明確な根拠があるとは言いがたいのですが・・・
たぶん、こういうことかと。
かなり感覚的なお話になります、拙い言葉で分かっていただけるといいのですが。
1と2の例文が挙がっていますが、一つの候補として、
「この日以来、私の生活は・・・」
もありえると思うのですよね。
そう考えると、「こそあど」の原理から言って、
「この日以来」の立ち位置は、事故の当日。
事故に遭った当日を起点として、そこに立ってものを言っています。
事故当日から、順当に未来に向って話を進めていく、という、時間の流れに従った話法、叙述法において有効な表現だと思います。
「あの日以来」の立ち位置は、現在。
事故に遭った日から既に何ヶ月か何年か何十年かが経過した現在から思い起こして、事故当日以来の日々に思いを馳せる、回想する、という、時間の流れに対して、一旦、逆行してから、改めて時間の不可逆性に添うという感覚の話法、叙述の手法であり、きわめて文学的な表現であるということができると思います。
そうすると、中称の「その日以来」は、「この日以来」と「あの日以来」の中間的用法でしょうか。
「その」の指示内容は明確に事故に遭ったことを指しているのですが、話し手の立ち位置は、あくまで現在なんですよね。
ただ、遠称でぼかした「あの日」よりも、「その日」は指示内容が明確、ぼやけた線がないようなニュアンスがあります。
くっきりと切り取られた事故当日、その日、という感じ。
感情を差し挟む余地の少ない、理性的な文体に合う表現のように思うのです。
「あの日」と、遠い日を思い起こすような回想的表現のほうが、感慨深さとか、感情のこもり方とかが、多分に情感的、叙情的。
ですから、日常的に用いる表現とすれば、「その日」のほうが分かりやすく意味明確で誰にでもストレートに伝わる表現でしょうが、文章に書き起こしたり、小説文であるとか、ドラマティックに盛り上げたい感じの独白とかだと、「あの日」のほうが思い入れたっぷりな情感がにじみ出るという、そういう差異があると思うのです。
なお、もし、質問者様が外国の方で、そのようなあいまい微妙なニュアンスのことをお聞きになりたいのではなく、日本語としてどっちのほうが適切な表現なのかとか、どっちが伝わりやすい言い方なのかとか、どっちが正しくどっちが間違っているのかとか、そういう向きの質問なのでしたら、上記の回答はほとんど意味がありません。
どっちもそう変わらないよ、どっちでも通じるし、どっちも正しい、と申し上げるのが妥当だと思います。
お礼
お礼が遅くなり、すみません。 とても解りやすい説明でした。 ありがとうございました。