- ベストアンサー
源氏物語翻訳の問題点とその描写内容について
- 源氏物語の英訳について、読者が理解しづらい表現や誤訳が存在することがあります。この質問では、A.Waleyの『TALE OF GENJI』(帚木 The Broom-Tree)について、疑問点や間違いを指摘しています。
- A.Waleyの翻訳では、画家たちが墨絵に取り組んでおり、驚きと感動を与えることを目指していることが述べられています。また、彼らは蓬莱山や海の怪獣、恐ろしい動物、想像上の鬼などを描いています。美しさよりも驚きを追求している様子が伺えます。
- 彼らの絵には実在するものはないが、ありそうなものが描かれており、読者に現実感を与えることを意図していることが述べられています。これらの描写は、読者が非現実の世界に没入しながらも、何か現実的なものを感じることを目指していると言えます。
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
今晩は。今日は梅が満開で、ひとひらだけ散るのを見ました。 いつも大変ていねいなお礼をありがとうございます。またいい本があれば是非ご紹介ください。 1)『 ”In the Painters' Workshop too there are many excellent artists chosen for their proficiency in ink drawing; and indeed they are all so clever it is hard to set one above the other. But all of them are at work on subjects intended to impress and surprise. 』 >画家たちの作業場の中にも、墨絵について彼らの熟達に対して選ばれる、たくさんの優れた芸術家たちがいます。そして実際に彼らはすべてとても才気あるので、上下に置くのは困難です。しかし題目に取り組んでいる彼らのすべては、印象づけ、驚ろかそうと目指します。・・・? ●最後の文の構造を取り違えておられますが、後は完璧です。 >chosen for・・・「for」は(才能・好み・感情の対象)の「・・・に対して」の意味ですか? ●そう考えてもいいでしょうが、「理由」(優れている【ゆえに】選ばれた)と取るのが普通だと思います。 >ink drawing・・・・墨絵? ●その通りです。 >all of them are at work on subjects intended to impress and surprise.・・・・・ ここは「all of them (who)are at work on subjects が主語ですか? ●all of themが主語、are at workが述語、intended to impress and surpriseは、subjects に掛かります。be at work (働いている)というのがよく使われるイディオムです。そして、work on というのも「~に取り組む、~に従事する」という意味の、よく使われるイディオムです。訳しますと、「しかし、彼らのすべては、(観る者に)感銘を与え驚かせるべく意図された画題に取り組みます」となります。 >But all of them~・・・ここの「But」は「しかし」ですか? (文頭で大文字から始まるButで「only」の意味で訳すことはあるのでしょうか?) 「only」の意味だと「題目に取り組んでいる彼らのすべては、ただ印象づけ、驚ろかそうと目指すだけです」という訳になるのでしょうか? ●「But」は「しかし」です。only の意味の but が文頭に来る例は、まずないと思います。He is but a child.(彼は子供にすぎない)のように、but の後には、当然たいしたことのないものが来ます。all of them のような言葉とは結びつきません。 >at work on subjects ・・・・「at」は(活動)に従事している意味ですか? ●その通りです。 2」『 One paints the Mountain of Horai; another a raging sea-monster riding a storm; another, ferocious animals from the Land beyond the sea, or faces of imaginary demons. Letting their fancy run wildly riot they have no thought of beauty, but only of how best they may astonish the beholder's eye. 』 >一人は蓬莱山を描きます。もう一人は、嵐に乗っている荒れ狂う海の怪獣、もう一人は、中国からの恐ろしい動物たち、もしくは想像上の鬼の外観(を描きま す)。彼らの空想を激しく自由奔放に振舞わせながら、彼らは美しさの考えを持たず、ただどうやったら一番彼らは眺める者の目を驚かすことができるかについての考えを持つばかりです。・・・・・? ●完璧です。 >the Mountain of Horai・・・・蓬莱山というのは仙人が住む仙境のこと、という解釈でいいのでしょうか? ●その通りです。 >demons・・・辞書に「鬼」という訳がありましたが、逆に「鬼」を表す単語は「demon」が一番近いのでしょうか? ●研究社の『新和英大辞典』には、「鬼」の項目に、ogre, demon, fiend と出ています。それぞれ Google の画像で検索しますと、典型的なイメージがつかめるかと思います。日本の「鬼」とぴったり重なるものはないですね。 >Letting their fancy~・・・・分詞構文の付帯状況ですか? ●分詞構文ですが、単純接続でいいと思います。They let their fancy run wildly riot and have no thought of beauty, but only of how best they may astonish the beholder's eye. という感じです。 >how best・・・・どうやったら一番? ●その通りです。 >they may astonish the beholder's eye.・・・・「may」は妥当性・可能性を表す「~できよう」の意味ですか? ●may の難しい用法ですが、その通りです。 3」『 And though nothing in their pictures is real, all is probable. 』 >そして彼らの絵の中には実在するものは何もないけれども、すべてはありそうなものです。・・・・・? ●完璧です。 >実在するものはないけれど、ありそうなもの・・・・2」で言っている海の怪獣や恐ろしい動物たちなどはありそうなもの、と言っているのですか?? ● 今回のところの原文 また絵所に上手多かれど、墨がきに選ばれて、次々にさらに劣りまさるけぢめ、ふとしも見え分かれず。かかれど、人の見及ばぬ蓬莱の山、荒海の怒れる魚の 姿、唐国のはげしき獣の形、目に見えぬ鬼の顔などの、おどろおどろしく作りたる物は、心にまかせてひときは目驚かして、実には似ざらめど、さてありぬべし。 の、「実には似ざらめど、さてありぬべし」の部分が相当します。「現実に見たとしたら似てはいないだろうが、そのようであるのかもしれないとつい思ってしまう」という感じなのでしょう。見たことがないものでも、たとえば幽霊にしても、たぶんそんなものかなというレベルで納得してしまいますが、そういう心理を表現していると思います。そうではないという反証も当然ないわけですので、all is probable. ということになってしまいます。 >美しいものを描くことが好まれていたのかなと思いましたが、そういう訳でもなかったというのが意外でした。 ● 本当ですね。何か残っていれば面白いのでしょうが、何しろ京都は何回となく焼けましたので、紙類で残っているものは随分少ないのでしょうね。 小布施の北斎美術館にある龍の絵は、やはり架空のものですが、とてもいいと思いました。 ********************* 《余談》正宗白鳥を評価されているのはさすがに目が高いですね。一見blunt に見えますが、物事の核心をつかむ能力の優れた、変に文学的に気取ってない、貴重な批評家だと思います。sweetapplechocoさんは日本文学に対する造詣と関心が深いようですが、正宗白鳥の「自然主義文学盛衰史」は、優れた評論ですので、機会があればお読みください。「自然主義文学」に対する見方が『国語便覧』の枠から自由になると思います。 ****** 下町の「粋」の美学は、当然ながら「粋筋」から来ています。しかしそれがどういうものだか、われわれ現代人は知りようがありません。私がその神髄を知ったのは、久保田万太郎によってでした。たとえば、図書館にあるかどうか知りませんが、川口松太郎『久保田万太郎と私』にある、隅田川の花火大会の描写を読んでみて下さい。生粋の下町人でなければ到底できないような「粋」な会話を堪能できると思います。(つづく)
お礼
今晩は。ひとひら散らせて梅は何かを語りかけたかったのかもしれませんね。 いつも大変丁寧に回答をしてくださってありがとうございます。 紹介してくださった本から派生してたくさんの本が読みたくなっています。 (紹介していただくばかりですみません) 1)「for」は(才能・好み・感情)のうちの「才能」というところに着目してしまいましたが、 「理由」(優れている【ゆえに】選ばれた)がしっくりきますね。 all of them are at work on subjects intended to impress and surprise.・・・ここは 最初「are~intended」の受動態かと思っていたのですが、 訳してみるとうまく文が作れなかったので上記のように訳してしまいました。 「intended to impress and surprise」が、「subjects 」に掛かるというのは 教えていただいてなるほどと思いました。(自分では思いつきませんでした) 「be at work 」「work on 」はよく出てくる感じがしますね。 前回「but」について教えていただいたので、「しかし」と最初訳しながらももしかしたら 「ただ~だけ」の場合もあるのだろうか?と考えてしまいましたが、 ここは「しかし」の訳でいいのですね。 only の意味の but が文頭に来る例は、まずないということなので、これからは 安心して(?)文頭のButは「しかし」と訳そうと思います。 (but の後には、当然たいしたことのないものがくる、というのも覚えておきたいと思います) 「ogre, demon, fiend 」をgoogleの画像検索で見てみました。 「demon」は明らかに日本の鬼とは違いますね。 「ogre」が手に持っているのが棍棒みたいな感じですが。 Letting their fancy~・・・ここの分詞構文は「単純接続」なのですね。 (ちょっと考えすぎでした) they may astonish the beholder's eye.・・・・ここの「may」は文脈から判断しました。 原文を紹介してくださってありがとうございます。 And though nothing in their pictures is real, all is probable.は 「実には似ざらめど、さてありぬべし」なのですね。 「そのようであるのかもしれないとつい思ってしまう」という心理を表現している感じ、ですね。 「ありそうなものです=ありそうだと思ってしまいます」ということですね。 源氏物語も一切合財燃えてしまっていたら大変な損失でしたね。 小布施の北斎美術館は行ったことはないのですが、ホームページで「龍」の絵を 見ることができました。とてもダイナミックな構造で迫力がありながらも細部は実に緻密に 描かれていますね。想像でよくあれだけの迫真の絵が描けたと思います。 ********************************* ちょうど今「正宗白鳥」の「何処へ」「入江のほとり」の文庫本を読んでいます。 blunt=(ぶっきらぼうな、そっけない)? 決して派手なストーリーではありませんが、一つ一つをとても丁寧に書いているのを感じます。 自分の心に嘘がつけないというか、正直に見つめて丹念に伝えようとする姿勢に心が惹かれます。 『苦しめられようと泣かされようと、傷を受けて倒れようと、生命に満ちた生涯。 自分はそれが欲しいのだ』 (『何処へ』)の個所に強い気持ちを感じました。 (・・・造形は全く深くないです。深めようと思っています。) ******************************** 下町の「粋」の美学は「粋筋」から来ているのですね。 正宗白鳥の『自然主義文学盛衰史』と川口松太郎の『久保田万太郎と私』、読んでみますね。 (金曜日にまた投稿します)
補足
「造形」は「造詣」の誤りです。失礼致しました。