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小作料
大正時代に、小作人が地主に小作料を支払って農地を借りていた。しかし、小作料が高いので、小作争議をおこし、日本農民組合が作られた。 と、よく資料集などで、目にしますが、実際、小作料はどの程度の割合で支払っていたのでしょうか。 ご存知の方、どうか教えて下さい。
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- 川原 文月(@bungetsu)
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こんにちは。 私は、自称「歴史作家」です。 結論から言うと、たいがいの場合は50%でした。 天保10年(1839)の越後国魚沼郡樺沢村の龍沢庵(たつざわいおり)という者の「検知帳」を見てみると、 4畝4歩・・30束刈・・石高5斗5升8合・・実高1石2斗 を初めとして、龍沢は、合計で、 1町1反1畝3歩を持ち、825束刈、石高16石4合、実高33石 となっています。 1町=3000坪 1反=300坪 1畝=30坪 1歩=3坪 従って、龍沢は、3339坪を所有していたことになります。 そして、825束を刈ることができ、100束=4石で計算されます。 年貢としては、石高16石4斗に30%(4石9斗2合)が課せられました。石高=幕府が年貢の基準とした収穫高。しかし、実高は33石ありますから、28石余りが実際に手元に残ったことになります。ですから、「年貢が重い」と言われていましたが、飢饉や災害が起こらなければ、果たして、本当に「重い」といえるかどうか・・・。 さて、本題の「小作」ですが、同じく龍沢の記録を見てみると、所有する田のほとんどを「小作人」に貸していたらしく、 33石の50%の16石が「小作人」の取り分と決められています。 ところが、龍沢は、年貢を払わなければならなかったので、 33石-16石(小作人の取り分)-約5石(年貢)=11石 が、自分の取り分でした。 NO1.の方が書かれたE・H・ノーマンは、こうも言っています。 「生産物の大部分を貢納として引き渡した農民にとって、豊作は多くの貢納の増徴を意味し、反対に凶作は飢餓を意味した」 とありますが、私は、これは「形式上」の「理屈」であって、生産物の「大部分を貢納」した、というのは「実態」には合わない。 凶作では飢餓に苦しみ「一揆」なども発生することは確かではあるが、恒常的に「大部分を貢納」して手元に何も残らない百姓などはいなかった。と、考えます。 また、田だけどはなく、畦(あぜ)には「大豆」などを植え、畑では、栗、そば、ごま、小豆、大根、かぶ、などを作り、それを自家で消費すると共に、余った分は販売をしていますが、年貢は、ほとんどの場合、ほとんどの地域で「米」に対してだけ掛けられており、よほどの飢饉でもない限り、百姓は生計を維持できた、と考えます。 参考文献:田中圭一著「村から見た日本史」
- cyototu
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E. H. ノーマン『日本における近代国家の成立』(岩波文庫)にその資料が書いてあります。それによると大正4~9年(1915~20)で米の小作料の生産物総額に対する割合は、 一毛作で 46.9~53.3%、 二毛作で 52.9~57.4% 、 と出ております(p239)。 この本では、農民達が搾取されたことによって、日本の近代国家の成立に際して日本の経済的独立を西欧列強から確保できたことになり、どれだけその搾取が国家的に貴重なものだったを、克明に分析しています。特に、第5章4の「土地収奪とその影響ー日本とイギリスの比較」の節が圧巻です。 イギリスでは農民を守るために小作料を低く押さえる法律を作ってしまったために、地主達は農民を託っておくよりも、彼等を追い出してしまった方が得になりました。そして、追い出された農民達がロンドンに溢れてしまいました。彼等は不景気になって都会で職が無くなっても帰る場所がないので、貧民窟を作ってどん底の生活を強いられました。その結果、イギリスでは農村の地主と都会の工業主は敵対関係に成ってしまったのです。 一方、日本では小作料が高いため、地主達は小作人達を託っておいた方が利益が上がりました。その結果、ぎりぎりで生きている貧しい小作人達は食いつなぐために、農閑期に出稼ぎとして働き手だけが都会に出て、日本の近代工業の発展を支えました。日本の出稼ぎの人達はイギリスの貧民とは違って、不景気になっても帰る所が在りました。それ故、日本では村の地主と都会の工業主は利益共有関係者としての友好関係ができあがり、日本の近代工業国家への脱皮が大変順調に行きました。その結果、日本は他のアジアの国のような、西欧列強の経済的属国にならずに済んだのです。短絡的に見るとイギリスよりも悪政だったことが、日本を救ってくれたようです。現代の日本の繁栄の捨て石になってくれた日本の小作人達に、私は頭が下がるばかりです。 この本は短絡的な「善政」が如何に危険なものかを教えてくれると言う意味で、読むに値します。是非読んでみて下さい。
お礼
『日本における近代国家の成立』という本の存在すら知りませんでした。 細やかな回答をありがとうございました。
お礼
非常に丁寧な回答をありがとうございました。 とても勉強になりました。