英米語の違いは、以下の5つの領域についてよく言及されます。(すでにご存知かもしれませんが。)
1)同じことを違う語彙で表す 例)(ガソリンを)英=petro;米=gas
2)同じ語彙でも綴りが違う 例)(文明を)英=civilisation;米=civilization
3)文法・語法が違う 例)(Give her this toy in case she cries.)英=泣かないように、このおもちゃを与えて;米=泣いたら、このおもちゃを与えて
4)同じことを言うのにも言い回し(表現が)違う(イギリス英語では、特に知識人階級において、婉曲的な、それゆえにコクのある文がよく見られるが、悪く言うと凝った感じがする;アメリカ英語は、大体において、シンプルな文を好むが、それでもそれなりの深い味わいのあるものも見られる。)
例えば、任意に引きずり出したあるイギリス人の書いた本から引いた英文——
The backgrounds, temperaments and schemes of Charles II and Anthony Ashley Cooper so contrasted with, while occasionally complementing each other, as to provide one of the strangest and dramatic relationships in English history.
は、巧みに2人の人物の関係を描いていて間断がなく、文自体に妙味があります。世界的に有名な English humour も eccentricities もその文体に多くを負っています。
しかしアメリカ人の、たとえば、ヘミングウェイの英語などは、外面的にはシンプルに出来ていますが、味わいということではひけを取らず、いかにもアメリカならではのものを感じさせてくれます。それをイギリス人に求めることはできないでしょう。
5)発音とイントネーションが違う 例)can't 英=カーント;米=キャント
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このうち、1)と2)と3)は限られているので、大した問題ではありません。無視し得ると思います。問題は4)と5)で、おそらくほとんどの人は、5)を重く考えられるのでしょうが、日本人の発音はしょせんは日本式発音ですので、両方から、美しいと思われるものを取り入れていって、自分なりの英語発音に仕立てればいいのだと個人的には思っています。
私個人の印象では、アメリカ人にもイギリス人にも、日本人に適用できそうな美しい発音をされる人が多くいます。それをモデルにして、自分の納得のいく(気恥ずかしくない)発音を創り上げていくというのがいいのではないでしょうか。イギリス英語は階級をしょっていますので、ある階級の英語を模倣すると、自分の階級と合っていない場合、滑稽な感じを与える怖れがあります。かといって、あるアメリカ人たちに見られる、くだけたような鼻にかけたようなアメリカ英語も、日本人にマッチしていない場合もあるでしょう。イギリス英語、アメリカ英語の中でも選別が必要になります。
しかし私が強調したいのは4)で、これは文化に関わってきます。イギリス人の著作をメインに学ぶのか、アメリカ人の書いた英語をモデルにするかは、どちらの文化により親しみを感じるかに関わってきます。(時事英語程度でしたら大した違いにはなりませんが。)
私個人は、優柔不断ですので、どちらも面白いと思うがゆえに、どちらも読むようにしてきました。しかし結果としてみると、それはそれでよかったのではないかと感じています。最初はどっちつかずで身に付いた感じがしませんでしたが、やがて混ざり合って、(下手なりにですが)自分らしい英語になってきたような気がします。
この問題には、客観的な定式というようなものはなく、ご自分の意思決定の問題ですので、そこをはっきり認識されて、ご自身で体験を重ねられながら決めていかれればよいことであり、最初から強引に決めてしまわないほうが賢明かもしれません。
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受験レベルでしたらご心配無用です。大学はどちらにも配慮するでしょうから、civilisation と書いたから×ということはありません。イギリス的に凝った英文を英作文で書いて減点するような人はいないでしょう。
リスニングは、アメリカ人を起用することが多いでしょうから、理屈から言うとアメリカ英語が有利に思えますが、現実にはイギリス式発音で学んで、問題なく解けると思います。
とはいえ、最初の "imprinting"(刷り込み)は重要ですから、意識して、こういうのがアメリカ式、こういうのがイギリス式と弁別できるようになれば、それ自体がとてもよい英語の勉強のスタートになるのではないでしょうか。国際理解ということで、大きな1歩です。
お礼
ありがとうございます。 とても参考になりました。英語の勉強に役立てたいと思います。