No.13です。補足ではなくお礼をいただきましたが、疑問文で書いてあるということは再回答を求められているのかと推量しましたのでやってまいりました。ただし、後段部分は当初質問と直接関係がなく、かつお尋ねになっていることが具体的ではないのでお答えしません。何とぞご了承ください。
前回回答にあげた数字の典拠を残らず示すのは煩雑にすぎるので、安保法制の賛否に限って紹介します。これ以外のものは、興味がおありでしたらネット等でご自分であたられてみてはいかがでしょう。ちなみに、いずれも「わからない」は省いています。
賛成 反対
朝日新聞 26% 56%
毎日新聞 27% 62%
日経新聞・テレビ東京 25% 57%
読売新聞 38% 51%
産経新聞・FNN 58% 33%
NHK 32% 61%
朝日新聞(7/11~12)
今の国会に提出された安全保障関連法案についてうかがいます。集団的自衛権を使えるようにしたり、自衛隊の海外活動を広げたりする安全保障関連法案に、賛成ですか、反対ですか。
毎日新聞(7/17~18)
政府・与党は、集団的自衛権の行使など、自衛隊の海外での活動を広げる安全保障関連法案を今国会に提出しています。あなたはこの法案に賛成ですか、反対ですか。
日経新聞・テレビ東京(6/26~28)
政府・与党は集団的自衛権の行使容認を盛りこんだ安全保障関連法案を今の国会で成立させる方針です。あなたはこの法案に賛成ですか、反対ですか。
読売新聞(7/24~26)
安全保障関連法案は、日本の平和と安全を確保し、国際社会への貢献を強化するために、自衛隊の活動を拡大するものです。こうした法律の整備に、賛成ですか、反対ですか。
産経新聞・FNN(8/15~16)
あなたは、日本の安全と平和を維持するために、今、国会で審議中の安全保障関連法案の成立は必要だと思いますか、思いませんか。
NHK(7/10~12)
安倍内閣が、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法制の整備を進めていることを評価するか。(※NHKのみ、「大いに評価する」8%と「ある程度評価する」24%、「まったく評価しない」30%と「あまり評価しない」31%を、それぞれ賛成、反対としてまとめました)。
一瞥してわかるのは、産経と読売の他社と比べて際だって異なる結果です。ちなみに、ここに紹介しなかった共同通信などを入れても同じことです。右派に位置づけられる両紙は往々にして自民党寄りの回答が高くなるのですが、それにしてもこれはあまりに露骨すぎると、池上彰にも突っこまれてました。質問文が最初から「正解」を示しているのです。
質問者様は既存のメディアをとても否定的に見ており、世論調査について「まったく僕は評価してません」とのことです。
たしかに固定電話を使ったRDD法の限界とか、報道機関によって回答者の姿勢が変わる問題、質問文の設定によってバイアスがかかったりなど、世論調査には多くの問題があるのはまちがいありません。単なる不注意とか不見識からくるまちがいも多いのですが、中には今回の産経と読売のように、意図的な回答の誘導を疑わせるものもあります。それでも読売がここまであからさまなのはちょっと珍しいですけど。ちなみに産経の場合は通常運転です(笑)。
しかし、これをもって世論調査は「まったく信用しません」とまで断罪するのは、いささか早計にすぎるでしょう。せいぜい「世論調査には限界がある」とわきまえる必要が生まれるくらいです。一社の調査結果を全面的に信じるのはバカげていますが、その反対も行きすぎです。
よくネットの世界では、報道機関による世論調査を批判する意見を目にしますし、中には傾聴に値する意見もありますが、わたしの印象ではその多くが単なる思いこみにすぎません。なによりそれに対抗する情報で持ちだされるのがネットの声だったりすると、どちらが信用できないのかと嘆息してしまいます。
結局、報道機関による世論調査にどれだけの問題があろうと、現状でわたしたちはこれに勝る「国民の意識」を知る術を持っていないのです。
世論調査については『世論の曲解』菅原琢、『世論調査とは何だろうか』岩本裕の二著が文章も論旨も明快で、とても勉強になりました。ネットで言い交わされるほどデタラメではないけど、やっぱり限界があると良くわかります。
「この国のメディアは事実を伝えてますか?」との疑問については、世論調査と同様に、すべてを盲信するのはただの世間知らずですが、すべてを否定するのも単純化のしすぎだと答えます。質問者様の憤りはわからなくもありませんが。
報道の自由度ランキングでは世界の61位にまで後退したとはいえ、いまだわが国には報道の自由があります。怪しいと思ったときには対立する報道と照らし合せることができますし、図書館かネットで探せばなにかしら見つかるものです。関心があるテーマなら、自分で知識を蓄えていけばそれなりに対処できます。質問者様のように、対外的な問題なら海外の報道にあたることもできます。
もしも産経の世論調査だけを信じていたらその人は完全に世の中を見誤ってしまいますが、他社の結果と比べればそう簡単にはだまされなくなります。なにかの陰謀論に頼って報道機関全体を否定するなら話も変わりますが、その人は世の中を知りたいのではないのでしょう。
本サイトでしばしば「科学には誤りがあるから信用に足りない」との回答を見てきました。たしかに科学的知見とはどこまで行っても仮説でしかありませんから、誤りがあるものと覚悟しておく必要があります。しかし、すべての仮説が同等なわけでもありません。たとえばニュートンの万有引力の法則のように日常的な世界では「真理」と見なしてよいものもありますし、ただのオカルトでしかないものもあります。大切なのはその見極めです。
報道もこの点、まったく同じです。たとえば、隣の町で殺人事件が起こったなんてニュースを疑う人はまずいません。わざわざそのニュースの裏などとらなくても、まちがっていればだれかが突っこむはずだと当てにできるからです。今回の安保法制のように意見の分かれる問題だと難しくなりますが、それでも対処する方法はいくらもあります。その過程で、自分なりの見解を構築すればいいだけのことです。
ただし、そうして作った自分の意見に固執しすぎることはまちがいへの近道だと、常にわきまえておきたいものです。と、これは自戒をこめて記します。
ところで気になっているのですが、質問者様の当初の疑問は解消したのでしょうか。反対デモの人たちを揶揄したかっただけなら別ですが、そうでないならひと言なりと教えていただけると幸いです。
お礼
貴重なご意見有り難うございました。