中空の立体(ふた,底がないものですが)がつぶれる現象を“座屈”といいます。
つくってて気が付かれたかどうかわかりませんが、円筒以外の立体では側面がすべて平面になっているのです。つまり、三角柱から八角柱までの違いは、周長をおなじとすればこの平面の幅長さの違いだけになります。これに対して円筒は周方向にまがっていて(これを曲率をもっているといいます)、平面がどこにもありません。
紙のように薄いものの座屈強さは曲率をもっているか、曲率の大きさに関係があります。曲率というのは曲がった部分を円弧で置き換えたとき,その円弧の半径の逆数ですから,円筒ならそのまま半径の逆数となり,平面は無限に大きな円弧の一部と考えられますから曲率はゼロとなります。円筒でも円の半径が小さいほど曲率は大きくなりますが、じっさいには周長が小さくなるので支えられる重さは小さくなってしまいます。そうかんがえると中空で大きな曲率を持つものなら,周長がおなじであれば、波々に閉じているかたちのなかに円筒より強いかたちがあると推察されます。
もうひとつ、“座屈”は円筒のながさと半径の両方に関係があります。ストローのようにほとんど棒のようなかたちであれば真中で折れる座屈形となりますが,石油タンクのように背の低い円筒なら一部が屈曲する座屈形となります。円筒のながさを変えて実験をしてみると半径とながさのある比率で座屈形が切り替わるでしょう。いまの実験の延長でできるし面白いかもしれませんね。
さて古代の建物の話になりますが,むかしは薄い金属などで円筒をつくることができなかったのですべて円柱です。円柱のように中実な形では,うえでのべたような薄いものの座屈が起きなくなります。ですから四角でも丸でも良さそうですが,とても細長いかたちになったときにはやはり座屈が起きて(上述のストローのケース),このとき断面の形が四角か円かで座屈強さが変わります。
そうそう,一部の缶コーヒーでダイヤモンドカット型の缶がありますが,コーヒーにはあって炭酸飲料にはありません。これは円断面が内側からの均等な圧力に対してはもっともつよいかたちだからです(あくまで内側からの均等な圧力に対してであって,実験のように上から押しつぶした場合には当てはまりません)。炭酸飲料は内側から均等な圧力がかかりますから、もれなくつるっとした円筒缶をつかってます。コーヒーはそれほど大きな圧力ではないのでダイヤモンドカット型でもいいんです。ぎゃくに外から指でつまんだりする力に対してはダイヤモンドカットの“折れ”が座屈を防ぐので,薄い板で缶をつくることができるようになります。
座屈は,その強さがもののかたちと関係があるため,材料力学のなかでもなかなか難しい問題となってます。
お礼
ありがとうございます。 こんなにも奥が深いなんて知りませんでした・・。 角柱が弱いのは、平面が関係しているんですね。角だけかとだけかと思っていました。