>月は常に同じ面を向けており、私たちは月の表側しか見ていないということを耳にした事があります。
ほぼその通りです。月の表面には、クレータや「陸」とか「海」と呼ばれている領域があり、その結果、表面には「模様」が地球から肉眼でも見え、日本では、「ウサギが餅をついている」ような絵柄として見ていますが、このウサギの位置が、例えば、15日で、段々、見かけ上の月の表面で移動して、裏側に回り、地球からは見えなくなり、また回って来て、見えるようになる、というような現象はありません。
何時見ても、月の表面の模様は、「ほぼ同じ」に見えるので、月は、地球の周りを公転しながら、その「公転運動に同期して自転し」、その結果、同じ「半球表面」が地球からは見えます。
もう少し厳密には、地球も太陽の周りを公転しているので、月の運動は、単なる地球の周りを回る公転運動だけではないのですが、地球を「静止系」と考えると、月の公転周期と自転周期は同期しており、同じ速度で回転しています。
何故、このような「公転運動と自転運動の同期」が生じたかは、月のなかの地球側に鉄とかがあって、それが引っ張られているのではないはずです(そんな説は聞いたことがありませんが、最近そういう事実が判明したのかも知れません。ただ、それが「同期」の原因だというのは違います)。
月の公転と自転の同期は、月が地球に引力を及ぼす結果、地球の海では、太古の昔から、「潮汐」運動がありましたが、潮汐運動は、海水が移動する運動なので、この移動の「運動エネルギー」がどこかから供給されねばなりません。
地球の海での潮汐運動の「反作用」として(または、相互の引力作用の結果として)、月に対し、その自転速度を遅くさせる一種の「摩擦力」が作用しました。この力の作用の結果、月の公転運動と自転運動は徐々に同期へと向かって行き、最終的に、現在では同期が成立して、月は同じ表面を地球に対し見せるような状態に安定したのです。
月の自転運動が、一種の地球引力の「摩擦力」で減速したのと同じ理由で、(作用反作用の法則で)、地球の自転速度も実は、長い年月のあいだに減速し、遅くなっています。現在から3億5千万年前には、地球の自転速度はもっと速く、一年は、400日ほどありました。
月の自転と公転が同期した後も、潮汐運動は続いている訳で、この運動のエネルギーは、その一部が、反作用として月の公転運動に与えられ、月は、一年に3cmほどの速度で、地球から遠ざかって行っています。従って、昔は、月は、地球にもっと近い軌道で公転していました。
月の地球に対する「公転面」に対し、月の自転軸は、6度40分ほど傾いています。また、月の公転軌道は円ではなく、楕円軌道であり、もっとも近い位置で35.6万Km、もっとも遠い位置で40.7万Km、地球から離れた位置にあります。従って、月の見かけの大きさは、近地球点と遠地球点では異なります。
自転軸の6度40分の傾斜角度の存在と、公転軌道が楕円であることより、月の公転と自転の同期は、月の重心とその自転軸について成立しているもので、月の表面は、回転の揺れ動きの結果、半分(50%)よりも余分に見え、およそ月の全表面の59%が地球から見えます。(月の裏側が、地球から9%は見えているということになります)。
>アメリカで見る月面と、日本からみる月面は同じ面なのでしょうか?
これは、大体同じであって、実は、厳密に言えば違います。月の平均公転軌道半径は、地球の赤道半径の約60倍しかありません。
日本とアメリカでは、地球の赤道半径よりも大きな距離があいだにあります。月の直径は小さいとしても、日本から月を見るのと、アメリカから見るのでは、かなり大きな「視差」が出てきます。その結果、望遠鏡などで細かく観察すると明瞭に分かりますが、月の表面の端の方で、見えない部分と見える部分の違いが、日米での観測で出てきます。
例え話をすると、机の上に地球儀を置いて、少し離れた場所から、あなたと友人が並んで、地球儀を見るとします。すると、あなたと友人の位置がずれているため、地球儀の表面で見える範囲が、あなたと友人では違ったものになります。
月の観測では、日本とアメリカで、こんなに極端には違いませんが、同じ原理で、「視差」があるので、ごく僅かに、違って見えるのです。
お礼
非常に分かりやすく丁寧な解説、ありがとうございました。大変参考になりました。