#7です。
座屈現象がわかりにくいと言うか、意外なのは、荷重の載荷方向とは全然無関係な方向に(載荷方向と直交する方向とかに)、突然大変形が起こるからです。
軸圧縮力による長柱の座屈でもそうですよね?。真っ直ぐ押してるだけのはずなのに、突然横方向への変形が生じ、という事は曲げ変形が突然起こり、柱は曲がって折れる。真っ直ぐ押しててるはずなのに・・・。
それは厳密に真っ直ぐ圧縮するなんて、事実上不可能だからです。また真っ直ぐに見えても柱は、制作較差でちょっとは曲がっていて、必ず偏心しています。
座屈を除く通常の応力計算では、そういう微小な較差は全く問題になりませんが、座屈荷重という特殊な荷重の時だけ、その僅かな較差の効果が拡大されて無視できなくなるので、座屈照査を行います。オイラー座屈の座屈方程式の解を、もう一回見てみて下さい。可能な解の中には、「座屈しない」という解が自明に含まれてるはずです。それが「厳密に真っ直ぐ押せた」「厳密に制作較差もなかった」ケースに対応します。しかしそれらは、事実上不可能です。
上記を言いかえると圧縮フランジは常に、面内曲げに対して面外方向へ微小に孕み出す傾向を持ちますが、座屈荷重以外では、それを引き戻そうとする復元力が働きます。しかし座屈荷重という特殊な荷重では、その復元力が働きません。それが座屈方程式の物理的意味です。
働かないので、微小だった孕み出しは拘束されずに曲げ圧縮作用によって大きくなれます。そして大きくなりだしたら終わりです。何故なら大きくなればなるほど、曲げ圧縮作用の効果は大きくなって桁はねじれ続け、開断面はねじれに対しても抵抗できないので最後には、反りねじり作用との連成が起こって、桁は加速度的にねじれて壊れます。
従って横倒れ座屈は、圧縮フランジが軸圧縮で座屈しなくても、きっかけさえあれば起こりうる事です。しかしフランジが、軸圧縮座屈に対して強けれ強いほど、横倒れ座屈にも強いのは明らかだと思います。そして軸圧縮座屈への強さは、「作用する曲げの回転軸に直交する軸に関する、断面2次モーメント」で決まります。
※あ~っ!、メンドクサイっ!・・・(^^)。
上記のポイントは、座屈は要するに、十分な拘束があれば防げるという事です。圧縮フランジの孕み出しに拘束をかけるものは、主に次の3つです。
(1)軸圧縮座屈を抑制する、I型断面の弱軸まわりの断面2次モーメント
(2)軸圧縮座屈を抑制する、I型断面の強軸まわりの断面2次モーメント
(3)軸圧縮座屈を抑制する、部材の固定点間距離
(4)ねじれ作用に対する抵抗力
(1)は、強軸まわりの曲げ作用に伴う孕み出しに拘束をかけるもので、弱軸は「弱」なので横倒れ座屈が起こると想定し、横倒れ座屈照査を行います。
(2)は、弱軸まわりの曲げ作用に伴う孕み出しに拘束をかけるもので、強軸は「強」なので十分な拘束効果があると考え、普通は横倒れ座屈照査を省略します。
(3)は、例えばI型断面が主桁なら横桁間隔です。横桁で主桁は軸圧縮座屈に関して、両端ヒンジ支持されると普通は考えます。有効座屈長が短ければ短いほど軸圧縮座屈しにくいので、横倒れ座屈にも当然強くなり、業界ごとに規定があるはずです。
(4)は、例えばI型開断面でなく□型閉断面なら、同一寸法で□型はI型の10倍以上のねじり剛性を持ちますから、閉断面ではふつう、横倒れ座屈照査を省略できます。
>なぜこれで有効座屈長の話ができるのかがピンとこないのです。
結局、圧縮に伴う横変位(曲げ変位)がどのように拘束されるかで、有効座屈長は決まります。それは支点の拘束度とそこからの距離です。また有効座屈長は、両端ピン支持の有効座屈長Lを基本にしています。
両端固定の場合、支点でモーメント反力があり、中央で最大モーメントが出ますが両者の符号は逆向きで、その中間にモーメント0の場所があるはずです。そうするとモーメント0の場所の間だけで考えれば、両端ピン支持と同じです。なので有効座屈長は、L/2になります。
固定-フリーの場合も、上下ひっくり返して「固定端側で」つなげてみれば、同様に納得できると思います。
お礼
横倒れ座屈に関するご丁寧な解説ありがとうございました。だいぶ理解が進んだ気がします。 ただ、まだいくつか疑問が浮かぶのが、I型断面の弱軸まわりの面外作用で…により座屈を考慮しなくてよい、のところなのですが、この場合も、両側のフランジがハの字に変形して孕みが生じるのではないでしょうか?これをウェブが抑える?あるいはこれは横倒れとは異なる座屈なのでしょうか? あと、よく分からないのが、有効座屈長です。片持ちだと、両端支持や両端固定の変形形状と比較して、梁の長さの2倍だとか4倍だとか意見が見られます。私が感じるに、両端固定の場合はその梁の中央で座屈が生じます(曲げモーメントによる圧縮が最大なので)が、片持ちの場合、基部は拘束されています。なぜこれで有効座屈長の話ができるのかがピンとこないのです。 立て続けに質問すみませんが、ご回答頂けると幸いです。