「日本酒が醸造酒であること」と、「醸造アルコールが添加されていること」が混同されている感もありますので、整理してみましょう。
日本酒は米を原料として、その米に含まれるデンプンが糖、そしてアルコールへと微生物の働きで変化(発酵)することで作られています。アルコールの度数を高めるための蒸留工程を経ないので、醸造酒と呼ばれています。
一方、醸造アルコールとは米(インディカ米が多い)・芋・トウモロコシなどを原料に工業的に醸造されたアルコールのことです。日本酒にとっては添加物となりますので、日本酒の瓶のラベルを見ると、原料として醸造アルコールとはっきり記載されています。
ですから、日本酒に米を原料とした醸造アルコールを添加したものは、元々の原料がすべて米であっても純米酒とは呼びません。
なぜ醸造アルコールを添加するかというと、主に二つの目的があります。
ひとつは増量のためで、かさを増やすには文字通り水増しするのが手っ取り早いのですが、水だけではアルコール度数が下がるので、醸造アルコールを添加して度数を確保します。
もうひとつは香り成分を抽出するためです。そのままでは取り切れない華やかな香り成分を醸造アルコールを入れて搾り取ってやるのです。大吟醸で醸造アルコールを添加したものが多いのはこれが理由です。
これらの目的を理解すれば、知人の方のおっしゃることが本当かどうか判断できます。
安い値段で醸造アルコールが入った日本酒は、増量目的でアルコール添加しているので、純米酒のほうが美味しいというのは頷けます。醸造アルコールはよく精製されて純度が高いと味も素っ気もないエタノールで旨味ゼロですし、精製度が低いと元の原料(芋、トウモロコシ、インディカ米など)の余計な雑味が出たりしますから。
では、大吟醸はどうかというと、こちらは好みが分かれるでしょう。
大吟醸ならではの華やかな香りを楽しみたい、それが日本酒の醍醐味と感じる人は、醸造アルコールが添加されていても、大吟醸は美味しいと思うでしょう。
一方、日本酒本来の旨味を楽しみたい人は大吟醸ではなく、純米酒を選ぶでしょう。後から添加した醸造アルコールは、酒の中の水分子とアルコール分子の混ざり具合を荒らします。また、日本酒の原料の米に由来するアルコール以外の風味成分(アミノ酸など)が、酒全体を醸造アルコールで埋めてしまう分、含有量が減ってしまいます。そのため、日本酒の持つマイルドな旨味がアルコール添加でなくなってしまうと感じる人は、あえて大吟醸ではなく純米酒を選びます。
結論として、知人の方のおっしゃることは、半分本当で、半分は好みの問題といえます。ちなみに、自分は知人の方のご意見に大賛成で、料理酒は別にして、直接自分で飲む日本酒は純米酒しか買いません。
お礼
日本酒は悪酔いするなあと思っていたのは、増量目的の醸造アルコールが入った安いものを飲んでいたからかもしれません。純米酒、それなりの値段の大吟醸など、試しに飲んでみようと思います