>塩酸を10^5倍に薄めたときのpHを求めよ。
>この問題なのですが、限りなくpH7に近づくでいいのでしょうか?
基本的に、そのとおりです。
塩酸は酸性で、酸性の溶液を水で薄めていっても、酸性が弱まるだけで塩基性になることはありえませんからね。
しかし、薄める前の状態が酸性だったとしても、純水でドンドン薄めていったら、その極限では只の水とほとんど違わないですから、中性に近くなるだろうということも想像できます。
ですから、定性的な判断をすれば、塩酸を純水で薄めれば、酸性は弱くなり、純水をどんど加えていった極限では、中性になるだろうと言えます。
pHを学ぶとき、pHは -log[H+] で表される数値だから
"[H+]が10倍または1/10倍になる毎に、pHは1だけ変化する"
と教えられます。
ところで、
"酸(塩基)を、その濃度を10倍、または1/10倍にすると、pHは1だけ変化する。"
という文章は正しいでしょうか?
両者は、似ているように見えながら、異なることを主張しています。前者は正しいですが、後者は必ずしも正しくはないですね。
酸性(塩基性)が強く表れている溶液では、H+(OH-)の濃度が大きくなっています。酸(塩基)が放出するH+(OH-)が、溶液のH+(OH-)の大部分を占めているからです。こような場合、酸(塩基)の濃度と溶液中のH+(OH-)濃度とがほぼ比例します。
このことが、溶液を10倍に薄めるとpHは1だけ変動する、とする根拠です。
しかし、水溶液では、溶媒の水自身の電離も起こっていますから、溶液内のH+(OH-)は、酸(塩基)が放出するH+(OH-)だけではないはずです。
酸性(塩基性)が強い溶液では、水の電離によって生じるH+(OH-)は無視できる量ですが、中性に近い状態だと、水の電離によって生じるH+(OH-)を無視できなくなってきます。pHが7.0付近の溶液の場合には、水の電離によって供給されるH+(OH-)をきちんと計算に入れなくてはならないゆえんです。
希薄溶液のpHを考えるときには
酸(塩基)が放出するH+(OH-)
水の電離によって生じるH+とOH-(水の電離によって生じるH+とOH-とは必ず等量)
溶液全体で 正電荷総量=負電荷総量
という条件の下で計算しなければならないわけです。