前は「化合」という言葉で何もかも表そうとしておられましたが今度は「水和」という言葉に代わりましたね。
「水和」は水が水のままで(H2Oのままで)イオンとか分子にくっついている状態に対して使われている言葉です。
NH3+H2O→NH4^+ + OH^-
は水和ではありません。化学反応です。その反応の種類が「電離」です。NH3が水に溶ければ回りを水に取り囲まれた状態が出来ているはずです。それが水和です。そういう水分子の中のどれかとの間で上の反応が起こるのです。(これは前にも書いたことだと思います。)
固体のNaClが水に溶ければやはり水に取り囲まれます。
NaClは固体の状態ですでにイオンとして存在しています。教科書にはそういう図が載っているはずです。
固体のNaClの中のNa^+とCl^-が表面から少しずつバラバラになって水の中に溶け込んでいきます。そのときNa^+の回りもCl^-の回りも水分子が取り囲んでいます。動き回っている水分子が順番にイオンを包み込んで引き剥がしていくというイメージです。
水がなければ正イオンと負イオンがくっついています。(これも前に書いたことだと思います。)
※くっつけば中性のNaとClになると思わないで下さい。くっついていてもイオンとしての状態は保たれたままです。そういう状態の固体をイオン結晶と呼んでいるのです。硬くてもろいという性質はそこから出てきます。
NH3のような物質は分子性の電解質といいます。
分子性の電解質は水に溶けると元の分子と電離によって生じたイオンとが共存します。その割合は物質によって変わります。濃度によっても変わります。
NaClはイオン性の電解質です。
イオン性の電解質では溶ける前からイオンとして存在しています。「溶ける=イオンがバラバラになる」ということです。溶けていればバラバラのイオンしか存在しません。(したがって電離度は1です。)
2つでイオンを生じる仕組みに少し違いがあります。
「電離」という言葉を「イオンを生じる」という意味だとするとしっくり行かないかもしれません。
単に「イオンを生じる」ではなくて「水中にバラバラのイオンが存在するようになる」と考える方がいいでしょう。「イオンが溶けて存在するという状態」を表す言葉であると考えるのです。
イメージの食い違いには歴史的な理由があります。
「電離」、「電解質」という言葉はかなり古い言葉です。
電圧をかけると電流が流れるのは電圧をかけることによって中性の物質がイオンに分かれるからだと考えられてました(逆にいうと「電圧をかけていない状態ではイオンは存在しない」と考えていたということです)。「電離」は「イオンを生じる」と同じ意味だったことになります。電気伝導性をこういう仕組みで説明したのはグロットゥス(1805年)です。200年以上前のことです。電圧をかけていない状態でも水溶液中にイオンが存在しているという説がアレニウスによって提出されたのが1887年です。「電離度」という考え方もアレニウスによるものです。
「電解質」を分子性の電解質とイオン性の電解質に分けて考えるというのはさらにずっと後の事になります。でも食塩の結晶の中にNa^+とCl^-がイオンとして含まれているというのがわかってからすでに50年以上はたっています。「食塩の結晶の中にNaClという分子は存在しない」と表現しても同じです。しかし今でも「NaClの分子」という言葉を使う人がいるのです。「分子式はNaClである」とか「分子量は~である」という表現はこのカテでも見ることがあります。
化学以外の分野の人の書いた文章では見る機会が多くなります。
>NaCLが電離するとき水と結びつきようがないのに、電離するそうです。
もしかしたらhohoho0507さまの先生も「NaClの分子が・・・」という言葉を使っているのかもしれませんね。
20年ほど前の高校の化学の教科書には「NaClの電離度は0.9」というような数値が載っていました。その当時学生だった人であればいまだにそのように考えているかもしれません。
お礼
htms42さんいつも丁寧な解説有難うございます。 2段階の反応・電離だけがどうしても理解できません。 教えてほしいです。