エネルギーと言っても色々なエネルギーがあります。しかし、共通して言えることは、
エネルギーは原点の取り方が自由である
ということです。原点を大きい値に取り直せば、負の値が出てきます。
例えば原子内では、マイナスの電子が、プラスの原子核からクーロン力を受けて引き寄せられていますが、このときの電子のポテン
シャルエネルギー(クーロンエネルギー)を考えましょう。こういう場合は普通、エネルギーの原点は無限遠とします。つまり、電
子が原子核から無限に遠く離れたときの電子のポテンシャルエネルギーを0とするのです。すると、電子のポテンシャルエネルギー
は常に負となります。これは、電子が原子核からどれだけの距離にあっても、常に引力が働くことに相当します。
上ではクーロン力だけを考えましたが、しかし実際には、原子核に近づきすぎると、電子には斥力が働きます。つまり、ポテンシャル
エネルギーは正となります。
私は物理畑なので、物理化学はあまり知りません(でも何となく分かります)が、ここではおそらく物理化学でも知っておく必要があ
る電子親和力を例にとって説明します。電子親和力は、最後に「力」がついていますが、普通[kJ/mol]などの単位で表されるエネルギ
ーです(1molあたりのエネルギー)。
電子親和力は、ある原子に電子を与えて陰イオンにする際に放出されるエネルギーです。たとえば塩素原子の電子親和力をE(Cl)とす
ると、
(1) Cl + e- → Cl- + E(Cl) (Cl-とは、塩化物イオンのことです。右肩に-が乗っていると思ってください)
です。E(Cl)は正の値です。塩素が電子を引きつける傾向が強く、この反応が起こりやすいため、発熱反応なのです。
ところで、マグネシウムMgの電子親和力をE(Mg)とすると、
(2) Mg + e- → Mg- + E(Mg) (Mg-とは、Mgの一価陽イオンのことです。右肩に-が乗っていると思ってください)
ですが、E(Mg)は負の値です。Mgは電子を与えても、Mg原子と電子の間に斥力が働くからです。E(Mg)を絶対値|E(Mg)|を用いてこの
式(2)を変形すると、
(2) ⇔ Mg + e- → Mg- - |E(Mg)|
⇔ Mg + |E(Mg)| + e- → Mg-
これは、Mgに電子を与えて陰イオンにするためには、正のエネルギーが必要(吸熱)であることを表しています。
(Mgが陰イオンになりにくいのは、Mgがアルカリ土類で陽イオンになりやすいことからも想像できますね)
ポテンシャルエネルギーの正負と引力/斥力との対応関係はエネルギーの種類によります。でも、どんなエネルギーでも原点の取り
方によって、正か負かは変わってきます。
できれば、terebiさんの言っているエネルギーとはどんなエネルギーなのか補足してください。
なお、質問文中のdEとは、Eの微小量ということでしょうか? dEが負ということは、エネルギーEの変化が減少の向きにあるという
ことです(Eの変化量が負)。例えば、「dE/dt < 0 (tは時間)」は、エネルギーが時間とともに減少することを表しています。
エネルギーという物理量は、「大きさ」というより、「差」の概念ですから、負の値が出てくるのは当然なのです。
お礼
alien55様 適切なご説明ありがとうございます。非常にわかりやすかったです。ご指摘の通り、dEは濃度変化によるEの値の変化を指すものです。今後ともよろしくおねがいします。以上