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亀裂誘発目地の有無についての質問
私は、大学で建築を学んでいる学生です。実務経験はありませんので見当違いな質問かもしれないのですが、ご回答を頂ければ幸いです。 先日講義で、意匠上の理由で亀裂誘発目地を設けなかったために、数年後に亀裂が発生してしまったという建物の事例が取り扱われていました。しかし、実際に目地を設けない建物があり、それでもこれといった不具合が生じなかった建物もあるということも聞きました。 ここで質問なのですが、実際に誘発目地を設けなくとも不具合が発生することのなかったRC造の建物のコンクリートと、亀裂が生じてしまった建物のコンクリートの相違点として考えられる要素はなんなのでしょうか。 個人的には、建物が建てられている土地の気候性によるもの。また、コンクリートの水セメント比の違いといった材料的な要因や、コンクリート打設時、養生時の業者の良し悪しといった施工的な要因が挙げられると思うのですが、実際の所はどのような理由が挙げられるのでしょうか。さらに言えば、どのような点に注意をすれば、誘発目地がなくとも亀裂が生じにくい建築物を施工することができるのでしょうか。詳しい原因をご存じの方がいらっしゃれば是非ご回答のほうをお願い致します。
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嘗て鉄筋コンクリート造の建物は堅固で変形のない構造物と考えられていました(剛構造物)。 近年、在来建築物の経年変化のデータの解析・地震時の建物の変形など構造学の研究により、鉄筋コンクリート造の建物でも柔構造として計画する方が、安全で経済的である事が判って来ました。 超高層建築物(鉄骨造が主)の構造力学的解析の結果、中高層の鉄筋コンクリート造の建物でも同じ考えで良い事が判りました。 唯、単に全体を強固な構造にするのでなく、壁は耐力壁と非耐力壁(カーテンウォール)に別けて考える。 柱は短柱を避ける(腰壁と柱の間は力学的に縁を切る)等々。 鉄筋コンクリート造の建物でも外力(地震・風・自重)により、撓み・変形する事を考え、その上、安全な建物を計画する事が可能になりました。 結果的に外壁は変形するから、その変形を集約する措置を採らなければ歪みの結果としてクラック(ひび割れ)は見苦しく発生します。 ひび割れの発生しそうな個所に誘発目地を設けます。 柱と壁の境目・梁と壁の境目・大きな壁面は適当な間隔で誘発目地を設けます。 外壁の仕上が左官仕上・タイル貼りなどの場合は、上記の誘発目地の位置に目地が来る事になります。 外装が、金属板・PC版・タイル打ち込みPC版などは、下地コンクリートとは絶縁されるので、夫々の化粧版の目地間隔となります。 ※素材(鉄筋・コンクリートなど)の品質などに付いての考察は、余り意味を持ちません。 柱の長柱・短柱に就いては、構造力学の書籍を見るか、教師にお尋ねになられるように。
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- shigesan49
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大学を出て施工現場の管理に携わってきた者です。しかし現場を離れて10年余り経過しますので、少し的外れな回答になるかもしれませんがお許しください。 理論として大学で学ぶ内容に間違いはありません。そういう意味で、施工管理であろうが設計(意匠、構造)であろうが、また違う分野で働くことになろうが、一生懸命勉強しておくことは、有益でこそあれ無駄にはなりません。教える側の問題で、幾分時代の最先端から遅れを取ることは否めませんが。 本論と違う話から始まりましたが、コンクリートの乾燥、硬化収縮の大きなファクターは、材料工学で学ばれた水セメント比でしょう。ですから水セメント比を小さくすれば絶対的に乾燥(硬化)収縮を小さく出来ますが、「亀裂誘発目地」の目的は乾燥収縮から発生するクラックをそこへ誘導することだけではないはずです。建物の挙動変形(風や地震、熱収縮)からの応力によるクラックをそこへ誘導することで一般壁面のクラック発生を防ぐことも大きな目的でしょう。そういう意味では、配筋設計(そのような応力を予想してそれにあがなう配筋…たとえば隅角補強筋等)を適切に配置すること(法令規制以外に)が最も重要です。これは壁でも床版でも柱、梁でも同じですが、柱や梁は構造上配慮されていますが、壁や床版に対する配慮は小さくなりがちです。特に意匠上重要な外壁は、十分な検討が必要でしょう。 乾燥収縮は数年で収まるでしょうが、応力はその建物が存在する限り発生しますから、こちらへの対応がより重要です。 学生時代の施工の教授に、「沖縄米軍関係の建築物はスランプ8程度で密実に打設されるので、収縮割れはなく、陸屋根防水をしなくても雨は漏らない」と聞かされたことがあります。密実なコンクリートを打て戸のたとえ話だったのかもしれませんが、現在のコンクリートの打設法に警鐘を鳴らす一言かもしれません。土木は鉄筋サイズも大きいですが、大型橋梁などではこま返しの配筋に見えるところもありますし、粗骨材も建築より大きいですから、単純な比較は出来ないでしょう。
お礼
亀裂誘発目地は、コンクリートの乾燥収縮に対してクラックを目地に誘導するだけでなく、地震力や風といった応力に対しても必要な手段だということがわかりました。 ご回答ありがとうございました。
- pasocom
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水セメント比の低い、硬い(緻密な)コンクリートなら亀裂が入りにくいでしょう。土木構築物(ダムとか橋げたとか)はこのようなコンクリートを打つので誘発目地は不要です。 しかし、建築においては土木よりもコンクリートの中の鉄筋の混み具合が大きく、コンクリート自体の厚みも薄いので水の多いコンクリートを打たないと型枠にうまく流し込めないのです。そのような水セメント比の高いコンクリートは一般的に亀裂が入りやすいので、建築においては誘発目地は必須と考えていいでしょう。 その他亀裂が入る原因はさまざま考えられますが、コンクリートが乾燥するにつれて収縮し、亀裂が入るのは避けられないことと思われます。これを避けるには、やはり硬いコンクリートを施工することです。そのためには鉄筋の量を加減し、コンクリートの厚みを充分取り、いわゆる「かぶり厚さ」も確保して、打設しやすくする工夫が必要です。
お礼
水セメント比を低くすれば硬いコンクリートをつくることができるけれども、それでは施工がうまくいかない可能性が高くなるということがわかりました。 ご回答ありがとうございました。
お礼
剛構造物と柔構造物のお話はとても興味深く感じました。恥ずかしながら、カーテンウォールを用いることや、短柱を避けるのは、柔構造として計画されたものだとは知りませんでした。 また、コンクリートの亀裂誘発目地と外装材の目地の関係にまで言及していただき参考になりました。 ご回答ありがとうございました。