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財務諸表論の固定資産の減損にかかる会計基準について
財務諸表論の固定資産の減損にかかる会計基準で下記の○×問題が良く分かりません。 「減損の兆候がある資産又は資産グループが生み出す割引前の将来キャッシュフローの総額が、 当該資産又は資産グループの帳簿価格を下回ると判断され、当該資産又は資産グループの正味売却価格と使用価値を比較した結果、 使用価値の金額の方が高いと判定された。 この場合、必ず減損損失が計上される。」 答えは○なのですが、しっくりこないのです。 誰か分かる方、教えてください。 よろしくお願いします。
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「減損損失の計上」とは、資産又は資産グループの収益性の低下により、資産への投資金額を将来的に回収できるだけの収入を当該資産に対し見いだせないと判断した企業が、当該資産又は資産グループへ行う会計処理方法です。 減損会計対象資産の帳簿価額を、現時点で想定できる「回収可能価額」にまで、一気に引き下げます。 そして、当該資産に元々ある「帳簿価額」と、この「回収可能価額」との差額部分を「減損損失」勘定にて特別損失処理します。 「回収可能価額」には、ご質問にある「正味売却価額」と「使用価値」の内、いずれか高いほうの金額が採用されます。 “正味売却価額”は「資産を現時点で直ちに売却処理した場合」の金額を現します。 “使用価値”は「資産の残存耐用年数あるいは今後20年の内、いずれか短い期間に使用した場合の将来キャッシュフロー及び資産の最終処分時の将来キャッシュフロー見込み額との総計を、現在の貨幣価値に引き戻した場合」の金額を現します。 ここから本題です。 ご質問の問題文には「正味売却価格と使用価値を比較した結果、使用価値の金額の方が高いと判定された。この場合…」と記載されてありますが、質問者様が「しっくりこない」のは、この表現でしょうか。 減損損失計上の有無を決定付ける最大のヒントは、そこにあります。 割引前将来キャッシュフローが帳簿価額を下回ることが判明した次の時点で、減損の存在が確実であることを明白にするためには、「回収可能価額」の予備軍である「正味売却価額」と「使用価値」とのいずれもが、帳簿価額を下回ることを証明できなければなりません。 さて、問題文で確実に判明している事実は、「割引前将来キャッシュフローの総額が、当該資産の帳簿価額を下回ってる」点ですね。 割引計算適用前の時点での将来キャッシュフロー総額が、既に帳簿価額に満たっていないらしい。 このあと、「回収可能価額」の候補となる「使用価値」=「割引計算適用後将来キャッシュフロー」は、帳簿価額より小さい「割引前将来キャッシュフロー」を更に現在価値基準へと割引計算したものとなりますから、当然、算出された「使用価値」は帳簿価額には満たない金額であると想定できますね。 「回収可能価額」となるのは、「使用価値」と「正味売却価額」の内、金額が高いほうの数字です。 「使用価値」が減損会計適用金額と判明しても、「正味売却価額」のほうが「使用価値」よりも高い数字であれば、「回収可能価額」として採用されるのは「正味売却価額」です。 更に「正味売却価額」が資産の帳簿価額を上回ってしまえば、減損損失は計上できません。 果たして、「正味売却価額」と「使用価値」の内、金額が高いのはどちらの数字でしょうか?? そう。既に問題文に「使用価値」のほうが高いと明記されてあります。 資産の帳簿価額より低額な「使用価値」よりも更に「正味売却価額」は低額だった…という裏事情が、ここではっきりしてくるのです。 問題文の流れから「回収可能価額」として採用されるのは、「正味売却価額」よりは高額な「使用価値」のほうであり、資産の帳簿価額に満たない差額が減損損失計上される結末が明らかになりました。 だから、答えは「○」。 ~まとめ~ ★減損損失の認識条件★ 割引前将来キャッシュフロー<帳簿価額 ★回収可能価額の決定★ 使用価値=割引後将来キャッシュフロー 正味売却価額 の内、いずれか高いほうの金額 ★減損損失の測定条件★ 回収可能価額<帳簿価額 では、逆に、「使用価値」が「正味売却価額」より「低い」という問題設定であった場合、減損損失は計上しなくて済む可能性が出てくるのか?といえば、答えは“イエス”です。 といいますか、この場合ですと、正解が○になるか×になるかは、この問題文だけでは判断できなくなります。 減損損失の認識に利用される「割引前将来キャッシュフロー」の算定にも、減損損失の測定に利用される「使用価値」の算定にも、同一の将来キャッシュフローがベースとなるため、割引前将来キャッシュフローの金額の状況から、使用価値の金額の程度を予測することが可能なため、この問題文にて「○」という答えを導くことは可能でした。 が、「正味売却価額」は「割引前将来キャッシュフロー」の金額とは全く無関係に算定される数字であるため、仮に将来キャッシュフローの数字が低迷していたとしても、「正味売却価額」だけは帳簿価額を上回る…といった現象は充分に想定できます。 そうなった場合、「回収可能価額」としての「正味売却価額」が帳簿価額を上回るため、当該資産に減損会計は適用されない…といった結末もアリです。
お礼
詳しい回答ありがとうございました。 30分程、問題文とInTheLifeさんの解答を見比べ、5回程読んで、 やっと理解出来ました。 丁寧に教えていただきとても感謝しています。 ありがとうございました。