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アッカド語とウガリット語の対比に関して
以下はウガリット文字についての解説記事の一部です。 柴山 栄著、「ウガリット文学について」 粘土板の体裁はそれまで知られていたアッカド語のものとは似てはいるけれども、書かれている文字はアッカド語がシラブルで表される(音節文字)のと違って、アルファベット綴りのもの(音標文字)で、しかもそのアルファベット数が三十であることも判明、この種の文字組織としては最古のものであった。 この記述に、これはこれで異存ありません。しかし、次の疑問があります。専門用語を真に理解していると断言できないため自分では正誤を判断できません。 1「アルファベット綴りのもの(音標文字)」の部分を「アルファベット綴りのもの(音素文字)」とした方が分かり易いのですが、こうしてはいけない理由がありますか。音標文字という点ではアッカド語もウガリット語も違いがないように思えます。音素文字とした方が、違いがはっきりする気がします。なお、音標文字と表音文字を同義と考えています。 2「アルファベット綴りのもの(音標文字)」の部分を「アルファベット綴りのもの」としてはいけませんか。アルファベットといえば自動的に音標文字で、しかも、音素文字になりませんか。 3この記述から、「アッカド語が日本語と同様に表語文字と音節文字の混合文だったのに対して、ウガリット語はラテン文字と同様に音素文字であった」と言ったら誤りですか。 4 2と連動した質問です。日本語や中国語にアルファベットという概念はありますか。アルファベットは音素文字だと考えているので、日本語にアルファベットが幾つあるかを考えるのはナンセンスのように思いますが。 5 「この種の文字組織としては最古のものであった。」とありますが、最初のアルファベット文字という意味ですか。 1、2、3、4、5の疑問が解ければよいので、ご回答の形式は項目別であろうと無かろうと一任します。また、正しい場合の解説の有無は一任します。 よろしくお願いします。
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1.「音標文字」とは聞き慣れない言葉ですが、ま、一般にウガリト文字は「表音文字」の中の「単音文字」(アルファベット)であるとされています。ただ、表音文字・単音文字とは言っても、実は音を表すことが目的ではなく、音を介して「語」を表示するために存在するのです。 結果として、綴りと発音の規則を覚えなければならないなんてことになります。しかしそのおかげで、英語であれば meet と meat、knight と night の区別が付くわけです。 言い換えれば、表音文字は音声だけではなく、語の区別も考慮しなければならないため、純粋に音素を表記する文字というのは存在しないのです。 ウガリト文字の場合も、母音は基本的には表記されません。声門閉鎖音を伴うときだけ、母音文字が使われます。例えば、/yammu/「海」も /yoomu/「日」も /ym/ と表記されます。これでは音素文字とは言えませんね。 2.かまいません。おそらく、著者はこの箇所以降、「アルファベット綴りのもの」ではなく、「音標文字」という短くて専門的な語を使いたかっただけでしょう。まずは「アルファベット綴りのもの(音標文字)」と書いたうえで、今後は「音標文字」という言葉を使いますよ、という宣言でしょう。なお、前述の通り、「アルファベット綴りのもの」と「音素文字」は違います。 3.後半を「ウガリット語はラテン語と同様に単音文字で表記されていた」とすれば、OKです。 4.日本語も中国語もアルファベットで表記できます。日本語表記にはローマ字があるし、中国語表記にはピンインがあります。 文字というのは言語を書き表すための道具です。言語は書き表されるために存在しているわけではないし、いかなる文字であっても、言語を完全に表記することはできません。アクセントやイントネーションは表記されないのが普通です。 そもそも、「○○語に表音文字(単音文字・音節文字・表語文字・表意文字)の概念があるか」と「考えるのはナンセンス」です。 5.微妙ですね。 ウガリト文字は楔形文字としてはシュメール文字・アッカド文字の伝統を引き継いでおり、アルファベット(単音文字)としては少なくとも紀元前17世紀(もしかすると紀元前19世紀)にさかのぼる原カナン文字を継承しています。 単音を表す楔形文字としては「最古のものであった。」としてもいいでしょう。
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- Piedpiping
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全ての言語に「単音(音素)」「音節」「語」というレベルが存在します。 (実際には「単音(音素)」より下のレベルもあるし、「語」よりも上のレベルも存在します。ただし、あまりにも専門的なので省略) どのレベルで文字化するか、つまり単音文字にするか、音節文字にするか、表語文字にするかは、文化の問題です。 ちなみに、新しい表記法ほど音素に基づくアルファベットにする傾向があるので、ご質問者様のおっしゃる「音素文字」に近くなります。 たとえば日本語の訓令式ローマ字はほぼ音素文字といってよい。ただ、 1.語の境界を表すために、語と語の間に半角スペースを入れる(つまり分かち書きをする)点で、語の概念が入り込んでいる 2.文字 n が、音素 /n/ と同時に音素 /N/ をも表している この二点で、純粋な「音素文字」とは言えません。 「兄」 /ani/ と「安易」/aNi/ を区別するために、 ani an'i としたら、音素以外の文字「’」を入れたことになります。 また、「ん」として、n の上に ~ をつけると、英文タイプライターで打てなくなる。 ま、その辺を妥協するのが文化というものです。 そうそう、ウガリト文字など、多くのセム系言語で基本的には母音が表記されないのは、母音が /a, i, u/ の三つしかなく、子音さえ書いてあれば、たいていは母音がなくても分かるからです。 これは単なる想像ですが、省略できるところは省略しないと、面倒だったんじゃないでしょうかね。この辺も文化、と言って言えなくもないかもしれない。
お礼
専門用語の定義を国語辞典から仕入れているだけなので、理解が不完全で、しばしば誤解をするのだと思います。機会をみて言語学の啓蒙書を読みたいです。 読後感を記してお礼とします。独り言ですから、ご返事を求める訳ではありません。 1 「単音(音素)」を更に分解できるのですか。人間の耳で識別できるのでしょうか、機械に頼るのでしょうか。そういう意味ではないのでしょうか。 2 語よりも上のレベルがあるのですか。最近は絵文字が復活しつつありそうです。遠い将来、ハートマークが公式に認められて「私はあなたを愛しています」という「句」を表すなんて時代が来るのでしょうか。合理的な進歩かも知れません。こういう意味ではないのかも?。 3 日本に文字がない時期に、中国とではなく英国との交流が盛んであったとすると、日本語は随所に英単語の交じったローマ字表記になっていたのでしょうか。 4 子供は教わらなくても絵は描きますが、字は書けません。抽象的な思考力とアルファベットの開発とは相関関係があるのでしょうか。表語文字のまま行き詰まることなく今日まで来た中国人の創意は大したものなのかも?。 5 訓令式ローマ字表記を題材にした「語」、「音素」の概念は掴めたと思います。 6 粘土板に刻印するのは不便な上、識字率が低く書くのも読むのも高度な専門職の業だったのでしょうから、ウガリット語が省略できるところは省略したのはあり得ると思います。 大まかな知識が欲しくて気軽に質問しますが、専門の立場で見て正しくて、しかも門外漢にも分かるように説明するのはご苦労の多いことと察します。解説を追加して下さって有り難うございました。またの機会にもよろしくお願いします。
お礼
音素文字と単音文字は同義だと思っていました。 >>/yammu/「海」も /yoomu/「日」も /ym/ と表記されます。これでは音素文字とは言えませんね。 詳しいことは知る由もありませんが、これによって音素文字と単音文字が同義でないのが分かりました。自動的に質問文の1、2、3はあっさり納得できます。 4について 日本語のアルファベットを考えるとすれば、50音表(濁音等が追加される)を国際音声記号ででも表した後に、その記号と対応する文字を開発するのかな、と思っていました。それが即ちローマ字(で代用?、近似的に?)表記だと受け取りました。 5について >>単音を表す楔形文字としては「最古のものであった。」 こういう意味だと考えます。 上の理解が許容範囲に入っていなければ御面倒でもご返事を下さいませ。急ぎません。 毎度、有り難うございます。またの機会にもよろしくお願いします。