「原子内の電子を像として観測する」実験とは
(仮想実験でかまわないのですが)下記(A)(B)のどちらの実験
を指しているのでしょうか?
(A)「原子内の指定した瞬間の電子の位置を測定する実験」
(B)「原子内の電子の存在確率分布を測定する実験」
(1) (A)の実験つまり「スナップショットが撮れれば良い」のであれば、原理的には可能なはずです。
(例えば、原子の外から光なり電子を当てて、原子内の電子の位置を特定する実験が想定されます。)
位置と運動量を同時に測定することは不確定性原理によって禁止されますが
この場合は位置だけを測定していますので、原理的には可能です。
この実験では原子核の周りを飛び回る電子が粒として「撮影」されます。
(B)の場合ですと...
(2) もし、一個の原子に対して(A)の測定を連続的に行って
電子が原子核の周りを飛び回る様子をアニメーションのように
表示させる実験であれば失敗します。
初回の(A)の測定によって電子の位置情報を得てしまうと、
不確定性原理によって電子の運動量の状態が不確定になります。
より具体的には、原子の外から光なり電子を当てて、原子内の電子の位置を特定すると
観察された原子内の電子は運動量を与えられてしまってどこかに吹っ飛んでしまいますので
(つまり(A)で電子の位置の測定を行うと破壊検査しかできません。)
2回目に(A)の測定を行うと電子は1回目の(A)の測定で得た位置の近くにはいません。
1回目の(A)の測定と2回目の(A)の測定の時間間隔を狭めても
原子内の電子の位置の2つの測定結果の間の距離は縮まることはありませんので
原子内の電子状態を、電子の飛行の軌跡として連続的に追跡できるようにはなりません。
(3) 一方、(B)の実験として
同じ状態の原子を多数用意して各原子に対して1回だけ(A)の実験を行い、
それらを画像として重ね焼きするのであれば、それは可能です。
例えば
http://science.news2ch.net/read.php/1103176826/
「強力フェムト秒パルスレーザーを使ってHOMOを直接観察」
では一個の原子に対して(B)の実験を行うことは不可能かと言えばそうではないと思います。
測定を一回で終えれば良いわけですから。
(4) 原子内の電子の状態が、あらかじめ
ψ1, ψ2, ... , ψn
のどれかであることが判っているとき、
一回の測定でψ1~ψnのどれであるかを決定する。
という実験であれば可能です。
結局「像として観測する」の意味がどういう意味なのか次第で
可能なことなのか不可能なことなのかが決まります。
(パソコン上のCGとして再現されるので良いのであれば(4)で良いはずですし...
(3)の「重ね焼き」すらも禁止というルールなんでしょうか?)
「原子内の電子を像として観測することはできない。」
という話はどこで聞いたのですが?