話も実際に行われたというよりギレアド人とエフライム人の言語の違いを述べるための話だったのかも知れません。
お礼
とても勉強になります。100パーセント消化できてはいませんが、思い出したらここに戻ってきてまた読むつもりです。ありがとうございました。
補足
Srilanka は英語では シュリ、スリ、どちらでもいいようですが、どうも前者のほうがBBCでは多いようです。(BBC WORLDでは圧倒的に前者) 前者のほうが発音しやすいような気がします。これは普遍的ではないでしょうか? どう思われますか?