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賃料の返還
建物賃貸借契約で、既に支払った賃料が返還されるか、その法的根拠は何かが質問です。 設例 建物の貸主は、借主に、 「賃料は、1月から3月までの分を前年12月末までに支払い、4月から6月までの分を3月末までに支払い、7月から9月までの分を6月末までに支払い、10月から12月までの分を9月末までに支払う。」(四半期ごと前払い) 「借主が退去する場合は、1箇月前までに貸主に申し出ることとする。」 との約束で、建物を貸しました。 質問 ・上記のような3箇月(四半期)ごとの賃料前払いの約束は、有効でしょうか。 ・或る年の6月末に、借主は7月から9月分の賃料を支払いました。7月中旬に「8月末で退去する」と貸主に伝えました。この場合、借主は、貸主に9月分の賃料の返還を求めることができますか。 返還を求めることができるとすると、その根拠は何でしょうか。また、返還を求めることができるのは、いつでしょうか。 なお、このような場合に備えての契約条項は、ないものとします。
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まず,この際,89条2項は関係ありません.この条文が関係するのは,例えば,貸家を売買した時に,その賃貸料の帰属を定める場合に適用されます. 賃貸人と賃借人の関係では,賃料は果実ではありません.契約に基づく使用の対価です. 本題ですが,まず,四半期ごとの賃料前払いの約束は,契約自由の原則から,有効です.これを否定する強行法規はありません. そして,9月分の賃料の返還を求めることができるかどうかは,契約当事者が四半期ごとの賃料前払い約束をした趣旨によることになります. ここで, 今回は,その趣旨が明確でないため,問題になるわけですが,考え方としては,いくつかあります. まず,その物件(物件自体や場所等)が特殊なもので,借り手を見つけるのに時間がかかるとか,四半期ごとを始期とした契約をするのが通常のものである場合には,賃料を戻すことは考えられていないと言えるでしょう. そのような特段の事情がなければ,賃料が,建物の使用の対価であることを考えると,建物賃貸借契約終了後の期間の使用料にあたる9月分の賃借料は,賃貸人の不当利得になりますから,原則として賃借人としては返還を求めることができると考えられます. このあたりは,契約の定め方(賃料は月額なのか等)やその経過によるので,質問の内容からだけでは,どちらに転ぶかはなんとも言えません. 返してもらいたい賃借人としては, 解約について1か月前の通知とされていることを捉えて,もし,3か月の間契約の解除を認めないという前提であるなら,「契約期間終了の1か月以上前」という記述になるはずである.だが,この契約では,単に1か月前の予告を定めているだけなので,3か月毎の賃料の支払は,単に振込の手間や手数料節約のためにまとめて前払いを約したにすぎない などとと主張することもできそうです.
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- ok2007
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No.2の者です。 > 大学などの課題ではありません。 とのこと、実際の事案であればそれを前提に回答を・・・と思いましたが、un_chanさんがNo.5でお書きになったことと基本的に同旨なので、少しだけコメントしてみます。 私も、実際の事案であれば、契約の趣旨が問題になると思います。ただ、一般論としては、物件自体の特殊性や貸主の期待は、前払賃料の授受よりもむしろ退去予告期間にこそ反映されていると考えるべきでしょうね。 したがって、借主側としては、そのような主張を展開してもよいものと思います。 なお、前払賃料支払義務と賃料支払義務とは、前者は使用収益の対価であるところ後者は預け金であって法的性質の異なるものですから、前払賃料支払義務があるからといって「借主も、当該日まで賃料支払義務のあることを前提としています」とするのは、論理飛躍があるといえましょう。
お礼
ご回答ありがとうございました。
補足
ご回答ありがとうございます。 質問の内容は、大学などの課題ではありませんが、かと言って実際の事案でもありません。
- tk-kubota
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>そうすると、前払いの約束がある以上は、89条2項の規定が排除され、返還を求めることはできない、 ということですね。 はい、私は、そのように思います。
- tk-kubota
- ベストアンサー率46% (2277/4892)
>裁判例があればそれを示していただくとありがたいです。 調べればあるかも知れません。 >民法89条2項では、法定果実は日割計算で取得するとありますが、これは関係ないのですか。 この規定は任意規定と思います。 従って、契約しているのですから、契約が優先します。
補足
そうすると、前払いの約束がある以上は、 89条2項の規定が排除され、返還を求めることはできない、 ということですね。
- ok2007
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具体的事案のようにも読める一方で、大学等の課題のようにも読めますので、後者である可能性を鑑みて、ヒントを挙げてみたいと思います。 > 3箇月(四半期)ごとの賃料前払いの約束は、有効でしょうか。 契約自由の原則。 そのような賃料前払契約を制限する法令はあるか。 > 或る年の6月末に、借主は7月から9月分の賃料を支払いました。7月中旬に「8月末で退去する」と貸主に伝えました。この場合、借主は、貸主に9月分の賃料の返還を求めることができますか。 > 返還を求めることができるとすると、その根拠は何でしょうか。 賃料支払義務は何に対応して発生するか。 退去予告期間の法的性質は何か。貸主はその期間に対応する賃料相当額を収受できるか。 賃料前払契約における前払賃料の法的性質は何か。(賃料そのものなのか、それとも将来賃料に転化すべき「何か」なのか。後者だとしてそれは何か。) その法的性質を鑑みたときに、退去後の期間に対応する前払賃料の返還請求権は発生するか。 > 返還を求めることができるのは、いつでしょうか。 前払賃料の法的性質は何か。 貸主は前払賃料に対してどのような期待を有しているか。
補足
大学などの課題ではありません。
- tk-kubota
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返還請求できないと思います。 元来、前払い契約は、貸主は、少なくとも、当該日まで解除はないだろうと期待しています。 借主も、当該日まで賃料支払義務のあることを前提としています。 それを、借主の都合で「1ヶ月前までに・・・」と云うことで、解除ししても、居住しない日の分を返還は求められないと思います。 その分を放棄したうえで、解約通知しているとみるのが相当と考えます。
補足
わかりました。 それで、そういう裁判例があればそれを示していただくとありがたいです。 別に、3箇月ごとでなくてもよく、 例えば、賃料半年分前払いとか、 ご回答に沿うような裁判例でいいので。 また、民法89条2項では、法定果実は日割計算で取得するとありますが、これは関係ないのですか。
補足
質問の設例について言及した本とか判例を調べていましたが、直接言及したものは見つかりませんでした。 【直接ではないにしても】少し関係ありそうなものとか、参考になりそうな本の記述を書いておきます。 ○家賃の日割計算 「月の途中で契約が終了した場合は、家賃は日割計算で支払います。 家賃を1か月分前払いしていた場合は、賃借人は、家主に対して契約終了日後月末までの日割計算に相当する金額を、不当利得として返還するよう請求することができます。」(特約のない場合)(「借地・借家の法律常識」不動産法実務研究会(日本実業出版社)p230) ○契約期間の途中で契約が終了した場合の権利金の返還 ・隣からのもらい火でアパートが焼けて賃貸借契約が終わってしまった場合、「賃料の一部の前払い」の趣旨で支払った権利金は、賃借人に返されるべき。(「地代家賃・権利金・敷金・保証金・承諾料・更新料・立退料」安西勉・石原豊昭(自由国民社)) ・賃料の一部前払としての権利金、礼金について 「10-196 ・・・ 例えば、賃貸借期間を10年としておきながら、先払による運用利益を賃貸人が獲得するために、賃料の一部を10年分一括して前払し、その分賃料を減額するものである。このような場合には、賃貸借が途中で終了する場合には、前払分(例えば10年分300万円を支払、5年後に終了した場合には、5年分の150万円ということになろうか)を返還しなければならない。」 「10-198 【礼金】 権利金とは異なるものとして、礼金なるものの支払がなされることが多いが、その内容は明らかではない。住宅が不足していた時代に、賃貸してもらったお礼として支払う慣行が定着したもののようだが、貸していただいたお礼という位に意識されているようである。しかし、賃貸借契約のお礼というのは、法的には意味のないものであり、贈与とみるわけにはいかず、もし礼金を取らなければその分必然的に賃料に上乗せされるであろうから、10-196と同樣に賃料の一部前払の性質を持つものといってよい。 ・・・」 (「民法総合5 契約法」平野裕之(信山社)) ・「賃料の一括前払いとしての性格を有する権利金であれば、賃貸借が期間の中途で終了した場合に、残存期間に対応する権利金が返還されるのは当然である。」(「新民法体系 契約法」加藤雅信(有斐閣)p337) ○定期借地権での前払賃料の未経過分の返還 http://property.mitsuihome.co.jp/column/bk02/column_02.html 「中途解約時に前払賃料の未経過分を返還しなければなりません」