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インフルエンザには早期に感染していた方が良い?
今回のインフルエンザが怖いのは、非常に強い感染力であること。 更に、これが変異して、非常に毒性が強いものに変化する事だと思います。 そこで思ったのですが、現在の毒性が比較的弱い段階でインフルエンザに一度感染し抵抗力が付いていれば、将来非常に毒性が強いものに変化した場合、重症化し死亡するリスクは回避できる気がするのですがいかがなものでしょうか? インフルエンザの型が変化すると、抵抗力は意味がないとも言われていますが、全く初めて感染する場合と比較すると、重症化する例が少ないとも聞きます。 実際の所は如何なものでしょうか?
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獣医師でウイルスに専門知識を有しています。 単純な話、ベストストーリーは、「この時期を感染せずにやり過ごして、ワクチン接種を受ける」ではないでしょうか。 「今のうちに感染して将来の強毒化ウイルスに罹患した際の重症化率を下げる」というストーリーには、いくつかのリスクがあります。 1つめは、今のウイルスも病原性は普段の季節性インフルエンザよりは高い、という点です。現時点での新型の致死率は0.5%前後と推計されていて、これは季節性インフルエンザの5倍ほどの致死率になります。 医療体制が整備されている日本では0.5%も死なないと推測されていますし私も同感ですが、肺に親和性が高く肺炎を起こしやすいとか若年層で重症化率が高いという話は既に報道されています。 だからといって恐れるほどの致死率でも重症化率でもないのですが、それでも少なくとも「進んで罹患する」ようなウイルスではないと思います。 もう1つは、強毒化した際に抗原性が変異していれば、再罹患を免れる保証はどこにもない、ということです。同じことはワクチン接種をしても言えるのですが。 感染に対する免疫誘導の程度は非常に個人差が大きいです。その時のいろいろな状況にも左右されますし。ですから、感染したからといって確実に再感染や重症化を防御できるという保証はありません。 ウイルスの抗原性がまったく変異しなければ、一度感染すれば高確率で再感染を防御できるのですが、インフルエンザウイルスは常に抗原性が変異し続けているので、その時(次の感染の機会)にどうなるかは運次第です。 それから強毒化しなければ、単に罹り損ということになるのでは。 現在の新型が強毒化するかしないかは誰にも判りませんが、それでも強毒化する可能性より強毒化しない可能性の方が遙かに高いのは確実でしょう。 人類はこの100年ほどの間に3回の「新型インフルエンザ」を経験して今回が4回目なのですが、「強毒化」したのは100年前のスペイン風邪の時だけです。スペイン風邪の時は流行の比較的初期の段階で強毒化したのですが、今回のようにこれだけ流行が拡大してしまえば、仮にウイルスがどこかで強毒変異したところで、その強毒株が現在のオリジナル株を押しのけて流行の主体になるということも考えにくいです。 ・・まあ、強毒化と同時に抗原性も大きく変異すれば話は別ですが(でもそのパターンだと今の時期の感染は役に立たないことに)。 なので、この「今のうちに感染」というストーリーは、あまり賢いものにはとても思えません。 感染症対応の基本である、「できる限り感染を避け、ワクチンを接種する」というのが新型に対しても最もリスクが少ない対処法かと思います。 余談ですが、インフルエンザの場合「強毒化」という言葉は意味がちょっと複雑です。 近年アジアで強毒型の鳥インフルエンザがヒトに感染し、これが「新型インフルエンザ」になったら大変なことになる、と恐れられていましたが(現在でもその危機が去ったわけではないのですが)、その意味での「強毒化」は、今回の新型はまず絶対にしません。 今回の新型が強毒化する可能性があるのは、スペイン風邪と同じタイプの強毒化です。 インフルエンザウイルスの場合、本来の「強毒」の意味は前者の定義なのですが、けっこう混乱して使われているので注意が必要です。 ここで「強毒」の詳細な説明をするととんでもない長文になるので省略します。過去質問に何度か回答しているのがあるので、興味がおありでしたら「高病原性」や「高病原型」のタームで検索してみてください。 さらに余談というか念押しですが、恐れられているアジアの鳥インフルエンザがヒト型に変異して「次の新型インフルエンザ」になった時は、今の新型に対する免疫はまったく何の効果もありません。
お礼
回答いただきありがとうございます。 順をおって説明してくださりありがとうございます。 とても分かり易く納得のできる説明でした!