- ベストアンサー
青色申告と不動産管理会社、どちらが良い?
- 相続により得た1億5千万円の不動産の家賃収入をどの方法で申告するべきか迷っています。
- 私と弟は共有名義のまま青色申告をするか、不動産管理会社を設立するか悩んでいます。
- 私たちの収入や会社の業績の状況を考慮して、どちらがより効果的か教えてください。
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
■管理会社の形態について 不動産管理会社の方式には「管理委託方式」と「一括転貸方式」があります。 1.『管理委託方式』 個人と不動産管理会社が管理委託契約を締結して不動産の管理を代行する方式 ・管理料・・・賃料の8%程度が上限 ・メリット・・・契約変更不要、賃料振替口座の変更不要、導入が簡単 ・デメリット・・・・管理料が高く設定できない、管理業務の内容と管理料の妥当性が問題になりやすい 2.『一括転貸方式』 個人の賃貸物件を管理会社が一括して借上げ、第三者に賃貸する方式 ・管理料・・・賃料の15%程度(家賃保証をする場合) が上限 ・メリット・・・管理料が高く設定できる ・デメリット・・・契約変更が必要、賃料振替口座の変更が必要、移行時の手続きが煩雑、家賃保証の場合は空室リスクあり ■不動産管理会社の効果について ご存知かとは思いますが、個人の税金(所得税及び住民税)は、累進課税で所得金額が多くなるにつれて税率が高くなります。現行税制においては、課税所得金額が1,800万円超の部分については、所得税と住民税を合わせて最高50%の税負担となります。ご兄弟の年収2500万から3000万に更に不動産所得をプラスすると所得控除の額にもよりますが、下記の通り高い税率が課税されています。 課税所得金額 900万円超~1800万以内 43% (30%+13%) 課税所得金額 1800万円超の部分に対して 50% (37%+13%) 不動産管理会社を利用すると所得の分散が可能になるわけですが、ご本人が不動産会社の役員報酬を取得しても既に税率が高く意味がありませんので、ご兄弟の所得(高税率)を家族(妻や子)に給料(低税率)という形で家族へ資金を分散・移動させることが可能になります。 家族が給与所得からは給与所得控除を引くことができ更に効果があるわけです。 ただ、この場合、給与の支払を受ける妻や子は不動産管理業務に従事していることが必要です。 簡単な例で考えると 不動産管理会社を設立して管理会社に家賃収入の10%の年間150万円の管理手数料を支払います。 管理会社の役員である妻と子に管理手数料収入150万円から、妻が100万円、子が50万円の役員報酬を得ます。 兄弟は150万分の所得圧縮が可能となり、妻と子の役員報酬は103万以下なので給与所得控除と基礎控除により所得税は課税されません。 ただ、不動産管理会社を使った節税では、不動産管理会社が管理手数料として受け取る額は、不動産収入の8%程度(一括借上方式では15%)が上限とされていますし、しかも、兄弟2人で不動産を所有されているのでたいした額の節税は期待できないと思います。 管理料を上げればよいのでは?との疑問もあるでしょうが、取引通念上適切な額でなければ税法上否認される可能性もあり(同族会社の行為計算否認)、だいたい上記の%が目安とされています。 これを解消する方法としては個人の不動産を不動産管理会社に移管する『不動産所有方式』があります。 管理会社が賃貸用不動産を所有し、管理業務を行っていくものなのですが、個人の不動産所得を法人の所得に丸ごと移行できるため節税効果は大きいです。 ただし、基本的に個人の不動産を法人に時価で売却することになり、個人は「不動産譲渡所得税」、法人は「不動産取得税」の負担が必要になりますので、結果として多額の資金流出が発生する可能性があります。従って、将来の効果を良く見極めて判断する必要があります。(無償で移管した場合も法人に時価相当額の受贈益が発生することになります) またそれ以外にも法人が取得する際の「資金調達」をどうするのか等の問題も発生します。 ■具体的な判断について *短期的な節税対策で判断する場合には 『管理委託方式』・『一括転貸方式』の節税額を比較検討シミュレーションする必要があります。 具体的には兄弟の所得税・住民税、配偶者・子供の所得税・住民税、管理会社のランニングコスト、管理会社の法人税・住民税・事業税、社会保険料を具体的な数値をもって判断する必要があります。 また、記帳・申告に関しては管理会社の場合比較的簡単なのですが、それを会計事務所に依頼する場合は顧問料が発生します。 *中長期的な相続対策としては、 兄弟が株主に入りますと株の評価が財産になりますので原則として不動産管理会社の出資者は後継者である子供による株主構成とします。未成年の子供であっても親の同意があれば問題ありません。 また、未成年の子供に出資する資金がない場合には、親からの資金の贈与を行う方法もあります。 これ以外にも兄弟が出資者となって会社を設立し、設立後にその出資持分を子や孫に贈与するという方法も考えられます。 将来的に不動産管理会社に資金を留保して、不動産管理会社に高収益な不動産を売買などの方法により移転を図れば(『不動産所有方式』)より多く給与の支払いが可能となり、相続人への資産の移転・納税資金の準備が可能になります。 また、高収益の建物を移転し、固定資産税以上の地代を個人に支払い借地権を発生させ個人の財産を圧縮させる方法も考えられます。(借地権の認定課税を避けるために税務署に無償返還の届出を出す必要がありますが) ■持株会社について その設立目的によって意味合いが違ってきます。 通常は下記の目的なのですが ・グループ会社の戦略の策定 ・経営責任の明確化 ・子会社の正当な業績評価 ・事業再編、組織改革 ・事業と戦略の分離 資産家の『相続対策』としての目的であれば下記の点に留意する必要があります。 1.設立時の問題点 持株会社兼不動産管理会社を設立し、既存会社の株主から株式を買い取る場合、株式を売却する個人には「譲渡所得税」が発生します。 2.相続・贈与時の問題点 持株会社の類似業種比準価額が純資産価額を下回る場合には,既存会社株式を持株会社に売却するメリットがあります。 持株会社の株式の評価は、会社の資産を評価した合計額のうち株式及び出資の価額の合計額が25%以上(中会社及び小会社の場合50%以上)となる会社である場合は株式保有特定会社に該当し、この場合には原則として純資産方式により評価されます。 持株会社の株式の類似業種比準価額が純資産価額より低くなる場合であっても株式保有特定会社に該当すれば類似業種比準方式を採ることはできなくなるので、相続税対策としての持株会社は株式保有特定会社に該当しないようにすることが肝心です。 対策としては総資産価額に占める株式の割合を下げる、具体的には持株会社において株式以外の資産ことを購入(建物を購入して総資産を増やす等)することが必要になります。 ※最後に一番重要なのはご自身の財産状況と収益状況をよく把握していただく事と短期・中期・長期にわけて対策を考えることです。 不動産管理会社や持株会社による対策はあくまでも数ある節税対策の1つに過ぎませんので顧問税理士に具体的な数値をもって相談されることを強くお勧めします。 また、資産税に関する税制はころころ変わりますし、時の経過による財産状況の変化もありますのでその都度対策を見直す必要があります。 以上、お役に立てれば幸いです!
お礼
申し訳ありません。 何回かお礼を書き込みしたのですが画面に反映されませんでした。大変詳しい解説に感謝します。