- ベストアンサー
SUS440C焼き入れ後の寸法収縮と変色
- SUS440Cの真空焼き入れ後の寸法収縮と変色について、状況と問題点をまとめています。
- 収縮や変色の原因として、湿気や炉内湿度・酸素残存などが考えられます。
- 寸法収縮を最小限に抑える方法や、変色を防ぐ方法についての知識が求められています。
- みんなの回答 (4)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
- ベストアンサー
変色は問題にしたこと無いので不明です。 焼入れ焼戻しによる寸法変化は、無理からぬ数値ですね。 0.15/90=0.16% 下記のデータ2.1.2によると、材料の直径方向(D)が少なくてその値がこれと略一致していますが、長さ方向(L)では約4倍ほどになってます。 焼戻し条件を変更すれば改善方向はあるでしょうが、今得られた2条件のどちらかで固定すれば話が簡単だと思います。 それにしても不均一な歪みを考えたら、0.15は少し怖いです。 熱処理屋さんへの硬さ指定は±1.5あれば充分で、それ以上もらっても嬉しくないはずです。6/10のは高温焼戻しで、5/27とは相当違った結果になるのは判ります。 なぜ焼入れで寸法変化が起きるかは、拙い説明より不二越の講座(Vol4~9)を一読された方が宜しいかと。。。 >6月10日依頼のものは濃い赤茶色に変色 >5月27日依頼のものは薄青い鉄色 これは焼戻し温度が違うので当然だと思います。成分のクロムの浸みだしなのか酸化なのか、原理は知りませんが普通にそうなります。
その他の回答 (3)
変色に関しては、書かれた中に「空冷」というのがありますので、それかと思います. 他のステンレス鋼は知りませんが、私が見た中でも440Cは 切削加工時の冷却不足から切り屑が変色するというのがよくあります. チップコンベアから、きれいな紫色の切粉が出てきて、機械を確認すると、 オイルパンのクーラントが明らかに量が少なかったり、切り屑で戻りが悪くなっていたり、 クーラントノズルが明後日の方向を向いていたり、という状況だったりします. 切削時でさえ変色するくらいですから、熱処理で「空冷」という項目があれば、 黒皮こそ生じなくても、空気中で熱に晒される事で変色くらいは起こると思います. 寸法変化に関しては、先の回答者さんの提示して下さった不二越の資料 (http://www.nachi-fujikoshi.co.jp/tec/pdf/06d1.pdf “熱処理にまつわる問題点・トラブルとその防止策”) を読んだ感じでは、場所毎の冷却速度の違いが影響した、という気がします. どの方向に貫通穴があいているのか知りませんが、 どの方向であれ幅が150か180かしかないところにφ90という穴が明いている訳で 全体からすると局所的に肉が非常に薄くなっている訳ですよね. 肉の薄い部分は冷えるのも早い訳でして. 全体的に熱膨張している中で、そこから先に収縮して行きますので、それが影響しているのではないかと.
お礼
場所毎の冷却速度の違い、形状肉薄の違いから収縮も違ってきますね。 加工による熱も考慮せねばなりませんね。 とても参考になり、又忘れかけていた事を改めて痛感してます。 有難うございました。
熱処理により寸法は変化します。 SUS440Cの場合、熱処理前の組織は「フェライト+炭化物」ですが、熱処理 (焼入れ焼戻し)することにより「焼戻しマルテンサイト+炭化物(ただ し熱処理前よりも少量)+残留オーステナイト」になります。マルテンサ イトはフェライトと同じ結晶構造ですが、炭素が強制固溶されているため 結晶の大きさはフェライトよりも大きくなります。一方オーステナイトは フェライトよりも体積の小さい構造ですが、その量はおおくても20%程 度ですので、全体としては膨張します。この現象は結晶構造の変化による ものなので、いわゆる熱処理歪みとは違いますのでご注意下さい。 しかし今回は膨張ではなく収縮したとのこと。回答(1)にある「SUS440C寸 法変化」で注目しなくてはならないのが、L方向とD方向で寸法変化が大 きく異なることです。SUS440CやSKD11のような焼入れ加熱時にも多量の炭 化物が残っている鋼種では、冷却時のマルテンサイト変態による膨張に異 方性が出ます。素材の長手方向は膨張し易く、その直角方向は炭化物に邪 魔をされて膨張しにくくなります。時には収縮することもあります。 今回の収縮した方向は素材の長手方向に対して、直角方向ではあませんか。 収縮した方向と直角方向は膨張していませんか。 今後も同様の製品を作られるようならば、素材に対する材料取りの方向を 一定にし、寸法変化挙動に合わせて仕上げ代を設定されることをお薦めし ます。 収縮については、結晶構造の変化や寸法変化の異方性だけではなく、回答 (4)さんが指摘されているように、冷却時の製品内の冷却時の温度分布を 考えないといけないようです。 通常は、表層部が先に冷えてマルテンサイト変態(膨張)した後、内部が 遅れて膨張するため、直方体ならば太鼓形に変形するはずです。穴の部分 が先に変態したとしても、その後内部が遅れて変態して、穴周辺は周囲よ りも膨張するはずです。 しかし今回の穴周辺が収縮しているとのこと。これから推定されるのは、 マルテンサイト変態時期のズレではなく、それ以前の(つまり変態温度以上 の冷却過程での)オーステナイト状態での熱収縮の関与です。表層部は先に 収縮し、内部はまだ温度が高く表層部よりも強度(もちろん高温状態での) が低いため、表層が縮むように変形します。穴周辺も速く冷却されるため、 この現象により穴周囲がより収縮します。 これを防止するためには、変態温度(SUS440Cでは170℃程度)以前の冷却速度 を小さくすることが必要になります。 真空焼入れとのことですが、冷却は窒素ガス冷却と油冷の二つの可能性があ ります。ガス冷ならばガスの圧力を下げることで可能です。油冷の場合の対 策は少し難しくなります。油温を上げるという手がありますが、多分ダメと 言われるでしょう。次の手として品物が500~600℃付近で一度油槽から引き 上げてもらい、10分ほど経ってから再度油槽に戻す手があります。但しこれ も油の引火の可能性がありダメと言われる可能性があります。 しかしどうしても対策が必要ということならば、変形の状態を熱処理屋さん によく説明し、対策を検討してもらうしかないでしょう。
お礼
熱処理後の寸法変化、簡単に考えるものではないという事が分かりました。 今回収縮した材料は直角方向、長手方向どちらも貫通穴周辺が0.15mm収縮しました。その他の場所は約0.03~0.05mm収縮。 貫通穴周辺だけが大きく収縮する原理が解らずです。フライスで穴加工した熱による歪みが熱処理で収縮??それとも材料自体の炭化物含有量がSUS440Cの量ではない?? 真の原因はなにか、、、 とても理解しました。 熱処理屋さんに「梅雨の時期だから変色するのだろう」なんて言わせないように理屈を理解した上で、処理条件等の対策検討を双方で実施します。
着色については酸化(酸化物)と錆び(水酸化物)の両方の可能性があり ます。 酸化物はそれ自身はほぼ灰色ですので、厚く生成すると酸化スケールとし て認識されます。しかし薄いと光を通し、干渉現象が起きて、様々な色に 見え、いわゆるテンパーカラーとなります。酸化膜が厚くなるにつれて、 その色は概ね以下のように変化します。 黄色→褐色→紫色→濃青色→淡青色→青灰色→灰色(光を通していない) 水酸化物はポーラスなことが多く、干渉は起こらず、生成条件により、 黒錆や赤錆となります。 今回の着色は焼入れか焼戻し工程のどこかで酸化、錆び発生が起きたもの と推定されます。「真空焼き入れ」とのことですが、焼入れ時の雰囲気は 真空であっても、その冷却の時、および焼戻し処理の時に着色した可能性 が高く、今後の再発を防止したい場合は、焼入れと焼戻しそれぞれについ て使用した炉、加熱雰囲気、冷却条件を確認されることをお薦めします。 色と熱処理屋さんの言い分からは、180℃戻しでは大気炉の使用による水酸 化物(赤錆び)の発生、515-500℃戻しでは真空焼戻炉の使用時の炉内窒素ガ スの不純物酸素による酸化物生成の可能性が高いものと思われます。 なお、SUS440Cの焼戻温度はJISでは100-180℃と規定されており、515-500℃ 戻しでは、炭化物の析出による耐食性低下と、焼戻脆性による靭性低下が懸 念されますので、今後は硬さだけではなく「低温焼戻し」を指定されること をお薦めします。 SUSなのに錆びるのかと言われそうですが、SUS440CはSUSの中では最も耐食 性が低い鋼種ですので、錆びることもありえます。 515-500℃戻しは冷間ダイス鋼の熱処理パターンであり、熱処理屋さんが 冷間ダイス鋼と同装して処理した可能性があります。
お礼
SUS440Cで腐食した経験があります。 何故なのと社内で話題になりましたが、焼き戻しの条件でも腐食の要因になること、、、知らぬ事は恐ろしや。 解りやすく説明いただき、とても理解しました。
お礼
早速、不二越の技術講座で勉強します。 とても参考になります。