共有物の賃貸借が判例・通説上管理行為と理解されているのは,共有物の性質を変じる行為でなく,これの利用方法に関するものであって,持分の価格に従って,過半数で決せられるのが合理的かつ公平であるためとされています。
一方,民法602条では,処分権限を有しない者が賃貸借を行う場合には同条各号の期間を超えてはならないとしていますから,その調整の結果として#1に挙げた東京高裁判決では,この期間内で過半数の同意があれば賃貸借契約は有効であるとしています。全員の同意があれば,この期間を超えようが超えまいが,当然問題になることはありませんから超えた場合処分行為に該たると理解するのが安全だと思われます(直接,判示している訳ではなくとも結果的にそのように捉えるの妥当ではないかということです)。
以上は対外的な効力についてのことになります。
ところで,共有者間の対内的な関係をみると最高裁昭和41年5月19日判決では次のように判示しています。
「持分の価格の過半数に満たない者は,他の共有者の協議を経ないで当然に単独で占有する権限を有するものではないが,他方,他のすべての共有者の持分合計が過半数を超えるからといって,現に占有する持分権者に当然に明渡しを請求できるものではない。なぜなら,このような場合,現に占有している持分権者は,自己の持分によって共有物を使用収益する権限を有し,これに基づいて共有物を占有するものと認められるからである。従って,多数持分権者が明渡しを求めることができるためには,明渡しを求める理由を主張し立証しなければならない」
学説としてもこのことを肯定しているようです。これを受け,#1に挙げた最高裁判決がなされています。
使用方法について協議が成立しない場合には,共有物の使用は事実上の関係で処理されざるを得ないとされ,持分を超えて使用・利用する者には不当利得返還請求権は行為できる(大阪地裁昭和41年2月28日判決)が,協議の成立なしに引渡請求を認めるのは行き過ぎ(東京地裁昭和34年12月24日判決)とされています。
この対内関係の処理については裁判での決定手続が定められていないため,最終的には共有分割請求をするしかないと理解されています。
以上を要するに対外的には過半数なく単独で貸すことはできないが,協議無しに事実上貸してしまった場合には,対内関係における処理(使用についての協議,持分の取得等や明渡請求権の主張・立証)が困難になるということになります。
なお,いったん貸した場合の解除も対外関係としての管理行為で過半数で決せられ(最高裁昭和29年3月12日判決)ますから,賃借権の解除の要件があれば,これを行使すれば良いことになるのは当然です(不当な占有までも許す意味ではないということ)。
お礼
解説ありがとうございました。 大いに役立ちました。