※ ChatGPTを利用し、要約された質問です(原文:この調査官解説を解説して下さい)
学生を対象とした年金制度における違憲状態と国家賠償責任についての解説
このQ&Aのポイント
本件は、学生が国民年金法の強制適用を受ける前の時代に、国民年金の被保険者資格がないことを理由に障害基礎年金支給裁定申請を拒否された事案である。
Xらは、憲法25条に基づく所得保障の権利や学生を対象から除外した昭和34年法の違憲性について主張している。
本判決では、一部原告に対しては不支給処分の違法性を認めて取り消し、残りの原告に対しては国家賠償請求を認容した。また、学生を対象から除外していた昭和34年法の違憲性や立法不作為による国家賠償責任を判断した。
1 本件は,平成元年法律第86号による改正によって学生が国民年金法の強制適用を受けるようになる前の時代に,国民年金法に任意加入をしないまま障害を負い,国民年金の被保険者資格がないことを理由に障害基礎年金支給裁定申請を拒否する処分(以下「本件不支給処分」という。)を受けたXらが,本件不支給処分の取消しと国家賠償を求めた事案である。(略)
Xらは,概要,次のような主張をした。
(ア)憲法25条は,障害者に対して所得保障を受ける権利を保障しているものと解すべきところ,給付の要件が厳格で,その使途にも制約が加えられる生活保護制度は,所得保障の方法としては不十分である。したがって,障害者が有する所得保障を受ける権利とは,年金(障害基礎年金)の支給を受ける権利であると解すべきであるから,障害者に対し,障害基礎年金の支給を認めないことそれ自体が憲法25条に違反する。
(イ)昭和34年法は,学生を強制適用の対象から除外したことや,20歳未満障害者には障害福祉年金を支給することとしながら,学生で障害を負った者(以下「学生障害者」という。)についてはこれを認めなかったことなどの点で憲法14条,25条に違反していた。そして,昭和60年法において,他の公的年金制度適用者の配偶者をも強制適用の対象に加えるなど強制適用の対象を拡大しながら学生をその対象から除外し続けたことや,20歳未満障害者と学生との差別的取扱いを是正しなかったことなども憲法14条,25条に違反するものであった。
(ウ)このような違憲状態を是正し,憲法に適合させるためには,法30条の4の規定を類推解釈ないし拡大解釈し,学生障害者に対しても,障害基礎年金の受給資格が認められるものと解すべきである。
(3)本件不支給処分は,憲法31条,禁反言,信義則違反によって違法となるか(争点(3))
Xらは,学生は,任意加入をしない限り,万一障害を負っても障害に関する年金給付を受けられないという重大な不利益を受けるのであるから,国としては,学生は国民年金法の強制適用の対象から除外されており,年金的保護を受けるためには任意加入をする必要があることを十分に周知徹底させるべき義務があったのに,これを怠った結果,学生の任意加入率が僅か1パーセント程度にとどまることとなってしまった,このように周知徹底義務を怠りながら,Xらが任意加入をしていないことを理由に本件不支給処分という不利益処分を行うことは,憲法31条,禁反言,信義則に違反し,違法であると主張した。
(4)被告国(Y2)の国家賠償責任の有無(争点(4))
Xらは,Y2が,憲法に違反する昭和34年法を制定したこと,その結果,学生無年金者の発生という重大な弊害が生じていることが明らかになってきた昭和51年ころまでに昭和34年法の規定を是正すべきであったのにこれを怠ったこと,昭和60年の法改正の際にも違憲の規定を是正する義務を怠ったこと,違憲な規定の犠牲者である学生無年金者に対する救済措置を何ら講じようとしなかったことなどは,いずれも憲法14条,25条に違反し,国家賠償法上も違法というべきであるから,Y2は,立法不作為を原因とする国家賠償責任を負うと主張した。
4 本判決の判断
本判決は,X1については本件不支給決定は違法であるとしてこれを取り消し,その余のXらについては,各500万円の限度で国家賠償請求を認容したが,その理由の概略は,次のとおりであった(なお,理由の紹介の順序は,判決文とは若干異なっている。)。
(1)争点(1)について
X1に関しては,その主張のとおり,高校3年(17歳)時に,中心性神経細胞腫に起因する視力低下について眼科医の診療を受けたものと認め,そうである以上,視力低下の原因が中心性神経細胞腫にあるとの診断がされていなくとも,20歳未満のうちに,「疾病及び疾病に起因する疾病について医師の診療を受けた」との要件に該当すると解することに文言上の妨げはないとして,法30条の4の要件該当性を認め,同原告に対する本件不支給処分は,同条該当性の判断を誤った点において違法であると判断した。
他方,X2については,鼻血についての正確な受診日や診療内容は全く明らかではないのみならず,脳動静脈奇型と鼻血との間に何らかの関係があるのかどうかも定かではないから,鼻血についての受診日を初診日と認めることはできないし,医師の診療を受けていなくとも法30条の4の要件該当性を認めてよいとする主張は,法解釈の限界を超えるものであって採用することはできないと判断した。
(2)争点(3)について
国(Y2)が,Xらに対し,任意加入制度についての周知徹底義務を負っていたという主張自体採用できるかどうか疑問であるのみならず,任意加入制度については毎年一定の広報活動が行われていたことからすると,Y2が周知徹底義務を怠っていたと断定することも困難であるから,Xらの主張は,いずれにせよ採用することはできないと判断した。
(3)争点(2),(4)について
本判決は,法の制定やその後の改正経過,学生無年金者を初めとした無年金者問題の発生や,その救済を巡る議論の状況等を詳細に認定した上,次のとおり判示して,昭和60年の法改正に際し,強制適用の対象から除外されていた学生が,障害を負った場合に年金給付を受けやすくするような措置を講じなかったことや,既に生じていた学生無年金者に対する救済措置を講じなかったことは憲法14条に違反するとともに,この立法不作為は国家賠償法上も違法であり,Y2は,国家賠償責任を負うと判断した。
(ア)憲法25条に基づく年金受給権に関する主張について
憲法25条に基づいてどのような立法措置を講ずるかについては,立法府の広い裁量が認められているところ,障害者に対しては,何らかの所得保障措置が講じられるべきことは憲法25条の要請であると解する余地があるとしても,所得保障のための方策としては,生活保護を含めた様々なものがあり得るのであって,年金のみが憲法25条が要求する所得保障措置であって,それ以外の制度を採用することは社会保障立法に関する裁量権を逸脱するものであると断定することは到底困難であるといわざるを得ないとして,この点に関するXらの主張を排斥した。(4000字超えたので略)