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宮崎の口蹄疫問題
危難が去ってから時間が経ってしまいましたが、分からない点があるので質問をさせて頂きます。 宮崎の口蹄疫問題を初期段階で解決できず、甚大な被害を出すに至った原因と経緯を教えてください。 よろしくお願い致します。
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家畜衛生分野の獣医師です。ウイルスにも専門知識を有しています。 口蹄疫についての情報は農水省のサイトから見ることができます。 http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/index.html 上記ページから辿っていくと「口蹄疫の疫学調査に係る中間的整理」というpdfファイルを閲覧することができます。 http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/pdf/100825_1-01.pdf この記事に、ご質問の回答がほぼ書かれているかと。7ページ以降が核心でしょうか。 まず口蹄疫の防疫措置を行う都道府県の機関は「家畜保健衛生所(略して家保)」です。「保健所」ではありません。 また、口蹄疫の診断は、家保は実施しません。国のマニュアルで診断は動物衛生研究所(略して動衛研)のみが行うことになっています。 家保は高度な検査機能も有しているのですが、口蹄疫は国際的な影響も含めて非常に社会的影響が大きい伝染病で万が一の誤診も許されないので、診断は国(動衛研は独立行政法人ですが)に一元化されています。もうひとつの理由は、口蹄疫ウイルスが極めて感染力が強いウイルスなので、農場等の現場を巡回する業務を実施している家保で口蹄疫の「検査」をすることの危険性も考慮してのことだと思いますが。 余談ですが、高病原性鳥インフルエンザなどは家保(の病性鑑定施設)で一次検査を実施しています。 なので口蹄疫の診断に関して、家保は「口蹄疫を疑って『検査』を行うか否か」ということを判断するのみ、ということになります。 ちなみに「口蹄疫を疑う→口蹄疫の検査をする」場合、家保はその農場を72時間の期限を限って封鎖しなければなりません。場合によっては農場が立地する集落単位で封鎖することになります。 その動衛研への検査依頼はもちろん国(農水省)を通して行うわけですし、診断された際の移動制限及び搬出制限(出荷制限という言葉はありません)は、範囲や期間、制限内容に至るまでマニュアルで決まっています。都道府県が独自の判断で制限する性質のものではありません(制限は知事名で発せられますが)。 という基本的な防疫体制をまず念頭においてください。 さて、今回の事例では初発農家(1例目)で最初の「通報」があったのは4/9でした。この牛は4/7には発症していて獣医師に往診依頼があったのですが、獣医師から家保に「口蹄疫の可能性が否定できない」として通報されたのが4/9です。 このとき、立ち入り検査した家保は病変が1頭だけだったことから経過観察する、という判断をしています。 他の牛に症状が拡大し、再度通報~家保の立ち入り検査を経て家保が「口蹄疫を疑う」という判断をして動衛研に検査依頼があったのが4/19、診断が4/20という経緯を辿っています。(なので今回の「口蹄疫の発生」の日付は4/20になります) 後の疫学調査によって「真の初発農場」と推定されているのは6例目の水牛農家ですが、こちらは獣医師の初診が3/26で獣医師から家保への通報が3/30、家保の立ち入り調査が3/31となっています。 ただ、こちらは症状が発熱と乳量低下だけで口蹄疫を疑う症状がなかったため、この時点では獣医師も家保も口蹄疫を疑ってはいません。あくまで不明疾病の病性鑑定依頼です。 結局この農場は、初発となった農場の疫学関連農場だったため、4/20に初発農場での発生が確認されてから「疫学関連農場の立ち入り検査」という形で再度立ち入り検査が入り、その際に過去に口蹄疫を疑う症状があったことが認められたので、3/31に採取されていた検体を動衛研に検査依頼して口蹄疫であることが判明した、というわけです。 というわけで、4/20に口蹄疫の発生が確認された時点で、既に 10以上の農場に口蹄疫が侵入していたことが後の疫学調査で推測されています。 この「初発の診断の遅れ」がまず最大の要因であったでしょう。 次に、初発発生時点で、この初発事例の経緯は詳細に判明しており、4/9から4/20まで10日以上も対応が遅れていることは判っていました。 ですからベーシックな「移動制限&発生農場の殺処分」という防疫対応では感染拡大を止めることができない可能性は当然考慮して然るべきだったでしょう。これを判断するのは国の仕事ですから、この点に関しては国の対応が遅れた、という面は否定できないと思います。 もう1つは、今回の発生が日本有数の畜産密集地帯で起きたこと。先に挙げた初動の遅れ、判断の遅れが致命的な結果に陥ったのはそのためだと。 簡単に書けばこんなところでしょうか。
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この質問、長い間レスも付かず締め切られもせず放置されていて、読んでいただいているのか疑問を感じるのですが・・・ ともあれ、No.2では「疫学調査に関する中間的整理」へのリンクを提示しましたが、中間とりまとめが出ましたのでお知らせします。 http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/ekigaku_matome.pdf それと口蹄疫対策検証委員会の報告書も11/24付けで出ています。 http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/kensyo_hokoku_sho.pdf かなりボリュームがありますが、非常に詳細にまとめられています。 これを読んでいただければ、今さら私などが回答する必要もないと思います。
お礼
長い間お返事せずに、本当に申し訳ありませんでした。 もう少し自分で、頂いたURLから理解してからお返事しようと思っておりましたら、時間がたちすぎてしまいました。すみませんでした。 大変多くの情報を頂き、ありがとうございました。口蹄疫についてはマスコミでは政治批判や被害農家の状態などが多くとりあげられていましたが、口蹄疫自体の実態というのは十分に知ることができませんでしたが、今回教えて頂いたこと、またURLの情報より、概要から詳細まで理解することができました。 初診のおくれや対策、酪農地帯であったことが今回の爆発的感染拡大の要因だったのですね。 これから宮崎のブランド牛はしばらく大変な状態とのことで、ただでさえ少ない日本牛を守っていかねばならないと感じました。最近ではTPPの協定が話題となっていましたが、もしこれが結ばれてしまえば、宮崎はより厳しい状態となるのではないかと危機感を感じました。 宮崎の農家が完全に立ち直るまで、自分もそれを見守っていく姿勢を持っていきたいと思います。 今回頂きましたURLからまた勉強したいと思います。 丁寧に解説頂き、ありがとうございました。
- kumap2010
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一番の原因は、保健所の検査が甘くて見逃したこと。 それと政府の初動の遅さ。 まず最初に異常のある牛が保健所に報告され検査されたが、 検査しても口蹄疫ウイルスなどが見つからなかったため口蹄疫ではないとして処理。 その一週間後、別の所で異常のある牛を保健所に報告&検査を依頼。 保健所の獣医師が立ち入り検査したが、症状が軽くしかも一頭のみだったので 口蹄疫ではないと判断して経過観察することに。 さらにその一週間後、別の牛にも異常が発見される。 そこでようやく精密検査の実施。 検査の結果、他の病気ではないことが判明し口蹄疫の可能性が高くなり 翌日、宮崎県は独自に移動制限や出荷制限をかける。 その3日後ようやく政府が動き始める。 この時点で症例報告355頭。ここから莫大に数が増えていきます。
お礼
ご説明ありがとうございました。お礼が遅くなってしまい、申し訳ありません。 やはり政府の初動の遅れは問題と言えるのですね。 十年前の自民党時代、口蹄疫清浄国だっただけに今回の宮崎の爆発的拡大が悔やまれます。 簡潔でわかりやすく概要をご説明頂きました。ありがとうございました。
お礼
詳しくご説明頂き、ありがとうございました。 もう1つの回答頂いたページにお礼をまとめさせて頂きました。 まだ知識を自分のものにできていないのがお恥ずかしいですが、頂いた情報から学んでいきたいです。 ありがとうございました。