疑問に思ったことは計算して確かめてみよう。
月の見かけの大きさと言っても、
定規をあてて測るわけにはいきません。
定規を眼からどのぐらい離すかによって変わりますから。
「誰が測っても同じ」ものは「角度」になります。
ということでこの問題を解くには、三角関数を使いましょう。
月の半径を1700kmの球体とします。
現在の月中心までの距離は38万kmとすると、
その1/16の距離は2.375万kmですね。
=38/16
地球から見る現在の月の中心から外縁までの角度は
逆正接(アークタンジェント)で求まりますよね。
エクセルのどこかのセルに
次のように打ち込めば計算してくれます。
=DEGREES(ATAN(1700/380000))
計算結果は 0.256… ≒ 0.26度になります。
地球から見る1/16の距離の月の中心から外縁までの角度も同様に
=DEGREES(ATAN(1700/2.375))
計算結果は 89.919… ≒ 89.92度になります。
1/16の距離に月があると、半径はほぼ直角なのですね。
地球から見る現在の月の位置に、その角度に見える月があるとすると、
その角度の正接と月までの距離の積で見かけの半径が求まりますよね。
=TAN(RADIANS(89.92))*38
計算結果は 27215.477… ≒ 27215.48km
それが現在の見かけの半径の何倍なのかというと
=27215.48/1700
計算結果は 16.009… ≒ 16.01倍
「見かけの大きさ」といえば半径ではなく直径ですが、
直径は半径を単純に2倍しただけなのでこの比率は変わりません。
このように計算すると、月が現在の1/16の距離にある場合、
見かけの大きさは約16倍ということになります。
もっともこれは距離の話。
面積の場合だとまた別の話、距離の2乗になりますから。
現在の月の位置での見かけの面積は
=1700*1700*PI()
計算結果は 9079202.769… ≒ 9079202.77km2
現在の1/16の月の位置での見かけの面積は
=27215.48*27215.48*PI()
計算結果は 2326922235… ≒ 2326922235km2
それは現在の面積の何倍なのかというと
=2326922235/9079202.77
計算結果は 256.291… ≒ 256.29倍
ということで面積の見かけの大きさは、距離の見かけの大きさの2乗
……途中四捨五入して誤差があるので厳密には16の2乗の256にはなりませんでしたが。
要するに、「月が現在の1/16の距離にある」という話をしていて
「見かけの大きさが16倍」だと言う人は距離の話をしていて
「見かけの大きさが256倍」だと言う人は面積の話をしていたというわけですね。
筆者が何の話をしているつもりなのか、
明確にし切れていない点が今回の問題の争点のようですね。
お礼
なるほど。。。 文系頭にも理解できる説明,ありがとうございます。 小久保さんは「そのころの月は,現代に比べてあまりにも壮大な眺めだっただろう」と言っています。 その論調でいくと,「面積」に注目して「200倍以上」と述べている小久保さんの思いがわかります。 本当にありがとうございました!