二輪車の歩道上駐車は違法とは言えないのでは?
上記の質問に対しては、
「道路交通法に歩道上駐車違反の記載は無いが、左側端駐車違反に当たる」
とする趣旨の解釈は、既に回答済みで、警視庁も同じ解釈を主張しておりますが、
二輪車に照らした場合、この警視庁の解釈には矛盾が生ずるのではないでしょうか?
警視庁の主張は、昭和39年8月13日最高裁の、
「歩道と車道の区別のある道路においては、車両は道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないように駐車すべきことを命じているものと解すべき」
とする判決内容を根拠としています。
しかし、同判決文は、「これと同趣旨に出た原審の判断は正当である」とする、あくまで原審の判断を追認した内容であり、
原審である昭和38年3月4日の広島高裁では、
「元来道路交通法における駐停車の概念は、車両の通行を前提とするものであって、通行しえない場所における駐停車という事は予想されないことであり、法が第17条1項本文において車両の歩道上通行を禁止している以上、歩道上の駐停車をも否定する趣旨でと解すべきことは、むしろ当然である。このことは、法が車両の道路上の駐停車について場所、方法に関し各種の規制を設けているのに反し、歩道上の駐停車についてなんらの規制を設けていないことからみても容易に理解しうる。」
としています。
つまり、同判決では、“車両が歩道上通行を禁止されていることが、駐車が違法である根拠である” との趣旨を明記していおり、よって、
“押して歩く際は歩道の通行が許される二輪車”については、明確な違法性が問えるかについては、 大きな疑問が残ると考えられます。
同裁判は、そもそも四輪車における歩道上駐車の正当性を問うものであり、 二輪車に照らして当てはめた場合には、不明な点が生ずることとなるため、
これをもって二輪車の歩道上駐車は違法とする警視庁の主張には、無理があると考えられます。
例えば、車両全てにおいて歩道上駐車が違法であるならば、
当然、同じ車両であり同じ二輪車である自転車も歩道上駐車禁止とななります。
それならば、東京都の各区が行った「歩道上の放置(=24時間以上の駐車)自転車の禁止条例」の立法自体が根拠を失います。
警視庁の主張が正しいならば、その取締りは、区の職員が行う行為ではなく、警視庁管轄で取り締まるべき事項であるし、
既に上位の法律で駐車違反であるものを、区条例で24時間の猶予を与えることに、警視庁は異議を唱えるべきです。
また、同区条例立法の際は、警視庁と合同で法解釈を検討しているものですから、
警視庁はその際に、歩道上駐車違反の範囲となる車両とは、一部の車両、少なくとも自転車は除くとの解釈を既に示していることになります。
区条例立法の際の警視庁の解釈として、自転車が良くて自動二輪車がダメと区分けしていることになります。
しかし、この区分けには、法律上の根拠がありません。
また、区分けした時点で、全ての車両が歩道上駐車禁止とする主張と矛盾します。
押して歩道を歩く際は、どちらも道交法上は歩行者であり、歩道を含む道路上においては、どちらも車両です。
また更に言うならば、
非常に高い確率で、派出所前に巡査等の使用する自転車が歩道上駐車されていますが、
これは、どのように法的解釈すれば良いでしょうか。
警視庁の主張通り、車両全てが歩道上駐停車違反であるならば、これらは全て違法となります。
なぜなら、警視庁の車両であっても、緊急時以外は道交法の適用範囲となるからです。
使用者は、巡査等の警察官となりますが、所有者は警視庁です。
駐車場所が確保されていて、歩道上に駐車しているならば、警察官各自の問題ですが、
多くの派出所は、歩道上駐車を前提に、駐車場所は確保されていません。
私はあくまで、“二輪車の歩道上駐車は合法”との立場で、
それゆえ、“区条例をもって取り締まる必要がある”との考えですので、
警察官の二輪車の歩道上駐車に何ら違法性は無いと考えますが、
警視庁の解釈が、車両全て歩道上駐車禁止とする以上、
警視庁の主張は明らかに矛盾していると言えます。
以上の根拠から、二輪車の歩道上駐車は、明確には違法とはいえないと考えますが、如何でしょうか?
尚、都内幹線道路の車道に二輪車を駐車することは、視認性の問題から、四輪車に比べ、追突や接触の危険が極めて高く、
危険回避の観点からも、歩道上に駐車することは、ひとつの合理性があると私は考えています。
その点においては、道路交通法立法当初よりも、むしろ現代の方が歩道駐車の必要性が増しているとも考えます。
これらの点も踏まえての、ご意見も頂ければうれしいです。