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警察による立ち入り検査と強制捜査の違いがわかりません。
各法令で立ち入り検査が認められています。 令状を提示すれば強制捜査ができると聞いています。 どのような違いがあるのでしょうか? 対象の範囲について知りたいです。 検査のほうが、強制捜査より対象範囲が狭いと考えているのですが間違いないでしょうか? 具体的には、強制捜査の場合は家なり事務所なりの隅から隅まで調べられるようなイメージがあります。 一方、立ち入り検査の場合は、畳の下や、押入れの奥までは立ち入らないようなイメージがあります。つまり、任意捜査と同義のように考えています。(立ち入り、については任意性はなく強制力があることはわかっております。) もし、立ち入り検査が強制捜査のように広範囲に及ぶのであれば、令状主義がほご、にされる様な気がします。だから、やはり、立ち入り検査は任意捜査のようなものと解してよろしいのでしょうか? あるいは、令状主義を貫くと、犯罪行為を野放しになってしまう可能性があることから、立ち入り検査という制度を作って、治安を守ろうとしているのでしょうか?それでしたら、立ち入り検査と強制捜査の対象範囲がイコールになっても理解できます。 対象範囲はそれぞれどのようになっているのでしょうか? ちなみに、古物営業の立ち入り検査について、特に知りたいです。 よろしくお願いします。
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- 17891917
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問 >立入り及び調査においては,その場所の捜索は認められていないので,古物商に対して古物及び帳簿等を提示して見せるよう命令できますが,自ら引出し等を開けて古物及び帳簿等を探すことはできません >高齢者虐待防止法と違い、古物営業法では規定されていない。しかし、古物営業法でも同様の建前がある。 その根拠はどこに求められるのでしょうか?同じ行政による検査という点でしょうか? 答 「立入り及び調査においては,その場所の捜索は認められていないので,古物商に対して古物及び帳簿等を提示して見せるよう命令できるが,自ら引出し等を開けて古物及び帳簿等を探すことはできない」ということは,同じ行政手続きながら,捜索が認められている国税徴収法と比較してみると分かります。 国税徴収法は,滞納処分(※行政処分)のため必要があるときは,滞納者の物又は住居その他の場所について捜索することができます(国税徴収法142条1項)が,これについては,協力しなかった場合の罰則が規定されていません。 それは,徴税職員は,処分を受ける者の協力なしに自らその目的を達することができるからのです。 一方,古物営業法においては,先述のとおり,検査を拒んだ場合の罰則が規定されています。 これは,警察職員は自らその目的を達する行為をすることができないことから,罰則による間接強制によって,処分を受ける古物商に協力をさせようとしているのです。 「高齢者虐待防止法と違い、古物営業法では規定されていない。しかし、古物営業法でも同様の建前がある。」点について同じ行政手続きであるからというのはお見込みのとおりです。 古物営業法1条が,「この法律は、盗品等の売買の防止、速やかな発見等を図るため、古物営業に係る業務について必要な規制等を行い、もつて窃盗その他の犯罪の防止を図り、及びその被害の迅速な回復に資することを目的とする。」と規定しており,「犯罪の防止」「被害の迅速な回復」という文言からも,古物営業法が行政手続きに関する法律であることは明らかです。 刑事訴訟法の特別法である少年法が,その1条において,「この法律は,[中略]少年及び少年の福祉を害する成年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。」としているのと比較されてください。 【国税徴収法】 http://www.houko.com/00/01/S34/147.HTM 【少年法】 http://www.houko.com/00/01/S23/168.HTM
- 17891917
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問 立ち入り調査がどこまで及ぶかという範囲が知りたかったのですが 答 私は警察官でも古物商でもないので,実務は分かりません。 法律の建前についてのみお話します。 先述のとおり,古物営業法22条に基づく立入り及び調査において,警察職員は,「必要があると認めるときは、[中略] 古物商の営業所、古物の保管場所、古物市場又は第10条第1項の競り売り(同条第2項及び第3項に規定する場合を除く。)の場所に立ち入り、古物及び帳簿等(第18条第1項に規定する書面で同項の記録が表示されたものを含む。第35条第3号において同じ。)を検査し、関係者に質問することができる」こととされています。 建前では,行政に基づく調査は犯罪捜査と峻別されます。 古物営業法では規定されていませんが,たとえば「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」11条3項では,「第一項の規定による立入り及び調査又は質問を行う権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」と念のため規定されています。古物営業法でも,建前的には同様です。 行政処分である立ち入り及び調査と強制捜査である捜索差押えとの,具体的な異同点をいくつか見てみましょう。 立入り及び調査においても,捜索差押えにおいても,強制的にその場所に立ち入ることができます。 しかし,立入り及び調査においては,その場所の捜索は認められていないので,古物商に対して古物及び帳簿等を提示して見せるよう命令できますが,自ら引出し等を開けて古物及び帳簿等を探すことはできません(ただし,命令に従わない古物商には,刑罰が科せられることがあります:古物営業法35条3号)。 捜索差押えにおいては,自ら鍵を壊してでも引出し等を開けて,目的物を探した上で,差し押さえることができます。 立入り及び調査においては,刑事責任追及が目的でないので,報告を求められた事項に答えないと罰則がありますが(古物営業法35条4項),捜索差押えにおいては,刑事責任を追求されるおそれがある事項については,一切黙秘することができます(憲法38条1項,最高裁昭和59年3月27日判決参照)。 ただし,理論上は上記のように峻別されていますが,警察官が,立入り及び調査の現場で犯罪を現認した場合には,その場で刑事手続きとしての捜査に入り,古物商を現行犯逮捕(刑事訴訟法212条)して,無令状捜索差押え(刑事訴訟法220条1項2号)を行うこともありえます。 【古物営業法】 第35条 次の各号のいずれかに該当する者は、10万円以下の罰金に処する。 1.第7条若しくは第10条の2第2項の規定に違反して届出書若しくは添付書類を提出せず、又は第7条若しくは第10条の2第2項の届出書若しくは添付書類に虚偽の記載をして提出した者 2.第8条第1項、第11条第1項若しくは第2項又は第12条の規定に違反した者 3.第22条第1項の規定による立入り又は帳簿等の検査を拒み、妨げ、又は忌避した者 4.第22条第3項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
- 17891917
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立入り調査とは,一般に,行政庁が,当該法の目的を達成するために行う強制処分たる行政行為です。 古物営業は,公安委員会が許可する(古物営業法3条)ものですから,警察職員は,公安委員会の手足として,立入り及び調査を行い(同法22条),法律違反等が認められれば,必要な指示を行い(同法23条)場合によっては,公安委員会は,その調査結果に基づき営業停止や許可の取消しといった処分を行います(同法24条) 古物営業法に基づく立入り及び調査は,行政警察活動であり,そして許可の取消し等の処分は行政処分であり,司法権による刑事処分ではありません。 警察法2条は,「警察の責務」として,「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び [中略] 交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。」とし,行政警察活動について規定しています。 この活動は,所得税法における税務職員による質問調査(所得税法234条)と同様の性格を有しています。 ただし,警察職員が立入り及び調査において犯罪を確認し,捜査のきっかけとなることもありえますから,その場合,古物商は,別途刑事責任を追及されることになります。 強制捜査は,逮捕(刑事訴訟法199条),勾留(同法207条),捜索・差押え(同法218条)等,刑事手続き(公判)の準備活動としての強制処分を指します。 これは,行政警察活動ではなく,刑事手続きの一環としての司法警察活動です。 その場合,警察官は,公安委員会の手足としてではなく,司法警察職員として捜査に従事します(刑事訴訟法189条2項)。 なお,行政警察活動としての立入り及び調査について,先述のとおり捜査のきっかけとなりうることから,これについても,令状主義(憲法31条,35条)や黙秘権(憲法38条1項)が保障されるかが問題となりえます。 この問題に関しては,所得税法に基づく税務調査について,最高裁は下記のように判示しました(最高裁昭和47年11月22日判決:川崎民商事件)。 「一 当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が、憲法三五条一項による保障の枠外にあることにはならない。 二 所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六三条、七〇条一〇号に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといつて、憲法三五条の法意に反するものではない。 三 憲法三八条一項による保障は、純然たる刑事手続以外においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続にはひとしく及ぶものである。 四 所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)六三条、七〇条一〇号、一二号に規定する質問、検査は、憲法三八条一項にいう「自己に不利益な供述」の「強要」にあたらない。」 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=27029&hanreiKbn=01 古物営業法に基づく立入り及び調査は,基本的には,所得税法に基づく質問調査と同様に解して差し支えないと考えます。 【古物営業法】 (立入り及び調査) 第22条 警察職員は、必要があると認めるときは、営業時間中において、古物商の営業所、古物の保管場所、古物市場又は第10条第1項の競り売り(同条第2項及び第3項に規定する場合を除く。)の場所に立ち入り、古物及び帳簿等(第18条第1項に規定する書面で同項の記録が表示されたものを含む。第35条第3号において同じ。)を検査し、関係者に質問することができる。 (指示) 第23条 公安委員会は、古物商若しくは古物市場主又はこれらの代理人等が、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定に違反し、又はその古物営業に関し他の法令の規定に違反した場合において、盗品等の売買等の防止又は盗品等の速やかな発見が阻害されるおそれがあると認めるときは、当該古物商又は古物市場主に対し、その業務の適正な実施を確保するため必要な措置をとるべきことを指示することができる。 (営業の停止等) 第24条 公安委員会は、古物商若しくは古物市場主若しくはこれらの代理人等がこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定に違反し若しくはその古物営業に関し他の法令の規定に違反した場合において盗品等の売買等の防止若しくは盗品等の速やかな発見が著しく阻害されるおそれがあると認めるとき、又は古物商若しくは古物市場主がこの法律に基づく処分(前条の規定による指示を含む。)に違反したときは、当該古物商又は古物市場主に対し、その古物営業の許可を取り消し、又は6月を超えない範囲内で期間を定めて、その古物営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる。 http://www.houko.com/00/01/S24/108.HTM#s4 【警察法】 (警察の責務) 第2条 警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする。 【刑事訴訟法】 http://www.houko.com/00/01/S23/131.HTM 【日本国憲法】 http://www.houko.com/00/01/S21/000.HTM
お礼
ご回答ありがとうございます。 >ただし,警察職員が立入り及び調査において犯罪を確認し,捜査のきっかけとなることもありえますから,その場合,古物商は,別途刑事責任を追及されることになります その立ち入り調査がどこまで及ぶかという範囲が知りたかったのですが…。
お礼
ご回答ありがとうございます。 わかりやすいご説明でよく理解できました。 大変感謝しております。 >立入り及び調査においては,その場所の捜索は認められていないので,古物商に対して古物及び帳簿等を提示して見せるよう命令できますが,自ら引出し等を開けて古物及び帳簿等を探すことはできません >高齢者虐待防止法と違い、古物営業法では規定されていない。しかし、古物営業法でも同様の建前がある。 その根拠はどこに求められるのでしょうか?同じ行政による検査という点でしょうか? 最後にこの一点だけご回答いただければすっきりします。 何卒よろしくお願いします。