- ベストアンサー
酸化ストレスによるダメージ
活性酸素や過酸化水素などによる酸化ストレスは、実際のところ、どういうメカニズムで生物(細胞)ダメージを与えるのでしょうか?例えば、細胞膜(壁)を破壊するとか、タンパクを変性させるとか。 酵母などを使った実験ではよく、過酸化水素で細胞を処理して生存率を測定していますが、細胞の中か外か、どこでダメージを与えるのでしょうか?もし細胞内だとしたら、そんな危険な物質をどうして取り込むのでしょうか? 色々と書きましたが、よろしくお願いします。
- みんなの回答 (1)
- 専門家の回答
質問者が選んだベストアンサー
酸化ストレスの傷害機構自体がまだ解明されていない部分も多く、酵母の場合は動物細胞とはまた違ってくるとは思いますが、知っている範囲で書きます。 まず、多くの酸化ストレスは外部からの活性酸素種(ROS)の暴露が考えられます。この時まず最初に攻撃されるのは細胞膜ということになりますが、細胞膜には酸化されやすくしかもそれ自体も過酸化脂質となり酸化ストレスの連鎖を起こすような不飽和脂肪酸が豊富です。また、不飽和脂肪酸が酸化してできるハイドロキシノネナールやマロンジアルデヒドなどのアルデヒド類も高い細胞毒性を持っていることが知られています。細胞膜には基底膜酸化還元系(PMRS)と呼ばれるラジカル制御システムが存在し、CoQ10やビタミンE、ビタミンCはこのPMRSで使われることからも、細胞膜の酸化ストレスに対する敏感さを示していると考えられます。 過酸化水素は毒性はそれほど高くありませんが、比較的安定でしかも小さな分子なので細胞内には受動拡散によって入り込みやすいのだと思います。このようにして細胞膜を通過した過酸化水素や放射線や紫外線などで細胞内で発生したROSはタンパクをカルボニル化したりDNA鎖を切断します。タンパクのカルボニル化は酵素の機能不全などを引き起こし、DNAの切断は新陳代謝の停止や細胞の癌化を起こします。またDNAの切断を修復するための機能が間に合わなくなるとアポトーシスが誘導されることも知られています。 一方で、弱い酸化ストレスはMAPKなどの細胞内のさまざまな伝達系を動かすことも知られており、このことが最終的に細胞死を起こしたり、場合によっては酸化ストレスに対する防御機能を付与することもあります。最近では、細胞の分化・誘導にもROSなどがかかわっていることが指摘されています。 ミトコンドリアもROSの発生源として知られており、それにかかわるような細胞死誘導経路も知られていますが、GSHなどの十分な平衡系もあり、酸化ストレスにどれほどかかわるかは不明です。
お礼
なるほど。細胞内、細胞外それぞれに損傷を受けるのですね。詳しい解説をどうもありがとうございました。