記号の意味は文脈によって決まります.定義に戻ってひとつひとつ確認しましょう.
おそらく問題の集合は代数学(環論)で登場したのでしょう.この場合,その意味するのは(常識的には)次のものです.(どの程度のことを知っているのかよくわからないので少し冗長に書きます.)
まず素数全体からなる集合をPとおきましょう.
R := Π_{p∈P}(Z/pZ)
とおくと,これは集合としては環Z/pZの要素x_pたちの組x = (x_2, x_3, x_5, …)からなる集合
R = { x = (x_p)_{p∈P} | x_p ∈ Z/pZ }
です.さらにこの集合Rの元x = (x_p)_{p∈P}, y = (y_p)_{p∈P}には各要素の和と積を使って
和 x + y := (x_p + y_p)_{p∈P}
積 xy := (x_p y_p)_{p∈P}
が自然に定義され,環になります.要するにRは環の族{Z/pZ | p∈P}の直積環です.
次に
I := +_{p∈P}(Z/pZ)
とおくと,これは集合としてはx_p≠0となるp∈Pが有限個であるような集合Rの部分集合
I = { x = (x_p)_{p∈P} ∈R | ∃p∈P.∀q∈P.(q > p ⇒ x_q = 0) }
です.さらにこれは環Rの部分集合なので和と積が定まっていて,イデアルの条件
(i) ∀x, y ∈ I. x + y ∈ I
(ii) ∀x ∈ I, ∀r ∈ R. xr ∈ I
を満たすので,環Rのイデアルです.
## つまりZ/pZと環Rの部分集合I_p := { (x_q)_{q∈P) | p≠q ⇒ x_q = 0 }を同一視したとき,Iは環Rのイデアルの族{I_p | p∈P}の直和I = +_{p∈P}I_p "=" +_{p∈P}(Z/pZ)になるということ.
さて問題の
R/I = Π_{p∈P}(Z/pZ) / +_{p∈P}(Z/pZ)
は集合としては
x ~ y ⇔ x - y ∈ I
で定まる同値関係に関する同値類全体からなる商集合R/~です.いまx ∈ Rの同値類をx + Iと書くことにすると
和 (x + I) + (y + I) := ((x + y) + I)
積 (x + I)(y + I) := xy + I
が定まりR/Iは環になります.要するにR/Iは環RのイデアルIによる剰余環のことです.
お礼
間違って、補足の欄にお礼を書いてしまいました。 いろいろと教えて頂き、有り難うございました。
補足
いろいろと有り難うございます。 有限多重ゼータ値に関連する事柄で、この環が出てきました。 お教え頂き、有り難うございました。