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オン抵抗と耐圧
パワーデバイスのオン抵抗について分からないことがあるので、質問させて頂きます。 1) オン抵抗は絶縁破壊電界の3乗に反比例するようですが、理由がよくわかりません。 絶縁破壊電界が高いとドリフト層厚を厚く、ドーピング濃度を高くすることができるとあったのですが、私の理解では絶縁破壊電界が大きいこととこの二つが繋がらず、よく分かりません。 2) オン抵抗とデバイスの耐圧はトレードオフの関係にあるようですが、どうしてそうなるのか理解できません。 何か参考になるURL、書物でもアドバイス頂けると大変助かります。 何かご存知の方、どうぞ宜しくお願いしますm(__)m
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(1)オン抵抗(R)は絶縁破壊電界(Ec)の3乗に反比例する関係 半導体物理で一番基本的な式は、電圧(V)の距離(x)の二回微分が不純物イオン密度(Nd)に比例するというポアソン方程式(a式)です。qは電荷素量、εは半導体中の誘電率です。 ∇V= -q・Nd/(2ε) (a) この式を積分した(b式)から、不純物イオン密度(Nd)が一定ならば電界強度(E)が距離(x)に比例する関係が分かります。 E= -(q・Nd/2ε) x (b) したがって、電界が存在している幅をLとし、最大電界強度を(Emax)とすると、その面積すなわち電圧(V)は(c式)となります。 V= Emax・L/2 (c) 電圧(V)が半導体デバイスの耐圧(Vbd)になった時の最大電界強度(Emax)が、絶縁破壊電界(Ec)にあたります。すなわち、 Vbd= Ec・L/2 (c) さて、オン抵抗(R)は、半導体の距離(L)に比例し、不純物濃度(?Nd)に反比例すると考えられます(c式)。 R ∝ L/Nd (d) この(d式)に、 (b式)から得られるNd∝E/x= Emax/L= Ec/Lと、 (c式)からL∝1/Ecを代入すると、 R ∝ L/Nd ∝ (1/Ec)(L/Ec) ∝ 1/(Ec)^3 (d') すなわち、耐圧を保持する最小厚みのデバイスの、 オン抵抗(R)は絶縁破壊電界(Ec)の3乗に反比例する。 さて、(d式)によれば、「ドリフト層厚を厚く、ドーピング濃度を高くしても」同じオン抵抗(R)となります。 しかしながら、ドーピング濃度(Nd)が増えると(b式)から電界強度(E)の傾きが増えるので、同じ耐圧(V)を保持するためにはドリフト層厚(すなわちL)は薄くなります。このため、「 ドリフト層厚を厚く、ドーピング濃度を高くすることができる」ことは、「絶縁破壊電界が高くなる」場合のみ可能となります。このことは、(b式)からEc∝Nd・Lが導かれることからも分かります。 「絶縁破壊電界」は、主として半導体材料で決まり、副次的にドーピング濃度(Nd)と共に大きくなる傾向があります。 (2) オン抵抗とデバイスの耐圧はトレードオフの関係 (b式)から得られるNd∝L/Ecと、 (c式)から得られるL=2Vbd/Ecを(d式)に代入すると、次の(e式)となります。 R ∝ L/Nd ∝ (L)(L/Ec) ∝ L^2/Ec = L^3/(2Vbd) = (2Vbd/Ec)^3/(2Vbd) ∝ (Vbd)^2/(Ec)^3 (e) 実際に耐圧(Vbd)を高くするためには、ドーピング濃度(Nd)を低くする必要があります。Ndが低くなると、先に述べたように絶縁破壊電界(Ec)が減少します。このため、(e式)で表されるオン抵抗(R)はVbdの2乗よりも強い依存性が予想できます。 このようにして「MOSFETのオン電圧(R)は耐圧(Vbd)の2.5乗に比例する」と言われている関係が表れます。 (注意) ここまでの計算では、半導体デバイスの幅は電界が存在する領域(空乏層)の幅と等しいとしてます。 MOSFETのオン電圧は通電領域の抵抗の和となるので、このような設計が最適です。 しかしながら、バイポーラトランジスタやサイリスタ、IGBTでは、通電領域の抵抗が動作条件によって桁違いに変化しますので、抵抗の計算だけではオン電圧が求められません。 大雑把に考えると、 耐圧を出すためにはデバイスを長くする必要があります。 (この関係は絶縁体なら自明でしょう。半導体でも基本的に同じです) デバイスが長くなるとオン抵抗は増えます。 したがって、「オン抵抗とデバイスの耐圧はトレードオフの傾向」があります。
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- d9win
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(1)の説明は、確かに縦形MOSFETの縦方向にあたります。 (2)も、同じ対象について説明したものです。もっともオン抵抗としてはドリフト領域の抵抗だけを考えて、チャネル領域の抵抗とかは無視してます(その方が一般性があると思いました)。 (2)の関係をストレートに当てはめるには、おっしゃるように、横形MOSFETの方が縦形MOSFETより適当ですね。 しかしながら、このオン抵抗と耐圧のトレードオフ関係(傾向)は、MOSFETに限らず全ての半導体素子に当てはまります。(2)で使った計算は(1)の説明に便乗したものです。「大雑把に考えると...」以降の説明の方が、このトレードオフ関係(傾向)の説明としてふさわしいと思います。
お礼
再度説明いただきありがとうございますm(__)m 分かり易く説明していただいたので、ようやくこの疑問をすっきり理解できたと思います。 このような場で一つ疑問を解消できたこと、非常に嬉しく思います。 丁寧に説明いただき本当に有難うございました。
お礼
お忙しいことと思いますが大変ご丁寧な回答、本当に有難うございます。 そこで度々申し訳ないのですが、一つだけ確認いただきたいことがあります。 ご回答中の(1)は、ゲート直下の縦方向の電界分布を議論していて、(2)では横方向の電界分布を扱っていると解釈しているのですが、間違いないでしょうか?