はじめまして。
ご質問1:
<後者は相手を敬うために「お先」と言っているのでしょうか。>
その通りです。
1.ご質問文の「お先に」は両方とも、敬語の中の「尊敬語」の用法になります。
2.「お先に失礼いたします」:
文法上の分類は以下の通りです。
(1)「お先に」:尊敬の接頭語「お」をつけて、後に残る人に対する尊敬語になっています。
(2)「失礼いたします」:
1)常体は「失礼する」
2)「失礼する」は、人と別れたり退却する時に使う動詞です。
3)「致します」は「する」の謙譲語です。
3.「お先にどうぞ」:
(1)「お先に」:尊敬の接頭語「お」をつけて、先に通る人に対する尊敬語になっています。
(2)「どうぞ」:人に丁寧にすすめる気持ちを表す副詞。
4.つまり、この2文ともそれぞれ「後に残る人」「先に通る人」に対する尊敬語になります。
ご質問2:
<前者は「先に失礼する」自分に対して「お」をつけていることになるのでしょうか??>
いいえ。
1.後に残る人に対する尊敬語になります。
2.尊敬語になる理由は、その人より先に退却する自分の動作が向けられる相手、ここでは後に残る人、に対する敬意として、「お先に」と言う尊敬語が遣われているのです。
ご質問3:
<「お先に参ります」という文章を何かで見て、違和感を感じたからです。「参る(自分)」を敬っているような、変な違和感が…>
おっしゃる感じはわかります。確かに何やら自己敬語のような気がしないでもありません。
しかし、この文の敬語法は間違っていません。理由は以下の通りです。
1.「参ります」は「行く」の謙譲語「参る」の丁寧語です。つまり、丁寧な謙譲語になっています。
まずこの動詞だけで、相手に敬意を払っていることがわかります。
2.「お先に」は、「(その人より)先に行く」という自分の動作が「向けられる対象となる相手=その人」に対する尊敬語として使われているのです。
3.以上のように、「お先に」を使った文は、いずれも尊敬語や謙譲語を使って「敬意を表す用法」になっているようです。
4.「お先に~します」が、ご指摘にあるような「自己敬語」にならない理由は、
(1)「お先に」と言う以上必ず相手がいるということです。
(2)自分が相手より先にする動作は、その動作が向かう相手に対する行為になります。
(3)その相手が敬意を払わなければならない人ならば、「先に」に尊敬の接頭語「お」をつけて、「お先に~します」と言わなくてはいけないということなのです。
5.例えば相手が敬意を払わなくてもいい家族のような場合なら、
「(パパより)先に行く」
でいいのです。
6.「お先に参ります」は「あなた様よりお先に参ります」ということで、「あなた様」に対する敬語表現になっているのです。
以上ご参考までに。
お礼
大変細かく説明していただいて、ありがとうございました。 大変勉強になります。