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占有の訴えと本権の訴えは競合するか
占有訴権と物権的請求権について質問です。 占有訴権と物権的請求権が両方ともある場合に、占有訴権を使って訴訟を起こすことはあるのですか? 占有訴権では善意の特定承継人に対抗できないのに対しで物権的請求権は対抗できます。よって物権的請求権しか使う必要はないように思います。 それなのに、なぜ占有の訴えと本権の訴えを別々に提起できるかできないかの争い(競合説と非競合説)が生まれてくるのでしょうか?
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物権的請求権と占有訴権では,実際の訴訟における立証に差異があります。 占有訴権では,自らが占有していた事実を主張立証すればよく,占有は,多くの場合,単純な事実ですから,実際の訴訟の場で,大きな争いになることはありません。もちろん,間接占有を主張する場合には問題になりますが,それは,原則論を否定する理由にはなりません。 これに対し,物権的請求権では,物権を有することの主張立証が必要となります。物権変動の基本は,法律行為,すなわち,意思表示を要素とする法律事実であり,そのもの自体は抽象的な事実(必ずしも目で見て分かるものではない。)ですし,これには,意思表示の瑕疵といった厄介な問題がついて回ります。ましてや,所有権にしても,その元々の所在が争いになれば,過去の所有権移転の経過をすべて主張立証しないといけないことになります。 もちろん,一般的には,不動産には登記があり,時効取得があり,動産には即時取得がありますので,その立証の困難は緩和されていますが,やはり,原則論において,占有訴権とは,主張立証の負担という点で大きな違いがあります。 これが,占有訴権が独立した存在となっていることの大きな理由であり,占有訴権による訴えに対して,本件の抗弁ができないことの理由ともなっているのです。