#2が概ね正解です。
判例の考え方は基本的に「手続に関する規定は手続の時の法を適用するのが原則」ですから、「親告罪というのは訴訟条件であり起訴を適法とする手続規定である」ことを考えれば、改正後は改正後の規定を適用するとなる可能性は高いです。
つまり、「親告罪を非親告罪にすれば告訴がなくても起訴できる」逆に「非親告罪を親告罪にすれば告訴がなければ起訴できない」ということ。
もっとも実際にそのような改正をする場合には、「改正附則で経過規定をおき、改正前の事件には改正前の法律を適用する」という措置を採るでしょう。そうしたところで格別、被疑者被告人に不利益にはならないですし、何より「現在手続中あるいは既に一応の終結を見た事件の処理が問題になる」ことを避けるにはそうするのが一番紛れがありません。つまり、手続安定の原則の要請に従えばその方がいいということ。
ところで法律不遡及の原則を考える時に一つ注意しなければいけないのは、「手続規定で法律不遡及の原則の問題が生じることは実は少ない」ということ。
手続の時点の法律を適用している限り、それは「現在の事実に現在の法律を適用している」だけであり、決して遡及適用しているのではありません。遡及適用というのはあくまでも「過去の事実に」現在の法律を適用することであり、実体法が時間の流れと無関係に過去の事実を適用対象とすることがよくあるのに対して手続法は「現在の事実」を適用対象とすることがほとんどなので遡及適用の問題を生じることはそれほど多くないのです。
また、手続の時点での効果は法律の適用時の効果に他ならず、効果も遡及していないのだから遡及効の問題にはならないのです。
そして、「改正前の法律を適用する」という特例は「過去の法律を現在の事実に適用しているあるいは効果が発生するのは現在であるだけ」なのでこれまた遡及の問題にはならないのです。
本件においても実のところ、遡及の問題ではないのです。親告罪であっても「犯罪事実があった時点で告訴の有無に関わらず実体法上犯罪としては成立している」のです。手続の時点で手続時の法令を適用してその効果としての適法性が決まる限り、適用も効果も「適用時のもの」なので全く遡及していないのです。すなわち、「手続時に適用する法令は原則として手続時の法令」という判例の基本的な考え方は、「不遡及原則どおり」なのではなく「不遡及原則の問題となる過去の事実に対する適用あるいは過去の時点での効果の発生ではなく、純粋に今の事実に今の法令を適用するという当たり前の話でしかない」のでそもそも「不遡及原則とは関係がない」ということです。
お礼
返事が遅れてすみません。 詳しい説明ありがとうございます。 法律不遡及の原則についてよくわかりました。