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事情変更の原則
事情変更の原則は信義則の現れの一つだといわれますが、具体的にはどのように信義則から説明されるのでしょうか?
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長くなるので大雑把に説明してみます。 信義則は民法2条2項の「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」ことを意味しますが、実際には契約の解釈で重要な働きをし、さらに今日では民法全体、乃至は法秩序一般に関わる大原則だとされているものですね。 ところで契約法の大原則は「約束(契約)は守られなければならない」というものです。この原則によれば、例えば百万円を年利5%で貸したところ、返済期日までに物価が数十億分の一まで下落し、名目債権額である百万円が実質、一円の価値も無いということになったときでも、債権者はやはり自らの約束を守るべきであるということになってしまいます。 しかし債権者の立場になって見れば、これでは貸金の返還訴訟を起こすことが無意味になり、実際上、債務者が自ら適宜増額して返還してくれない限り。債権の消滅時効が完成するまで放置する他は無いということになってしまいます。 どうしても貸金を実質的に回収したい債権者としては契約内容の改定を求めるか、契約自体を解除して貸金を不当利得として償還を求めるの外無いということになるでしょう。しかしそういう請求が認められる直接的な根拠はないので、やむを得ず、次のように主張することになるでしょう。 すなはち、約束を守るべしというのは、それが信義に適い衡平に適するという理由からであるが、契約当時の事情が予想を超えて崩れてしまった場合は、契約の文言通りの効果を貫くことが却って信義衡平に反し、債務者はむしろ契約当時に予想した効果の実質的実現に協力すべき信義則上の義務を負うというべきであり、裁判所もこの私法上の大原則の実現に協力すべきである。 また契約は契約時に予想し得る事態を前提にしているので、その前提が崩れた場合にまで契約時の文言通りの効果を認めるということは、契約時の当事者の意思を無視するという意味でも私的自治の大原則を踏みにじるものである、と。
補足
回答有難うございました。 信義則による非常に巧妙な理由づけに感心いたした。 もとっも、民法の条文が一般条項である「信義則」を具体的場面に応じて、個別具体的に規定した ものであると言われることを考えますと、条文をそのまま適用すると却ってその条文の帰着する趣 旨である信義則に反することになるというような説明の仕方は、巧妙というよりも非常に論理的で あるということが出きるのでしょうか。 また、私的自治からの説明には非常に興味を持ちました。 私の感覚では、信義則は、私的自治の原則の自由を正義・公平の観点から一定の制限を与える(特 に債権関係)ものと考えていました。 しかし、事情変更の原則が適用される場合とういのは、私的自治の原則が(形式面は兎も角として) 実質面で害しているといえるのですね。