- ベストアンサー
鳥インフルエンザや口蹄疫などの際の殺処分について
鳥インフルエンザや口蹄疫が見つかった際に、厩舎や鶏舎ごと殺処分してしまうのはなぜですか? 拡大防止というのは分かるのですが、殺処分は法律などで決まっているのですか? それとも任意ですか? また、殺処分をした農家などへの保障は何があるのですか?(例えば、1羽に付○○円の保障という形ですか?それとも所得保障の様な形ですか?)
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
- ベストアンサー
家畜衛生分野の獣医師です。 殺処分の目的はご存じのとおり伝染病のまん延防止のためです。 殺処分はもちろん法律で決まっています。任意にしたら、例えば昨年の宮崎の口蹄疫のように292例も発生して、例え1戸でも殺処分を拒否すれば、他の291戸が殺処分しても「まん延防止」という目的には無意味になる可能性がありますから。 家畜伝染病予防法を読んでみてください。 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26HO166.html まず第二条を見てください。そこに「家畜伝染病」のリストがあります。ここにリスクアップされている伝染病はいわゆる「法定伝染病」で、患畜は基本的に全て殺処分となります。口蹄疫と高病原性鳥インフルエンザもここにリストアップされています。 もう少し詳しく、家畜伝染病予防法施行令も見る必要があります。 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S28/S28SE235.html 施行令第一条に同じようなリストがあります。つまり施行令で対象動物を追加しているわけです。 法第二条の2に「患畜」と「疑似患畜」の定義が書かれています。これも頭に入れておいてください。 それと第三条の二に「特定家畜伝染病防疫指針」のことが書かれています。 これは重大かつ防疫措置の規模が大きくなる伝染病について、「マニュアル」を定める、という意味です。 口蹄疫も高病原性鳥インフルエンザも防疫指針が定められています。農水省のHPから読むことができます。 防疫指針は口蹄疫、牛海綿状脳症、高病原性鳥インフルエンザ、豚コレラの4つの伝染病について定められています。 http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_bousi/index.html さて、殺処分は法第十六条と十七条に規定されています。 法十六条は、「口蹄疫の患畜と疑似患畜は直ちに殺さなければならない」という意味です。高病原性鳥インフルエンザは十七条の方に規定されていますが、こちらは「期限を切って殺さなければならない」です。 まあ殺すことには変わりないのですが、口蹄疫の方が緊急に殺す必要があるということです。 また、死体はどちらも焼却または埋却しなければなりません。これは二十一条です。 意外なのは、殺処分も焼却or埋却も、「家畜防疫員」(主に県の家畜保健衛生所の獣医師)が畜主に「命じる」ことです。 実行するのは本来、どちらも畜主なのです。 どちらも条文にも必要があるときは家畜防疫員自ら殺処分を行うことができる、とあります。今まで畜主が自分で殺処分を行った例はありませんが・・・できるわけもないし。 患畜、疑似患畜の定義についてはそれぞれの防疫指針に書かれています。 口蹄疫の場合は第2の3の(3)のオ(9p)と4の(2)(12p)にも疑似患畜の定義が書かれています。この防疫指針は患畜や疑似患畜の定義について項目が立てられていないので少し読みにくいですが。 高病原性鳥インフルエンザの場合は第2の1の(4)がそれです。 こういう場合、「患畜」となるのはきちんと確定診断が下された個体ですから、ごく僅かです。たいてい1頭とかせいぜい数頭、数羽です。新聞などで「5羽中2羽からH5亜型のインフルエンザウイルスが検出された」というような記事が出た場合、この2羽が「患畜」となるわけです。農水省のプレスリリースを読むと、きちんと判る書き方になっています。 他の殺処分される家畜は全て「疑似患畜」として殺処分されるわけです。 さて、補償の方ですが、これは法第五十八条に規定されています。 一に、患畜は評価額の4/5、三に評価額の4/5が国が補償する、とあります。 上限額は政令の第五条で定められています。牛は52万、豚は3万5千円、鶏は800円です。疑似患畜ならこれの4/5なので、補償額としての上限は鶏なら640円ということになります。 もちろんこれは「殺処分する家畜に対する補償」なので、いわゆる休業補償のようなものはありません。 鶏でも牛でも豚でも、農場の家畜全てを皆殺しにされると、新たに家畜を導入してもそれらが「金になる」までには時間がかかります。鶏なら大雛を入れれば1ヶ月もすれば卵を産みますが、肉用牛なら素牛を導入しても出荷までに2年ほどかかります。この間は農家は無収入になるわけで。 そのあたりは毎回、地方自治体や国が補填しているようです。
お礼
ご回答頂き有難う御座いました。 農家の方も大変ですが、殺処分される家畜も、やはりかわいそうですね。