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HOMO・LUMOと価電子帯・伝導帯について
半導体工学を専門としているものです。 自分は無機材料を専門としていて、有機については余り知りません。 最近、有機エレクトロニクスの話をよく耳にし、 HOMO, LUMOバンドという言葉が出てきます。 調べてみたところ、 HOMO…電子が占有する最高エネルギー準位 LUMO…電子が占有しない最低エネルギー準位 ということでした。 さらに光デバイスでは、HOMO-LUMOのエネルギーに対応した 光を出すようです。 そこで質問は、HOMOバンド=価電子帯、LUMOバンド=伝導帯、 と単純に置き換えて考えて宜しいのでしょうか。 多数の有機分子が集まったときにHOMO, LUMO準位が分裂し、 バンドを形成するあたりも、半導体と良く似ているように思えます。 どこが違うものなのか、教えていただけると嬉しいです。 なんだか良く分からなくていつもスッキリしません。 お願いします。
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有機屋ですが、質問者さんのご理解で良いと思っています。 数年前に講義でタイトバインディング近似やバンド理論について習いましたが、そのときに思ったのは”これは共役ポリエンのHOMO-LUMOエネルギーギャップ縮小と同じことじゃないか!”ということです。 実際、オリゴアセチレン、ポリアセチレンと伝導性を示すようになっていきますが、この際に起こっているのは炭素の2p軌道が共役することで、HOMOが上昇し、LUMOが低下していくことです。ポリアセチレンなら、無限個の2p軌道が相互作用することになりますから、それらから形成されるHOMO、LUMO近傍の軌道も無限個、すなわちバンドになりますね。 グラファイトも同じことですね。
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- phosphole
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ドーピングとはまた違います。 ドーピングなら、例えばポリアセチレンではヨウ素(酸化剤)を添加することで伝導性が大きく向上します。これはホールを注入したことになりますね。有機物の場合は、酸化によってホールを開ける、p型にするものが多いように感じます。n型になるものは比較的最近になって数が増えているようです。フッ素で修飾したオリゴチオフェンや、含窒素芳香族、ペリレンビスイミドなどの、低い位置にLUMOが存在する化合物がそれに当たります。 No.3で書いたのは、それ以前の問題というか・・・ 有機分子からなる結晶や膜が電流を流すには、分子の間を電子が移動する必要がありますよね。この移動の仕方は分子の波動関数の重なり具合に依存しますので、変な並び方をしていると効率が落ちます。 もっとも、ホッピングで電子が移動する場合にはどうなるのか?というのはちょっと私は分かりかねます。(そもそもこの手の話は専門外なので・・・) ですから、無機半導体の場合とは状況が異なりますよね。 極端な場合、分子同士の相互作用がほとんど無くなってしまえば、膜や結晶といえども、孤立した分子とほとんど電子状態は変わらなくなります。 有名な分子配列の仕方が2通りあります。 ペンタセンなど、多環芳香族分子でよく見られるのはヘリンボーン構造というものです。 一方、チオフェンなどでよく見られるのは、パイーパイスタッキング型といって、分子が本を並べるようにして積み重なっていくモノです。
お礼
私の取り違えを訂正していただき有難うございます。 少し短絡的に考えすぎました。 酸化によってホールをあける…、 う~ん、有機は全ての情報が新鮮ですね。勉強になりますm(__)m ホッピング伝導ですね、記憶を辿ると、有機とホッピングが 強く関連していたのを覚えています。 実は幸いなことに、ホッピング伝導については最近勉強したばかりなんです。 phospholeさんのお話を聞いて、今まで以上に有機と ホッピング伝導の関係がつかめました。 また、ドーピングと混同してはいけない点も理解できました。 う~ん、有機は新鮮で面白いですね。 もう少し勉強して、有機と無機の両面が理解できるようになると、 さらに半導体全体への理解が進み、視野が広がりそうですね。 再度回答有難うございました。勉強になりましたm(__)m
- phosphole
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化学の理論っていうのは結局は、物理学者が導き出してくれたものの応用ですからね。熱力学とか統計力学とか量子力学とか・・・今でも有機化学は理論より、経験がモノを言う世界であることは否定できません。 有機エレクトロニクス材料はディスクリートな分子の集まりですから、構成単位である分子の電子状態も重要ですが、分子間の相互作用が大きな問題となります。分子のHOMO-LUMOギャップを縮小しても、それが必ずしも良いデバイスにつながるとは限りません。伝導性の向上のために分子をいろいろいじくって、分子同士の配列を制御する研究が広く行われています。 構成単位の分子の電子状態は、現在ではパソコンでも理論計算が手軽に行えますし、有機化学の知識から”こうすれば良かろう”ということは予測できます。 しかしながら結晶構造を理論的に予測するのは現状困難なので、ここらへんは経験しかないみたいですね。 よく使われる分子については多くのデータがあるので、大体は予想がつきますが。 なお、OLEDの場合は伝導材料とは違って、発光体である分子の間に相互作用があると、光らなくなることが多いため、分子間に相互作用を持たせない設計が良くなされます。 分子の溶液はひかるのに、結晶や膜にすると効率ががくーんと落ちてしまうものは良くあります。 上述した伝導性の制御とは逆ですが、この場合も集合状態の制御が重要であることには変わりありませんね。 また、有機デバイスは良い面もありますが、一般に耐久性が低いのが難点で、なかなか実用化するのが難しいようです。
お礼
回答有難うございました。 有機は経験がものを言う世界ですか、なんとなくそれも分かる気がします。 >伝導性の向上のために分子をいろいろいじくって、分子同士の配列を >制御する研究が広く行われています。 これは無機の不純物ドーピングのようなもので、LUMOバンドに電子を供給したり、 HOMOバンドにホールを供給する、といった理解で宜しいでしょうか? >分子の溶液はひかるのに、結晶や膜にすると効率ががくーんと落ちてしまう そうなんですね、知らなかったので参考になりました。 ご丁寧な回答有難うございました。
- leo-ultra
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昔、私が学生だった時、口の悪い物性理論の先生が、原子分子物理学という講義でHOMO、LUMOの話をされて、これに注目して、京大の福井謙一先生が1981年にノーベル化学賞をとったと言ってました。 その先生は話を続けて、しかしHOMO-LUMOに注目しろということは物理の言葉で言えば、フェルミエネルギーに注目しろということで、電子物性がフェルミエネルギー近傍の電子状態で決まることは、よく知られた話。物理屋は1920~30年代から分かっていたことだし、たいていの固体物理の本には載っている事実。 つまり物理の分野で当然の事実を、化学の分野で応用すると、大発見になるという例。(当然、応用は簡単でないかもしれないが。)
お礼
回答有難うございました。 確かに、フェルミエネルギーの重要性は物理屋にとっては周知の事実ですね。 面白い話を有難うございました。 参考になりました、有難うございます。
お礼
回答ありがとうございます。 >2p軌道が共役することで、HOMOが上昇し、LUMOが低下 有機は無知なんで、こんなことも初耳でした。 これは固体物理のクローニッヒペニーモデルを考えると 理解できる気がします。 勉強になりました。回答ありがとうございました。