それがそうさせてくれなかったのが現実なんですよ。当時の中国は一応名目上は蒋介石の中華民国が公式な政府となっていましたが、この蒋介石の中華民国はどうしようもなく腐敗していて、国家の体をなしていなかったのです。
例えば、満州鉄道は日本の管理下になることを中華民国も了承していたのに、満州鉄道に沿って中国人が勝手に線路を引いて、満州鉄道よりずっと安い値段で人を乗せていたのです。すっごいわかりやすい営業妨害ですよね・笑。んで抗議すると「分かった分かった。ちゃんと言っておく」っていうのにちっとも改善されないんです。各地方にはそれぞれヤクザの親分みたいなのがいて、彼らが各地を私的に支配して、勝手に税を徴収して、中には銀行業を始めて国債を発行するところも出てくる始末だったのです。
そういう中で、青島の租界の外国人を馬賊と呼ばれるゲリラが襲って略奪するという事件が起きたのです。中国の警察機構は全く機能していなくて、日本人はもちろん欧米人の多くも殺されたり、略奪されたのです。だから在留邦人を保護するために日本軍が進駐したのです。女性は強姦された上に股間に杭を打たれて殺されていたっていうのですから、そりゃあ日本国民だって「中国人許すまじ!」と激怒するのは当たり前ですよね。今もし中国を訪れた日本人観光客が同じ目に遭ったらと考えるとね。
そういう中で、「一撃膺懲論」というのが高まったのです。中国人を一発殴りつけて、日本人を舐めるなと教えないといかん、という世論が高まりました。
え?私は昭和初期の話をしていますよ。現代の話なんかしていません。
そういう高まりを受けて日本軍が治安維持のために出動するのですが、何分中国はとても広い。追いかけても逃げちゃうのです。それで追いかけるのを諦めると、「やーい、やーい。お尻ぺんぺん」と挑発してくる。もうね、小学生とケンカしてるようなもんです。
中華民国(蒋介石)がなにをしたかったのかは、よく分かりません。それぞれの地域にいた親分たちは何をしたかったのかというとそれは単純に金儲けです。彼らは後に第二次大戦になったときは、アメリカ軍から供与された武器を横流ししてたほどですからね。どこに横流ししたかって?回りまわって共産党軍に行ったらしいです。つまり敵に武器を横流ししてたってこと。いやはや、中国人の金儲けに対する情熱は日本人の理解の斜め上はるか上空です。あまりに武器の横流しがひどいから、アメリカから派遣されていた将軍はルーズベルト大統領に「蒋介石なんかとは手を切ってください」と進言する始末です。
また日本には、本土に手をだなければならないのっぴきならない事情がありました。
世界恐慌とソ連の台頭です。第一次世界大戦によって、戦争はより多くの鋼鉄を必要とする時代となりましたが、繊維業が中心の軽工業国だった日本は重工業が未熟でした。
その一方で、ソ連は五カ年計画でいち早く世界恐慌から脱出して一挙に重工業国として台頭してきたのです。戦車とか大砲をバンバン作り始めたのです。当時の日本の仮想敵国はソ連でしたから、陸軍は相当焦りました。おまけにソ連軍は数も日々増強され、質でも数でも勝てなくなってきたのです。
この迫りくるソ連の脅威と、世界恐慌からの脱出を同時に叶えるのが「軍事主導の重工業化」です。当時の日本には自動車や農業用トラクターなどの需要がありませんでしたので、トラックを作れといっても売れないのでメーカーも作れません。そこで、陸軍と海軍が生産された鉄鋼を利用することで日本を軽工業の国から重工業の国にしようとしたのです。戦車や軍艦を作ることでね。実際にそれで日本は鉄鋼生産量を10倍くらいに増やしたのです。
で、それが中国とどう関わってくるかというと、その鋼鉄の原料とする鉄鉱石の輸入元が中国の大冶鉄鉱だったのです。場所としては揚子江の近くになります。だから、揚子江から船で日本まで運べるから便利だったのです。
そして国運をかけて鉄鋼生産量を伸ばしたい日本にとっては、大冶鉄鉱からのルートが安全であることは必須条件だったのです。だから揚子江沿岸地域の治安は安定してもらわないと日本の国運にも関わったんですよ。
この鉄鉱山のことを書くと「でも朝鮮半島で鉄が採れなかったの?」と思うのですが、なんでも日本と朝鮮半島の鉱石っていうのは鉄に限らず火山地帯のために硫黄分が多くてはっきりいうと質が悪いらしいんです。だから、質のいい鉄鋼を作るには、質のいい鉄鉱石が必要だったのです。
その中国のほぼ真ん中の鉄鉱石供給ルートの治安が不安定だったので、日本軍は治安維持のために出兵せざるを得なかったというのがあるのです。
だからもし日本が中国に派兵しなかったら、鉄鉱石の輸入が安定しないため鉄鋼の生産が伸びず、そのため経済が回復しないため国家財政も軍備も悪化したままの状態で対ソ関係が悪くなっていく(満州を巡って日ソ戦争になる危険が高まる)という、これはこれで悪夢の展開になったかなと思います。
お礼
お返事遅れ申し訳ございません。ご意見ありがとうございます。 いただいたご回答を参考に、また質問させていただくかと思いますが、その際はよろしくお願い致します。(笑)