その2つは似ていて、場合によっては2つを選択的に行使できる場合もありますが、要件など細かい違いはあります。
主な違いとして、
1.占有回収の訴えは「占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。」(民法200条第1項)とされていますが、「奪われたとき」とは占有者の意思に反し所持が奪われることを意味し、詐取された場合や、遺失したものを他人が拾った場合等には当てはまらず、占有回収の訴えをすることができません。
物権的返還請求にはこのような制限はありません。
2.侵奪者の特定承継人との関係では、「占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。」(同条第2項)とされており、占有回収の訴えの相手方は、「侵奪者」及びその「包括承継人」と悪意の「特定承継人」に限られますが、物権的返還請求であれば、相手方の善意悪意を問いません。
他にも、「占有回収の訴えは、占有を奪われた時から一年以内に提起しなければならない。」(201条第3項)ですが、「物権的返還請求権は物権から不断に流出するものであり、物権と独立しては消滅時効にかからない」(大判大6.3.23)などの違いもあります。