・電磁気力
電荷や電流が空間に分布しているとき、それらの間に働く力のこと(磁気は電気の一部と解釈されている)。それを記述するのに、近接作用の観点から、電場および磁場の概念を用いるところに電磁気学の大きな特徴がある。
ニュートンの万有引力の法則では、離れた場所にある二つの物体の間で力が直接働くという遠隔作用の観点がとられる。それに対し、力は直接接触している物の間にだけ働くという、いわば素朴な見方が近接作用の観点である。
ニュートン力学は物理学のすべての分野の規範であったから、19世紀前半までの電磁気学でも遠隔作用の観点がとられていた。近接作用を電磁気学にもちこんだのは M. ファラデーであり、それにみごとな数学的定式化を与えたのがマクスウェルである。近接作用の観点から電磁気学の中心問題を述べれば、
(1)電荷や電流は周囲の空間にいかなる電場、磁場をつくるか、
(2)電場、磁場は電荷や電流にいかなる力を及ぼすか
ということである。
・核力(強い力と弱い力の総称)
核子と核子との間に働く力。原子核は陽子と中性子(まとめて核子という)が結合してできたものである。
これらを結びつける力として、万有引力をそれらの質量から計算すると、小さすぎてまったく問題にならない。電気的に中性の中性子も結びつけられているのだから、静電気の引力でもありえない。
したがって核子を結ぶ力はこれらの力とは異なる新しい力である。
1932年中性子が発見され、W. K. ハイゼンベルクは原子核が陽子、中性子で組み立てられており、それらの間に交換力という新しい形の力が働いていることを指摘した。
その後重陽子の構造、中性子と陽子の散乱実験などから核力の性質がしだいに明らかになった。たとえば核力は短距離では強い力だが、ある距離以上離れると急激に弱くなり、ほとんど0になってしまう。
1935年湯川秀樹は、核力は重量子と名づけた粒子の交換によって起こるとし、核力の到達範囲から推定してその粒子の質量は電子の200倍程度であると予言、48年実際にそのような粒子が発見された。今日 π 中間子と呼ばれるものである(中間子)。
核子と核子がきわめて接近した場合を除き、遠距離での核力は π 中間子理論によって正しく与えられると考えられる。きわめて短距離の場合はいろいろの複雑な事情が生じ、核力という考え自体が不適当となる。
核力は1fm=10^-15m以下という小さい領域の中のみで強く、その外では急に弱くなってしまう。したがって巨視的な世界ではもちろん、1nm=10^-9m程度の大きさの原子、分子の世界でも核力の影響はまったく認められない。
1fm という短距離を境にしてまったく異なる新しい世界が展開したのである。これが素粒子物理の世界であり、20世紀後半物理学の一つの主流となった。
また核力が短距離力ではあるがきわめて強いことは重要である。原子核の結合エネルギーは、原子、分子の結合エネルギーに比べて100万倍程度の大きさで、したがって核分裂、核融合などの原子核反応の際には化学反応とは桁違いに大きいエネルギーが放出される。