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今こそわかれめ
辞書の初版に、まちがひはつきものです。 『新明解国語辞典』初版本には、「分かれ目」の例文として 「今こそわかれめ」 が挙げられてゐます。もちろんこれは、「今わかれむ」の末尾が係り結びで已然形「め」になつたものです。 (1)係り結びの誤解の例で、おもしろいものはありますか。 (2)辞書の誤りで笑へる例はありますか。 *** *** *** *** *** [念のため] あおげば尊し あおげば とうとし、 わが師の恩。 教の庭にも、 はや いくとせ。 おもえば いと疾し、 このとし月。 今こそ わかれめ、 いざさらば。 (『日本唱歌集』岩波文庫 21ページ)
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No.2でコメントした者です。 過分なお褒めの言葉をいただきまして、面映いばかりです。 ひとつ確認させてください。 「耳障りな音楽」の話が出たのは、当方のブログの「最新記事」のリストで下記をご覧になったのでしょうか。それとも単なる偶然でしょうか。 1204)【「耳ざわりのいい音楽」を誤用とするのは無理。もしかすると「無理」ではなく「無知」かも】 辞書 http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3056.html ↓ 突然ですが問題です【日本語編112】──耳障り 耳触り 耳ざわりがいい http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2753.html これからリストに加えようとしていたところなので、少し驚きました。 ちなみに、「耳障りな音楽」(否定的)は古くからある言い回しで、近年?出てきたのは「耳触りのいい音楽」(肯定的)です。 こうして辞書に堂々と掲載されると、今度は「もうダメかもリスト」に加えられます。こうして使えないことがどんどん増えていきます(泣)。 【もうダメかもリスト】〈2〉──けっこう厳選(笑) http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2266.html
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- kine-ore
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#4です。 >天下の岩波さんでも、あるのですね。誤植では仕方がありませんけれど。 : 今気付いたのですが、「誤謬」を「誤説」にではなく「説謬」にでした。これこそ誤謬をお詫びします。 この情報源とした高山盛次「赤いランプの終列車 私流・日本語探検」(新風舎)の記載をそのまま使ってしまいました。ここには実際の正誤表の縮小版が載っているのですが、それをルーペで見ると上記の通りでした。 なお、Wiki「誤植」では「刊行当時「自らが率先して誤謬を実践してくれるとは親切な辞書だ」と皮肉られた。」とあって、客観的な出典なしでの書き込みだったので、それを井上ひさしと特定する記載を参考にしたのですが…。あるいはもしかすると井上ひさし自身は承知の上で「誤説」と遣ったのかも知れません。 参考: 「誤植 辞書の誤植」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%A4%E6%A4%8D 「辞書の「誤謬」」 http://d.hatena.ne.jp/hiiragi-june/20081105 なお、小学校高学年以来、当の辞書をお使いの人のQ&Aもありました。 http://q.hatena.ne.jp/1099583231 ところで高山盛次「赤いランプの終列車」(新風舎)を買おうというきっかけは、立ち読みで「くれぐれも自分の深いと錯覚する知識だけを目鉅(めかね)に校正するような愚を避けたい。」という一文でした。 かねがね、どの辞書も「眼鏡に叶う」との記載があることを不審に思っていたからです。 出典の甲陽軍鑑においても「眼がね」として別項を立てた「広辞苑」と、「目がね」として「眼鏡」の項に一緒にした「国語大辞典」(小学館)に分かれています。 どちらの辞書も「かねじゃく」の項では「鉅尺/曲尺」と漢字が使われているのにどういうことかと…。 これも「新明解」では、「めがね [目鉅メガネの意]物の形・性質・よしあしなどを見分ける尺度としての目」と実に明解な説明となっています。 >>>「堀越公方(ほりごえくぼう)」 初見です。これまた、岩波ですね。 : 人名由来の学園名ではあるまいし、伊豆韮山の地名は「ほりごえ」のようです。岩波に限らず辞書の大方は「ほりこし」か「ほりごし」となっています。ただ、百科事典や専門歴史書では「ほりごえ」のようです。室町期当時は口コミ式なので間違いはなかったのでしょうか。ルビのない漢字の怖さですね。音訳の方々のご苦労のほどが忍ばれます。 >>>「樲(さねぶとなつめ)」 こんな訓があるのですか。 : 円満字二郎「漢和辞典に訊け!」(ちくま新書)には「ぼくはこの漢字が「さねぶとなつめ」だと知っているのに、当の「さねぶとなつめ」がなにものなのかは、またく知らないからだ。ムダな知識なのである。」(181頁)と職業病を嘆いています。 >>>「参差(シンシ)」 文字だけ見ると、いかにもよくありさうな言葉ですが、たしかに見ません。 : 本来は「参(シン)」は「まじわる」で「差(シ)」は例の「鉅尺/曲尺(かねじゃく)」同様の「曲差(キョクシャク/まがりがね)」といったモノサシの意味として、1)並び連なる2)長短不揃いの両義があるのですが、唐代には「たぶん」とか「よく似ている」という意味の副詞として用いられたとされています。 これはある意味で試金石なんです。 楊貴妃がまだ女道士たる仙女だった時の描写「雪の膚、花の貌、参差として是なりと」との、いわば白楽天の「長恨歌」の一節を読んだことがあるかどうかという…。 これを読むという「教養」が失せた時代においては、もはや辞書の上だけの形骸となってしまった次第、と。
お礼
2度目の御回答ありがたうございます。 >>それをルーペで見ると上記の通りでした。 わざわざありがたうございました。先回もお時間を割いて、和歌を選んでいただきましたし。辞書そのものの誤植よりも、それにかける熱意のほうが笑へます。(念のため。「嗤ふ」ではなく「笑ふ」です。)私はかういふ人間模様が好きです。 >>出典の甲陽軍鑑においても「眼がね」として別項を立てた「広辞苑」と、 >>「目がね」として「眼鏡」の項に一緒にした「国語大辞典」(小学館)に >>分かれています。 いままで考へたこともなかつたのですが、さすがにkine-oreさんらしい、鋭意な切り口です。とても勉強になります。それにしても、ずいぶん本をお持ちなのですね。 >>白楽天の「長恨歌」の一節を読んだことがあるかどうかという…。 私の無知無学がばれてしまひます。岩波(!)文庫で昔読んだはずなのですけれど。『中国名詩選(下)』117ページには、「ここでは似たり寄ったりの意」なんて書いてありました。美しい女性の話は大歓迎です。 また御教授おねがひいたします。
- kine-ore
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辞書の誤植で有名なのは昭和54年の「岩波国語辞典 第三版」で数十に及ぶ正誤表が添付されたケースがありました。 かんれき(還歴)→還暦 ごびゅう(誤説)→誤謬 こんなん(困離)→困難 らくのう(酩農)→酪農…ナド かの井上ひさしが、誤謬に誤説と入れたのはさすが岩波、実例で用法を示しているとからかった話も伝わっています。 司馬遼太郎「箱根の坂」の文庫の際、「堀越公方(ほりごえくぼう)」とされているルビの十数箇所を、文庫校正者が「ほりごしくぼう」と鉛筆を入れて問題となった時の根拠が「広辞苑」にあったからとの話があります。そのせいか否か、広辞苑も四版からは「正しくは<ほりごえ>」との注記がされるようになったとのことです。 逆に、辞書の中にしかない言葉もけっこうあります。 「樲(さねぶとなつめ)」 もっとも訓の長い語として辞書編纂者の中でのみ有名です。 小さな漢和辞典では載っていないものがありますが、なぜかMS-IMEではこの機種依存文字が変換できます。 「参差(シンシ)」 明治の文豪の作品にて稀に出会うくらいで、実用性はゼロですが、けっこう小さな辞書にも正しく記されているのが驚きです。もちろんMS-IMEでは変換されません。 http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/114293/m0u/ 「涸渇(カクカツ)」 「涸」は呉音「ガク」、漢音「カク」なので本来は「カクカツ」と読むものが慣用音「コ」読みでの「コカツ」となり、それがさらに代用字「枯渇」となってしまったものですが、もはや「カクカツ」を立項した辞書は少なくなり、実社会で「カクカツ」と話す人物に出会ったことがありません。「撒水(サッスイ)」「越権(オッケン)」「翻然(ハンゼン)」なども辞書の中だけでしょうか。
お礼
おはやうございます。昨晩「お礼」を書いたのですが、投稿できてゐなかつたやうです。すみません。 kine-oreさんの回答は、既存の知識に縛られないところが魅力です。先回は、女性回答者がゐたので、そちらをBAにしました。私は、BAは遊びとしてとらへてゐます。 >>「岩波国語辞典 第三版」で数十に及ぶ正誤表が添付されたケースがありました。 天下の岩波さんでも、あるのですね。誤植では仕方がありませんけれど。井上ひさしさんがお亡くなりになつてから、もう4年ですか。 >>「堀越公方(ほりごえくぼう)」 初見です。これまた、岩波ですね。 >>「樲(さねぶとなつめ)」 こんな訓があるのですか。私のパソコンでは変換できませんでした。 >>「参差(シンシ)」 文字だけ見ると、いかにもよくありさうな言葉ですが、たしかに見ません。 >>「涸渇(カクカツ)」 「コカツ」以外に知りませんでした。結局すべて初見でした。貴重な情報、ありがたうございました。今後もよろしくお願ひいたします。
- 1311tobi
- ベストアンサー率49% (84/169)
(2)辞書の誤りで笑へる例はありますか。 「笑へる」か否かは個人の感覚でしょうが。 個人的にWeb辞書の不備を蒐集しています。 【やっぱりWeb辞書は嫌い〈2〉】 http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-2919.html さすがに辞書だけあって、あからさまな間違いはめったにありませんが……。 「真逆」(まぎゃく)、「何気に」「さりげに」などを素早く認めた態度には疑問を感じます。 「笑へる」可能性が高いのは下記あたりでしょうか。 217)突然ですが問題です【日本語編8】──いろいろな書き方 【解答編】足がはやい http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-1278.html 『大辞林』によると、「太郎は足が早い」はOKなんだそうです。鯖じゃあるまいし。 http://kotobank.jp/word/%E8%B6%B3%E3%81%8C%E6%97%A9%E3%81%84?dic=daijirin&oid=DJR_asi_-010-_wo_-_asigahayai_-01 同じく『大辞林』は少し前まで「違和感」の用例で「違和感を感じる」をあげていました。最近「違和感を覚える」にかえました。何があったのでしょう(笑)。「違和感を感じる」は間違いではないと思いますが、あえて辞書の用例にする意味がわかりません。 今度は〔「異和感」と書くのは誤り〕 なんだとか。ムチャです。 1185)【表記の話15──「違和感」「異和感」】 〈2〉辞書 http://1311racco.blog75.fc2.com/blog-entry-3034.html
お礼
こんばんは。 >>個人的にWeb辞書の不備を蒐集しています。 さういふ趣味(?)の方がいらつしやることは、聞いてゐました。お目にかかるのは、初めてです。興味津津です。 文筆のご専門の方なのですね。さつそくリンク先も拝見しました。今後もときどき覗きます。私は、いはゆる「誤用」については、おほらかなほうだと思ふのですが、「耳障りな音楽」はさすがに抵抗があります。 >>「真逆」(まぎゃく)、「何気に」「さりげに」などを >>素早く認めた態度には疑問を感じます。 辞書によつて、採用の早い遅いはありますね。 >>『大辞林』によると、「太郎は足が早い」はOKなんだそうです。 >>鯖じゃあるまいし。 たしかに。でも、『大辞林』よりも、1311tobiさんの巧みな文章が笑へます。 >>『大辞林』は少し前まで「違和感」の用例で >>「違和感を感じる」をあげていました。 私も書くときは、「感」が重複するのが嫌ですので、使ひません。 >>「違和感を感じる」は間違いではないと思いますが、あえて辞書の用例にする意味がわかりません。 おつしやることは、そのとほりと存じます。 >>今度は〔「異和感」と書くのは誤り〕 なんだとか。ムチャです。 どちらもありさうですね。最終的には、使用者の感性の問題でせうから。 辞書の誤りを蒐集した本でもないものか、と思つてゐたのですが、1311tobiさんのサイトで充分楽しめます。これからもよろしくお願ひいたします。
- Piedpiping
- ベストアンサー率74% (513/687)
> 誤解の例で、おもしろいもの > 誤りで笑へる例 たとえ相手が権威ある辞書であったとしても、間違いを笑おうというのはあまりにも下品であります。 もちろん、間違いは間違いとして指摘し、もって他山の石とするのは正当な行為でありますが、すでに訂正された過去の誤りを、わざわざほじくり返してあげつらうのは悪趣味にすぎましょう。 不適切な語釈が多いことでは広辞苑が、面白い語釈では新明解が有名ではあります。 例えば、広辞苑にはかつて、 ・つま‐び・く【爪引く】〖他四〗(1)[...] (2)(「爪弾く」と書く) 弦楽器の弦を爪先で軽く弾いて鳴らす と書いてあった。 金田一春彦はこれに対して、爪の先でギターが弾けるかと文句をつけ、後に「指先で」と訂正された。 今でも広辞苑で「添付」をひくと、 ・てん‐ぷ【添付】(1)書類などに、他のものを添え付けること。「領収書を―する」(以下略) とあるが、「そえつける」って何だよと思い、ひいてみると、なんとそういう語は載っていない。 あるいはまた、 ・きた【北】(1)四方の一。日の出る方に向かって左の方向。[…] ・ひだり【左】(1)(中略)南を向いた時、東にあたる方。 とあるが、何が何だか、こんがらがる。 またある子供向けの辞書で「いま」をひくと「現在」とあった。 言い換えを否定はしないが、難しく言い換えることはないだろう。 しかし、こういうのは私には笑えない。 私自身がやってしまいそうなことだから。 新明解で「岩」をひくと、 ・[根が生えたように動かせない]堅い大きな石。 とあり、さらにわざわざ [地中にある物についても言う] という注記がしてある。 おやっと思って、三省堂国語辞典の「岩」をみると、 ・石よりも大きくて、地面・に あらわれ(から突(ツ)き出)て、動かせない かたいもの。 とあった。 こういうのは少しニヤリとしてしまう。
お礼
こんばんは。御回答ありがたうございます。 >>たとえ相手が権威ある辞書であったとしても、 >>間違いを笑おうというのはあまりにも下品であります。 はい。おつしやるとほりでございます。私は、当サイトで、豚、犬、怠け者、悪魔、などと呼ばれ、下品で悪趣味は承知してをります。 このたびの質問の意図は、古文の習得の基礎として、「唱歌」が有効なのではないか、といふ件です。遊びながら、その点を考へることができれば、と思つて質問しました。 >>「そえつける」って何だよと思い、ひいてみると、 >>なんとそういう語は載っていない。 説明になつてゐないとか、堂堂巡りとかいふのは、よくありますね。 >>[地中にある物についても言う] >>地面・に あらわれ(から突(ツ)き出)て よくお気づきになつたものです。どちらが正解なのですか。 楽しい回答、ありがたうございました。
お礼
ふたたびの御投稿、ありがたうございます。 ブログを拝見しての「お礼」です。あまりにおもしろかつたので、いくつか読んでから、「お礼」を書きました。私は歳のわりには、最近の言ひまはりに対して、肯定的なほうだと思つてゐます。言葉は、自由であるべきなのが原則ですから。 回答番号2の「耳障りな音楽」は、書きまちがひでした。すみません。 「耳触りのいい音楽」のやうに、「音楽」がつくと、ちよつと抵抗があります。 と書くべきところでした。そのうち、私も慣れてくるかもしれません。言葉も人間も、非難するよりも楽しむ方がいいとおもひます。 ブログ、期待してゐます。
補足
本日づけのブログのスカートのお話、楽しく拝見しました。ありがたうございます。